52 剣戟
僕と屍鬼光は同時に走り出した。
屍鬼光が振る刀には絶対に当たってはいけない。ただ単に切れ味がいいのか、それとも何か仕掛けがあるのかはわからないが簡単に斬られる。
トレントと混ざって戦った時にかなりの硬度があったのにも関わらず僕の腕を斬り落としているくらいだ。
屍鬼光の攻撃は必ず避けるか紫炎で受けるかの選択をする必要がある。感だが闘気で受けるのも良くない気がする。
そんなことを考えているうちに僕と屍鬼光は最後の一歩を踏み出して間合いに入る。
屍鬼光は右下から左上への斬り上げを繰り出す。僕は紫炎で受け流し、身体を捻って屍鬼光の懐に入ると同時に勢いを付けて腹部を斬りつける。
『罠だ、誘い込まれてる!離れて!』
「!?」
フェルリアの焦った声が頭の中に響く。
フェルリアの声にしたがってすぐさま攻撃を中断すると、後ろへ跳躍して距離を取る。
「なっ!?」
距離を取ろうと後ろへ跳躍しようとした時、突如地面から伸びてきた腐った複数の手が僕の両足と左腕を掴み、僕をその場に足止めする。
(まずい!?)
屍鬼光の目の前で動きが制限された。刀が振り下ろされる場所を予測して紫炎を構える。そしてすぐに紫炎で対応できるように屍鬼光の動きを見て、そこで僕は驚いて目を見開いた。
屍鬼光が持っていた刀を上へ放り投げた。
「【赤】!【青】!」
屍鬼光が叫ぶ!
それと同時に視界の端にあった赤色と青色の地面に刺さった刀が消え、屍鬼光の両手に炎を凝縮して作ったような赤色の刀と氷を凝縮して作ったような青色の刀が現れた。
そして屍鬼光は動けない僕に向けて赤と青の刀を振り下ろす。
『【属性付与 炎】【属性付与 氷】』
フェルリアがリボンの先端の短剣に炎属性と氷属性を魔法で付与してから僕の前に伸ばし、赤色の刀と青色の刀の属性を打ち消し弾いた。
屍鬼光の両手から赤色の刀と青色の刀が消える。視界の端の元々刺さっていた所に戻っておらず、完全に消えたようだった。
「燃えろ」
「ちっ」
呪炎を生み出して僕の両足と左腕を掴んでいた腐った手を燃やし尽くすと、屍鬼光に向けて新たに生み出した呪炎をぶつける。
屍鬼光は上へ投げていた刀を掴むと呪炎を無視して刀を振り下ろしてきた。僕と屍鬼光の間にあった呪炎は切り裂かれ消滅した。
(呪炎も斬れるのか)
一歩下がって刀を避けるとリボンの短剣がタイミングをずらして左右から斬りかかっていく。
屍鬼光はさまざま色を纏った剣で次々斬り払っていく。フェルリアが攻撃魔法を混ぜて怒涛の連続攻撃を行うが最小限の動きで的確に防いでいく。
(……今!)
フェルリアの連続攻撃で刀を左右に振らせ、防ぐのが難しいタイミングで屍鬼光の懐に飛び込み呪炎を纏わせた紫炎を胸に向けて突き出す。
屍鬼光の種族はアンデッドで軽い肉体の損傷では倒せない。だから、簡単には消せない呪炎を使って屍鬼光を燃やし尽くす。
「【黄】!」
「やっぱり使ってきたか」
刀から片手を離して虚空に伸びた手に黄色の雷を凝縮したような刀が現れる。
使ってくるのは想定していた。
「フェルリア!」
『わかってるわ!【属性付与 土】』
紫炎に呪炎に加えて土属性が付与され、黄色の刀を紫炎で迎え撃つ。
「爆ぜろ!」
「!?」
黄色の刀が紫炎とぶつかる直前、黄色の刀の形が崩れて雷に変わり、雷鳴が轟き閃光が広がった。
『無事、主人様?』
「まだ大丈夫だよ、フェルリア。雷の一つで死ぬ身体はしてないから」
『元気そうで何より』
僅かだが咄嗟に闘気を全身に纏ったため、完全に防ぐことはできなくとも威力を弱めることができた。
「思ったよりダメージが入ってない」
屍鬼光は雷の閃光を目眩しに利用して距離をとっていた。
「仕切り直しか」
とはいえ次は最初と同じようにはいかないだろう。
屍鬼光は赤色の刀と青色の刀を確実に僕に当てるために最初は技を使わず僕と斬り合った。
それが失敗した以上は最初から技を使って攻めてくるだろう。
先程までは技を使わせたくなかったため、ずっと至近距離でフェルリアとの連続攻撃を行うことで技を繰り出すタイミングを作らないようにしていたが、距離を取られて技を使う時間を与えてしまった。
『次はさっきよりも激しい攻防になるね』
「気を引き締めていくよ」
僕と屍鬼光は再びお互いの得物を構えて向かい合い、同時に斬りかかった。
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