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45 温泉


「お、やりすぎたか?」


地面に転がる僕とリンの顔をイブキが覗き込んでくる。


「あと……どのくらい……残ってますか?」

「半分くらいだな。今日教えたことを忘れるなよ」

「忘れられませんよ……あれだけ身体に叩き込まれたら……」

「そう……だね」


この数時間の訓練で何回か死にかけた。数時間のはずなのに何日間も訓練をしていた気分になっている。それほど実践に近い濃密な時間を過ごした。


思い返してみると、イブキが闘気を纏った足で地面を力強く踏んで狭い範囲に強力な地震を起こした時は本当に死ぬかと思った。


地震で足は取られ、地割れで足場を奪われる。さらには闘気を纏ったイブキの拳が急所に向けて飛んでくるのを【闘気結界】を用いて空へ逃げれば、素の身体能力で同じ高さまで上がってきたイブキに蹴り落とされた。【闘気浸透】で全身に闘気を流し込まれるおまけ付きで。


その結果、まともに受け身を取ることが出来ずにかなりの衝撃とダメージが身体を駆け巡った。イブキの闘気を打ち消してさらに自分の身体に闘気を纏うのが遅れていたらバラバラ死体になっていただろう。ちなみに身体が若干地面に埋まった。


「今日の訓練はここまでだな。明日来るか?」

「日曜日だし僕は来れるけど、リンは?」

「私も大丈夫です」

「それなら残りは明日教えよう。今日はしっかり休んでおけよ」

「今日はもうほとんど動けないので休むしかないですけどね」


見るからに満身創痍のリンは苦笑しながらそう言った。リンの目は死んでいる。


「そうだ。休むなら温泉行ってくればどうだ?この訓練場の近くに作ってある。そこで汚れと疲れを落としてくるといい」

「温泉があるんですか!?」


リンが勢いよくイブキに聞き返す。つい数秒前までは死んでいたリンの目が輝いている。


「あぁ、あるぞ。わざわざ火山地帯の温泉が出ているところに一度行って妖狐にそこと空間を繋げてもらって温水が出るようにしてもらったからな。少し熱めだが気持ちいいぞ」

「行きたいです!師匠!今すぐにでも行きましょう!」


すぐ隣で倒れているリンが僕の耳元で大声で温泉に行きたいと言い出し、とてもうるさい。


「うるさいから耳元で大声出さないで。温泉には行くよ。汚れ落としたいし疲労も取りたいから。それに僕も興味があるし」


そこらじゅう痛む身体を動かしてゆっくり起き上がる。


「早く行くよ、リン。立って」

「あの、とても申し上げにくいのですが身体が動かなくて……その……温泉まで運んでもらってもいいですか?」

「……」


リンがとても申し訳なさそうな顔をして僕に頼んでくる。


「……手間がかかる弟子だね」

「本当に申し訳ございません!」


僕はため息をついてからリンの右手を掴み、そのまま持ち上げて肩の上に米俵を乗せて運ぶのと同じ感じでリンを担いだ。


「おんぶじゃダメなんですか?!これで運ばれるの少し恥ずかしいんですけど!」

「いろいろなところに背中ぶつけてて痛いからおんぶはできない。これで我慢して」

「……わかりました」


その後イブキに温泉の場所を聞き、温泉に向けてゆっくりと歩き出した。


道中でリンが「師匠、これ地味に揺れて酔います。吐きそうです。少し止まってください。お願いします」と顔を真っ青にして言ってジタバタしたが、「吐いたら捨てていくから」と言ってリンを静かにして歩き続けた。


イブキが近くにあると言っていた通りで、五分ほど歩いたら脱衣所になっている木造の小屋に着いた。そこでリンを下ろす。


「もう動けるよね?温泉内で介護はできないからね」

「……動けるようになりましたよ。……気持ち悪い」


真っ青な顔のリンが小屋の壁に両手をついて俯いている。


「師匠。背中洗いっこしましょうよ」


(酔って頭がおかしくなったのか?)


「やらない」

「えぇ、やってみたいです。やりましょうよ」

「というかできない」

「なんでですか?」

「なんでって僕男だから。女湯入れない」

「えっ」

「えっ」


俯いていたリンがぱっと頭を上げ僕の顔を見る。そして僕とリンの間に沈黙が訪れる。


「し、師匠って、男だったんですかぁ!!」

「知らなかったの!?」

「女の子だと思ってました!ほ、本当に男なんですか?」

「そうだよ。ほら」


女湯の方に入ろうとしてみるとシステムによって弾かれる。


「……」

「じゃあ入ってくるね。先に出たら連絡してね」


僕は呆然としているリンを置いて男湯の方に入る。


中に入ると竹のようなもので作られた籠と木目の綺麗な木材で作られたロッカーがあって、一つも使われていないことから僕の貸し切りということがわかった。


「まぁ、僕は使う必要がないんだけどね」


装備全解除の操作をすれば付けていた装備が全て解除されて下着だけになり、解除された装備は自分の手持ちに入る。


続いて大きなタオルを入れて身体に巻いてから下着全解除の操作を行う。


RFOにはアバターが髪の色や目の色などの色の変化を除いて、現実の身体と90%以上一致していればお風呂や温泉に入るときに全裸になれるという他のゲームには無い唯一無二のシステムがある。


運営曰く、お風呂とか温泉を楽しめるようにしたかったらしい。ちなみにアバターを変えすぎた人はお風呂や温泉に入るときに水着を着て入ることになるらしい。


それとお風呂や温泉で全裸の時に他のプレイヤーに遭遇するとセクハラ防止機能のONOFF関係なしに不思議な力で湯気が大量発生して隠してくれるシステムがあるらしい。


これを知った時は変なところに力を入れてるなと思った。


「まぁ僕はそのシステムにお世話になることはないかな。それにNPCでもいたら恥ずかしくて入れないしね」


RFO内だとタオルを巻いて入るのはマナー違反ではないため、タオルで身体を隠す。恥ずかしいなら水着で入ればいいが、せっかく温泉に入るなら全身浸かって温まりたいし、身体を洗うときに邪魔になる。


準備を終えた僕は厚く少し重い木のドアを押す。


「おぉ!」


木のドアの先には四方を高い竹で仕切られた一つのかなり広い露天風呂があった。緑色の温水から立ち上る湯気で視界の半分が白い。


時間帯は夕方から夜になる頃で周りは森で余計な光が無い為、空を見ると一番星が綺麗に見えた。


久しぶりのおとこの娘要素。

あと長くなったから切りました。


ブクマと評価、よろしくおねがいします。

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