表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/81

38 魔装


とある森の中に存在している里


――――――


「長。報告することが」

「どうした?」

「鬼神の器が生まれました。それも二人。どちらも世界の旅人です」

「鬼神の器か……。生まれたのは何百年ぶりかな」


長と呼ばれた紅玉を思わせる美しい紅色の長く伸びる二本の角を持つ鬼は茶屋でお茶を飲みながら報告を受けていた。


「二人をここに呼ぶように一番近くの“黒”に指示を出しました」

「ありがとう。これからもよろしく」

「はっ!」


報告を終えた鬼は瞬時に姿を消して元の仕事へと戻っていった。


「数百年ぶりの鬼神の器。どれほど強いのか」


そう言って鬼はお茶を飲んだ。


――――――


湿地帯 穴の上


「無事、主人様(あるじさま)?」

「おかげさまで」


僕が闘気結界で自分とリンを囲うよりも早く、フェルリアは短刀から人型へ姿を変えると上位の風魔法を発動させて飛んできた矢と魔法を全て迎撃した。


「さて主人様。どうする?主人様が望むなら私が蹂躙するよ」


フェルリアは風を全身に纏わせて僕の周りをくるくる自由自在に動き回りながら僕にそんなことを言う。


「フェルリアの力を知りたいからそれもいいと思うけど今は魔装の力が知りたい」

「主人様がそう望むのならいいよ。私の力を存分に使ってね」

「わかった。【魔装展開】」


フェルリアの身体が白の光の粒子に変わると僕の装備に重なるように集まって形を作る。


両腕両足が動きを阻害しない青色の布のようなものに包まれ、胸や腹部は急所の部分だけを守るように装備ができた。そして腰には後ろへ(なび)く装備の布のようなものと二つの触手のように動く青色のリボンがあった。


僕が何もない空間に右手を伸ばすと青色の大剣が現れる。


「リン。少しだけ激しく動くけど我慢してね」

「はい!」


二つのリボンをリンに巻き付けて安全を確保すると正面下にいたプレイヤーに向けて大剣を向ける。そして足元に作り出した闘気結界を蹴ってプレイヤーの集団に突っ込んだ。


直撃したプレイヤーの肉片と血が宙を舞う。続けて周りにいるプレイヤーを大剣で薙ぎ払ってお腹から真っ二つにする。


かなりの量の血が弧を描くように飛び散る。


「すぐに掃除を終わらせる待ってて」


おんぶしていたリンを岩魔法で出した岩の上に下ろすと大剣をこちらに向かってくるプレイヤーの集団に向けて先程と同じように突っ込む。


そこからは阿鼻叫喚(あびきょうかん)となって逃げ回るプレイヤーを一方的に蹂躙するだけだった。


プレイヤーのいるところに移動して雑に大剣を振るう。それだけで殆どのプレイヤーは肉片になる。それを何度も繰り返す。


同じ作業の繰り返しで飽きた時、腰から伸びるリボンを振り回してみた。


リボンは最大五メートルほどまで伸びて闘気で強化した拳で人を殴るのとだいたい同じくらいのダメージを与えられた。


また、途中でフェルリアが魔法で作り出した炎の剣と氷の剣をリボンに持たせると剣を器用に使って相手を斬っていた。


このリボンでできることは意外と多そうだ。



そしてプレイヤーを斬り刻むのを繰り返すうちに魔装についていくつかわかった。


一つ目は自分の身体能力がかなり引き上げられていること。疲労を感じず自分に重さがなかったと錯覚させるほど身体が軽くなって動くことができた。


二つ目は装備の状態でもフェルリアが魔法を使えること。大剣に雷魔法を纏わせたり火の槍を飛ばしてみたりと魔装展開時でもフェルリアに頼めば魔法はなんでもできた。


「よし終わり」


最後のプレイヤーを斬り伏せると魔装を解除して短刀状態のフェルリアを腰に戻す。そしてリンの元へ戻るとそこには動けるようになったリンと何故か興奮した様子で話しているリリーがいた。


「どうしてここにリリーがいるの?」

「セツノとリンならウォーレアを倒せると思ったからウォーレアの素材を見たくてここで待ってた。希少な素材と自分の持つ全ての技術を使って何かを作るのは全ての生産系プレイヤーの夢」


