48 エイラへ
時間の流れは早かった。
今日は聖魔戦争の二日前。今日まで【鬼神演舞】と発動後の技の習得にあった時間全てを注ぎ込んできた。
その成果もあってか、僕とリンは【龍滅の舞】と龍滅の舞後に使えるようになる技を全て習得することができた。そして、二つ目の舞をどうにか形にして発動できるようになったところだった。
「修行は今日で最後か。つまらなくなるな」
「しばらくしたら戻ってくるのでその時にまたお願いします」
「あぁ、まかせろ。……俺たちからすれば戦争なんてどうでもいいことだが、戦いに行く以上は必ず勝てよ。鬼神様もセツノとリンの勝利を求めているだろうからな」
「師匠と私ならどんな敵が相手でも必ず勝ちますよ!」
先程、ルアからチャットが届いた。
内容は明日エイラという魔の陣営の街で戦争に参加するプレイヤーの作戦会議があり、それに参加するか尋ねるものだった。
僕とリンはそれに参加することに決め、鬼の里にいられるのは今日までとなったのでイブキとの訓練も今日で最後となった。
イブキ曰く、エイラの近くのフィールドに繋がっている道があることなので、それを使わせてもらってエイラの近くまで行ってエイラでルアとノエルと合流することになっている。
「そうだ、これをやるよ」
イブキから僕とリンに折り畳まれた小さな紙を投げ渡された。
「それに妖狐が設置した道のある場所が全て書いてある。それ使っていつでも遊びに来いよ」
「ありがとう。また来るよ」
「それ鬼の里での最高機密の一つだからな。情報漏洩すると消されるから気を付けろよ」
「……鬼の里の暗部怖い」
リンが身体を震わせた。
「もう行くのか?」
「うん。ユカリに挨拶したらもう行く。もう少ししたら来るみたいだから」
ユカリには繋がりを通して、今日鬼の里を出ることになったと話をした。するとユカリにセツノ様のところに行くので少しの間待っていてくださいと言われ、言われた通りにしていると繋がりを通してユカリが僕の方へ移動してきているのがわかった。
そして少ししてからユカリが訓練場にやってきた。
「セツノ様!」
「ユカリ」
「何かあったら繋がりを通して呼んでくださいね!すぐに駆けつけますので!」
「ありがとう、ユカリ。何かあったら頼りにさせてもらうね」
「はい!」
ユカリと別れの挨拶を終えるとイブキの道までの案内について行く。ユカリも僕とリンが道で行った後に猫又の縄張りの近くに繋がる新しく作った道を通って戻るとのことなので、僕とリンに付いて来た。
イブキと修行していた数日間、ユカリに全然会わなかったのは猫又の縄張りと鬼の里や妖狐の集落などと道を繋げるのに走り回っていたからとユカリが教えてくれた。
お互いに何かあったらすぐに助け合えるように、道の設置は最優先で行うことにしたとイブキが補足した。
それと妖狐族の長……モミジという名前の妖狐に道の作り方を教わるついでにお互いに知らない魔法を教え合っていたらしい。
おかげでやれることが増えたとユカリが嬉しそうに話していた。
「着いたぞ」
イブキが足を止めた。
目の前には周りの木と比べると一回り大きい大樹があった。
大樹に手を伸ばすとゴツゴツとした木の幹の手触りはせずに手が木を貫通した。この大樹は幻術でどうやらこの木の中に道があるようだ。
「これも凄い幻術だね。周りの木と全然見分けがつかない」
「私はわかりましたよ。【世界視の瞳】の効果ですかね?」
「おそらくそうだろうね。次から道を使うときはこれからリンに探してもらうね」
「任せてください!」
一度幻術を見てからリンの目は幻術を見破れるようになったらしい。リンの【世界視の瞳】は便利なスキルだなと思った。
「行こうか、リン」
「はい、師匠!」
リンが僕の手を握った。今度ははぐれないようにと思って手を繋いだようだが、はぐれたのは猫又に呼び出されたのが原因なので普通に道を使う分には大丈夫と思ったがリンには特に何も言わなかった。
「しばらくの間お世話になりました」
「お世話になりました」
「気にすんな。それよりも頑張ってこいよ」
「「はい!」」
道に入る前にイブキに感謝の言葉を伝える。
「セツノ様、リン様、御武運をお祈りします」
「ありがとう、ユカリ。ユカリも色々とやることがあると思うけど頑張ってね」
「はい!」
ユカリとイブキと言葉を交わし道に触れる。来た時と同じように僅かな引力がしてから道に身体が吸い込まれる。
一直線に伸びている通路をかなりの速さで進み、今度は突然穴が空いて僕が吸い込まれるなんてことはなく、無事に道の終点まで辿り着いて外に出た。
「今度は一緒ですよね、師匠?」
「一緒だよ。手を繋いでいるからね」
道が出た先は草原に流れている浅い川の中にある岩の上だった。
少し先には高い城壁が見え、きっとそこがエイラなのだろう。
「ひとまず移動しようか。ずっと川のど真ん中の岩の上に居てもしょうがないし」
「そうですね」
そうして僕とリンが移動しようとした時、再び道が現れた。
「私のこと置いていかないでくれない?……ってあっ」
「わっ!?」
「リン、手を離して!あっ」
背後に現れた道から出て来たのは声からするに不機嫌そうなリリーで、現れたリリーに岩の上から押し出される形でリンが川に落ちた。
続けてリンと手を繋いでいた僕はリンにそのまま川に引きずり落とされた。
「冷たい」
「ごめんなさい、師匠!!」
「えっと、なんかごめん」
顔面から川に落ち全身濡れた。そんな僕に川の中で必死に謝るリン、それをとても困惑した様子で眺めるリリー。
浅い川でよくわからない光景ができていた。
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