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42 鬼神演舞


イブキという名前の鬼の姿がかき消えた後、僕はひとまずユカリをリンに紹介し、その後道の中で別れた後のことをリンとお互いに話しながら鬼の里に向かった。


リン曰く、リンとリリーは何事もなく道を通って無事に鬼の里に着いていたようで、待っていたイブキにリンが事情を話して僕を捜索することになった。


そしてリンの話を聞いたイブキは道を作った人物に連絡を取り、人の姿をした妖狐という種族の集団が転移魔法でやってきて道が壊れていないか確かめた。


その結果、僕がなんらかの干渉を受けて鬼の里にかなり近いところで道から引きずり出されたことがわかり、近くを歩き回って僕を探していた。


しばらく探していると、大きな音がしてその方向を見ると巨大なゴリラのモンスターが見え、直感的に僕が戦っていると思ったリンは巨大なゴリラのモンスターに向けて走り始め、道中でイブキと合流し向かったところで僕を発見して今に至るとのこと。


リンが話し終わった後、今度はユカリが僕と鋼鴉の戦いを少し誇張して話し始め、訂正を交えつつリンに猫又の縄張りでの戦いを詳しく話した。


意外と盛り上がったこの話は鬼の里に着くちょうどでタイミングよく終わった。


――――――



どうしてこうなった。


鬼の里に着いたと同時に待っていたイブキに僕とリンは片手を掴まれて引っ張られ……気が付いたら鬼の里の中心にある闘技場のような場所に僕とリンは立っていた。


そして目の前には鬼の里の長で僕とリンを鬼の里まで呼んだイブキという名前の鬼が立っている。


周りを見ると、闘技場の周りに沢山の鬼が集まっていてお祭り騒ぎになっている。


周りの鬼をよく見ると多くの鬼の中に狐の耳と尻尾を持つ種族が少数いた。リンが言っていた妖狐という種族だろう。


「よし、手合わせを始めるか。武器は使用禁止で俺は自分からは動かないからな」

「ちょっと待ってください!なんで手合わせするんですか?僕とリンがする必要あるんですか?」

「あぁ、そういえばいきなり連れてきて説明していなかったな。セツノ、リン、称号の欄に【鬼神の器】というものがあるな?」

「……ありますね」


自分のステータスを確認してみると確かに【鬼神の器】という称号があった。それはリンも同じようでステータスを確認した後、頷いていた。


「その称号は鬼神様に認められたという証で鬼神様の力をその身に宿すことができると証明するものだ。その称号があると【鬼神演舞】という鬼神様の力をその身に宿すスキルを習得できるようになる」

「【鬼神演舞】……」


鬼神の力を自分の身体に宿すスキル。明らかに強力なスキルだ。


「俺と手合わせするのはセツノとリンに【鬼神演舞】を扱える実力があるか確かめるためだ。習得できたって扱えなきゃ意味がない。それなら教えるだけ無駄だからな。俺が【鬼神演舞】を扱えるだけの実力があると判断したら試合後すぐにでも【鬼神演舞】を教えてやる。説明はこのくらいで十分か。じゃあ始めるぞ」

「リン。同時に攻めるよ」

「わかりました、師匠」


僕とリンは両手両足に闘気を纏う。イブキは闘気を纏わない。


「行くよ、リン!」

「はい、師匠!」


僕がイブキに向けて走り出し、その後ろにリンが続く。イブキの方から見るとリンは僕の身体に隠れて見えなくなっている。


「はああぁぁ!!」


力強く最後の一歩を踏み出しイブキの鳩尾に向けて渾身の正拳突きを繰り出したが、左手で払うように外側へ流された。


そして体制を低くして僕の伸ばした右腕の下を通るようにして踏み込んだ放った右手のカウンターが僕の鳩尾に飛んでくるのを咄嗟に左手を出して受け止める。


「っ!」


ずしっと重い拳で左手が痺れた。


(闘気を纏っていないのに威力が高い!そういえば巨大なゴリラのモンスターを一撃で撃退した時も闘気を纏っていなかったな。纏っている時の威力が想像つかない)


続いてイブキが左手で僕を殴ろうとして、僕の後ろから右側に出たリンがイブキの胸に向けて拳を繰り出し、イブキは即座に攻撃をやめてリンの拳の防御に回った。


リンに意識がそれた時に伸ばした右腕を曲げて肘をイブキの頭に向けて落とす。しかしそれはイブキが頭を反対側に傾けたことで避けられる。


「リン!そのまま殴り続けて片手を封じて!」

「わかりました、師匠!」


リンに指示を出した後、イブキの右手を掴んだままの左手を引っ張ってバランスを崩しつつ引き寄せ、空いている腹部目掛けて右手で拳を打ち込む。


「っわ!?」

「師匠!?」


イブキは僕が引っ張った時に小さく前に向けて跳び、腹部目掛けて放った拳を頭突きで対処して僕の足元にしゃがんで着地すると僕の両足を払った。


その際にイブキの右手を掴んでいた手を離してしまい、逆にイブキに左手首を掴まれて宙に浮いた身体を地面に叩きつけられた。


「うっ!」


すぐに身体が持ち上げられ、イブキが振り返り様にリンに向けて僕を振り下ろす。


「どうにかするから気にせず殴って、リン!」

「わかりました、師匠!」


リンの頭上に闘気結界を作り出し、その上に叩きつけられることでリンへ当たることを防ぐ。そして結界の上に転がった状態でイブキの左手とリンの間に直方体の闘気結界を作り出し、イブキの攻撃を防ぐ。


「いけ、リン!」

「はああぁぁ!!」


闘気結界の横を通り抜けてリンがイブキの懐に入る。僕の左手首を離して防御に回すが、それよりも早くリンの拳がイブキの腹部を捉えた。


「いい一撃とコンビネーションだな」


後ろに跳んで距離をとったイブキはそう言った。


「セツノとリンの実力は【鬼神演舞】を扱うのに十分ある。そう判断した」

「じゃあ【鬼神演舞】を教えてくれるんだね」

「あぁ、そうだ。それで折角闘技場にいるんだ。提案なんだが【鬼神演舞】の一撃受けてみるか?鬼神様の力を身体に宿すことの凄さがわかるぞ」

「それって私と師匠死なないですか?」

「大丈夫だ。手加減はちゃんとする。それにセツノとリンは世界の旅人だろ?世界の旅人は呼んだ神の加護で死んでも蘇るんだから仮に死んだとしても特に問題ないだろう」


イブキはそう言った後、急に真剣な顔をして深呼吸を数回すると、華麗な舞を踊り始めた。


「どうやらもう受けるしかないみたいだね」

「絶対やばいですよ、師匠」


舞は五秒程で終わり、舞い終えたイブキが構えを取る。


「ちゃんと手加減するが全力で防御しないと普通に死ぬぞ」


【闘気反応】で闘技場の地面を操作して僕とリンの前に分厚い巨大な盾を作り、【闘気硬化】で硬度を上げる。さらにリンと手を繋いで【闘気融合】で強化した闘気で【闘気結界】を張った。


これでやれるだけの防御はした。


「準備はいいか?」

「いいですよ」

「それじゃあいくぞ。【鬼神演舞 龍滅の舞 壊突】」


イブキの一撃が巨大な盾と闘気結界をいともたやすく砕き、殴るというよりかはそっと触れると言った方が正しいような攻撃で僕とリンの【闘気融合】で強化された闘気を纏っている腕を殴り


「「!?」」


一撃で戦闘不能にした。


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