リリーはそう言うとリンが取り出したウォーレアの素材に目を移した。その様子はおもちゃを与えられて喜ぶ子供みたいだった。


「リリーが武器と防具をウォーレアの素材で強化してくれるんですって師匠!!」

「そうなんだ。良かったね」


そのまま僕とリンが談笑していると、突然背後から声をかけられた。


「お話中のところ申し訳ございません。突然ですがお二人に頼みがあります。聞いてもらってもよろしいでしょうか?」

「「!?」」


フェルリアを抜いて振り返るとそこには全身黒の忍のような装備のNPCの鬼が片膝をついていた。


「頼みって何?」


目の前の鬼から敵意は感じられなかったため、一旦フェルリアを腰に戻して話を聞くことにした。ただし、いざという時はすぐに斬れるようにフェルリアに手を当てておく。


「お二人には鬼の里に来てもらい長のイブキ様に会って欲しいのです」

「鬼の里?」

「はい。ここから遠くの森に鬼が多く住んでいる里があります。そして里の長のイブキ様がお二人に会いたがっています。この近くには一部の者だけが知っている鬼の里の近くまで繋がっている()があります。私と一緒に()を通り鬼の里に来てくれませんか?」


目の前の鬼は頼みを淡々と告げると、僕とリンの返事を待っている。


「ちょっと待ってね。いきなりだから少しだけ考える時間をもらうね。……どうするリン?僕は行ってみてもいいかなと考えてるけど」

「私も行きたいです」

「じゃあ鬼の里に行こうか」


僕とリンは唐突だが鬼の里に行くことを決めた。


「私も行ってみたい。いい?」

「お二人の友達ですか?問題ないですよ」


リリーも行くことになった。


「それでは早速ですがついてきてください。道まで案内します」


忍のような鬼は立ち上がると道がある場所へ歩き出した。


――――――


「道はここにあります」

「へ?ここに道があるんですか?」

「はい」


忍のような鬼についていくと湿地帯を出て森の中に入り、森の中を少し歩いて道があるという場所に着いた。


そこは普通に遊んでいたら誰も辿り着かず見つけても興味を示さないだろう小さな湖だった。


「この湖は幻術で道のカモフラージュになっています。なのでこの水は偽物です」

「本当だ。手が濡れない」


リリーが湖の水を手ですくおうとしてみるが水はリリーの手をすり抜けた。


「道はこのカモフラージュの湖の中心にあります。お二人は道を通る時に闘気を使わないでください。道は設置された空間転移系統の魔法なので闘気を使われると打ち消しあって壊れてしまいます」

「魔法なの?鬼は魔法を使えないのに道を作れたの?」

「道を作ったのは鬼ではありません。鬼の里はいくつかの種族と手を組んでいます。そのなかの魔法が得意な種族に頼んで道を作ってもらいました」

「そうなんだ」

「それでは道を使って移動しましょう。ついてきてください」


鬼は幻術の湖の中を進んで中心まで行き、僕、リン、リリーも鬼の後を追いかけて湖を進む。


「道よ、開け」

「「「!?!?」」」


鬼が湖の中心でそう呟くと眩しい光を放つ球体が現れた。


「あとはこれに触れるだけです。触れたら数秒後には鬼の里がある森に着いています」


鬼が球体に触る。すると球体に吸い込まれるようにして鬼の姿が消えた。


「僕たちも行こうか」

「そうですね」


鬼に続いて僕、リン、リリーも球体に触れる。僅かな引力を感じて身体が球体に吸い込まれる。


「「!?」」

「これは凄いね!」


道に入ると先程感じた引力が強くなって、目的地まで一直線に伸びている道の終点に向けて身体が引っ張られる。僕たちの身体はかなりの速さで進んであっという間に終点に着く。


終点に着いて外に出る。その直前、終点の前にいきなり穴が空き僕の身体を吸い込んだ。


「師匠!?」

「セツノ!?」


リンとリリーが僕を追いかけて穴に入ろうとする前に穴は閉じた。


穴に吸い込まれた僕は外へ放り投げ出されて地面を転がった。


「いきなりなんだろう?道に不具合でも起きたのかな?」


装備に付いた土をぱんぱんとはたき落としながら立ち上がり、周りを見渡すとどこかの森の中で神社のような神聖な雰囲気がする場所だった。


「!?」


そして目の前には空を覆い隠そうとしているかのように太い枝を広げる巨大樹とその根本で全身傷だらけの大きな猫が休んでいた。


そして眠っているように見える猫はゆっくりと目を開いて僕を見た。猫と目が合った。


『強引に呼んですまなかった』

「!?」


いきなり頭の中に声が響いた。


「今のは君?」

『そうだ』


猫と目を合わせたままそう呟くと肯定の返事が僕の頭の中に響いた。


『頼みがある。どうか我々を助けてくれないか?』

「えっ?」


次々に頼まれるセツノさん


ブクマと評価、よろしくおねがいします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