62 ウエ
『思っていたよりも厄介なものだったみたいね』
「……そうみたいだね」
ステータスを開いて【毒作成】が消えているのを確認し、ため息をついていると、フェルリアが話しかけてきた。
「いきなりよくわからない空間に飛ばされたと思ったら、お腹空いたって言われて勝手にスキルを統合されて元の世界に戻されるって……本当にとんでもないスキル渡されたな。……なんか自我あるし」
『主人様はアレが自我を持っているのに気付いていなかったんだね』
「え、フェルリアは気付いてたの?」
『えぇ。ウォーレアと戦った時に少しだけアレが喋ったでしょう?』
「そういえばそんなことがあったような」
確かフェルリアにウォーレアの死体を差し出された時に、それに噛みついて、その後声が聞こえたような気がした。
「あれは気のせいじゃなかったんだね」
『そうだ』
「!」『!』
フェルリアとは違う、ついさっき聞いたばかりの新しい声が頭の中で響いた。
「……お前もフェルリアと同じように頭の中で会話できるの?」
『あぁできるぞ、宿主。なんたって宿主の中に俺はいるからな』
「……頭の中がうるさくなった。戦闘中の思考とかに影響出そうだから帰ってくれない?」
『俺は常には宿主の頭の中にいない。基本的には先程宿主を呼んだあの空間にいる。だから安心しな、宿主』
『おい。お前は今度から私のところへ言いたいことを伝えろ。私を経由して主人様に伝える。そうすればお前は住処から動かずに主人様と話せる。主人様は今までと変わらずに動ける』
『そうか。その方が宿主に負担も少ないなら次からはそうしよう』
フェルリアと飢えたる獣の自我が僕の頭の中で会話し、最終的に僕は今まで通りで大丈夫ということになったらしい。
「ところでお前は何しに僕の頭の中にまで来たの?」
『特に理由はない』
「は?本当になんで来たの?」
『理由が欲しいならどんな毒が欲しいか聞きに来たということにしよう』
「欲しい毒ね……どんな毒作れるの?」
『材料を貰えれば大抵のものは作れる』
「それなら武器に塗って使う強力な毒を作って。遅効性がいい」
『了解した。それなら早速作ってこよう』
その言葉を最後に頭の中から声が消えた。
「かなり自由だな」
『……今度から欲しい毒を私に言ってくれればアレに伝えてくるから』
「わかった。お願いするね」
【毒作成】が喰われて勝手に統合されて消えた時はどうしようかと思ったが、頼めば自動で毒を作ってくれるとなると意外とありなのかもしれない。
「そういえばずっとアレとかお前とか言ってたけど一応名前付けとこうかな。その方が便利だし」
『名前なくてもいいんじゃない?』
「まぁ、その方が便利だから。そうだね……ウエでいいか。次話す機会が有ればウエって呼ぼう」
良さそうな名前が思いついたところで、ノエルとルアがログインしてくる時間になっていた。
「そろそろ行こう」
部屋を出てしっかり鍵をかけると受付に鍵を返して宿から出る。
宿からすぐそこにあるエイラの大きな広場でノエルとルアが宿から出てくるのを待ち、1分も経たずに2人が宿から出てきて合流した。
「今日はリンちゃんいないんだね」
「そうだね。今日はやってないみたい。やってたら一緒に連れて行って紹介したんだけどね」
「置いていって大丈夫なの?」
「大丈夫だと思うよ。それにチャットで話せるから合流しようと思えば簡単にできるし」
「それなら大丈夫そうね」
そのようなことを話しながら広場の中央に向かってできている列に並ぶ。列はそこまで長くなくすぐに進むため、特に長時間待つようなこともなく目的の物までたどり着く。
「これが転移鏡なんだ。始めて使う」
「私たちも初めてね」
列の先にあるのは一度訪れたことのある自陣の街に無料で転移することができる転移鏡というシステム。
これを使って今からスタヴィルに向かう。
代表してルアが転移鏡を操作して行き先をスタヴィルにする。
「はい。設定終わったから転移するよ。起動」
ルアの起動という言葉と共に転移鏡が光だし、鏡に吸い込まれる。道に入った時と同じような感覚がした。
そして気がつくとスタヴィルの広場に置かれている転移鏡の前にいた。
「約束の時間ぴったりね。ここから2人を探しましょう」
転移鏡が置かれていた広場は集合場所としていた広場で、碧と夢月と思われるプレイヤーを探しに僕たちは広場を見渡した。




