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29 湿地帯探索


「はぁ。今日一日大変だったな」


通学路を一人で歩いて帰宅しながら呟く。


僕と流音がお互いをセツノとルアと認識した後、関係性が見知らぬ隣人からゲームの知り合いにへと変化したため、流音が休み時間に毎回話しかけてきた。


その結果、転校生が必ず体験するであろうイベント、クラスメイトの質問攻めが何故か最初から距離感が近い僕にまで及び、毎回の休み時間を普段は全く話さないクラスメイト達と話す羽目になった。


昼休みは碧と夢月がどうにか僕を回収してくれたのだが、流音との関係について二人からずっと聞かれたのであまり休めなかった。ちなみにゲームで知り合って一緒に遊んだと隠すことなく伝えた。


「今日で一週間分くらい人と話した気がする」


普段話す人が碧、夢月、悠だけなので、実際そうかもしれない。


そのようなことを考えていると家に着いていた。


僕はやっておくべき家事をいくつかしてから自分の部屋に向かいVR機器を装着してRFOにログインした。


――――――


RFOにログインすると前回のログアウト場所であるテントから始まった。隣を見ると睡眠状態のリンの姿がある。


「ログアウト中はこうなっているんだね」


どうやらログアウトすると、その場にキャラクターの体が残るようだ。


(というか二人用のテントを一個借りたから一緒に寝ることになっちゃったのか。ログアウトしているから何も起こらないとはいえ、男の僕と一緒のテントは嫌だろうし今日ログアウトする時にリンに話してもう一つ借りてそこでログアウトしてもらおうかな)


「お!師匠!こんにちは!」


テント事情について考えているとリンがログインしてきてキャラクターが目覚めた。


「あっ、うん。こんにちは」

「それで師匠!今日は何をやるんですか!?」

「今日はリンのレベル上げと装備の素材集めを兼ねた湿地帯探索を考えているかな。リンはウォーレアと初期装備で戦いたくないでしょ?」

「はい!」


他にも湿地帯でどのくらい動けるか確認しておきたいという意図がある。湿地帯という環境がどのくらい自分に影響を与えるかを知らないでネームドボスモンスターであるウォーレアに挑むのはただの自殺行為だろう。


「それじゃあ行くよ」

「はい!」


僕とリンはテントを出て湿地帯に向けて移動を始めた。


――――――


闘気を両足に纏わせて能力を上げ、森の中を突っ切る湿地帯への最短ルートを駆け抜ける。


リンがちゃんとついて来れているか気にしつつ走ること十分、森が急に開き僕とリンは目的地である湿地帯に足を踏み入れた。


「はぁはぁ、ここが湿地帯、ですか。……動きにくいですね」

「そうだね。動きにくさに早く慣れないとだね」


湿地帯はほとんどの場所が水に沈んでいて動きにくく、僅かな陸地も泥のようになっており、足が沈み装備に泥がまとわりついて体が重くなる。


「水深が深いところからモンスターが出てくるみたいだから、移動できる浅いところと深いところを見分けられるようにならないと、か!」

「わっ!?」


突如濁った水の中から飛び出して来た魚型のモンスターをフェルリアで真っ二つにする。


「全然音がしなかった。魚型モンスターの奇襲に気を付ける必要もあるね。……じゃあリン。この付近でレベル上げ頑張ってね。僕はここにいるから何かあったら戻って来ていいよ。それと僕が呼んだら戻って来てね」

「あっ、はい。わかりました。頑張ります!……それで、その……師匠、私を引っ張り上げてもらってもいいですか?」


リンは飛び出して来たモンスターに驚いて尻もちをつき、その勢いで体の半分ほどが泥に埋まって動けなくなっていた。


「…………」


リンを引き上げる。


「うぅ、泥だらけで体が重いです。それに装備がべちょべちょで気持ち悪い」

「……それも訓練だと思って頑張って」


泣き言を言うリンをレベル上げに向かわせると、手持ちのモンスターの素材から一番強度がありそうな大きな骨とルアからもらった糸を取り出し、糸を骨に結んで簡易的な釣竿を作った。そして先程真っ二つにしたモンスターを餌にして水深が深いところは投げ入れた。


「あとは目的のモンスターが掛かるのを待つだけか。暇だしリンの様子でも見てようかな」


簡易的な釣竿を左手で持ち、【視覚強化】を発動させてリンの戦闘の様子を眺める。


「……音無しの奇襲に翻弄されているみたいだけど()()()()からどうにか対処できてるみたいだね」


六体ほどの魚型モンスターの群れの奇襲と連続攻撃を最初は避けるだけで精一杯のようだったが、だんだんハルパーでカウンターを当て始め、一体ずつ確実に斬り落としていく。


「訓練の成果がちゃんと出てるみたいだね」


やがて群れを全滅させると、次の魚型モンスターの群れに突っ込んでいった。


「あの様子だと大丈夫そうだね。どちらかと言うと僕の方が大丈夫じゃないか」


左手で持つ釣竿は全く揺れない。


「餌が悪いのかな?」


手持ちのモンスターの肉を適当に放り投げる。


「これで来てくれるかな?……暇だしまたリンの様子でも見てるか」


再びリンの方へ目を向ける。レベル上げは順調に進んでいるようで、このまま行けばログアウトする時刻になる前に進化できるレベルまで辿り着きそうだ。


そんなことを考えていると、突如強い力が釣竿を引っ張った。


「かかった!」


すぐに闘気で強化した両腕で釣竿を持ち、かかったモンスターとの力比べが始まった。とはいえすぐに力比べに決着がついた。


「リン。戻って来て!」

「はい!」


思いっきり釣竿を引いて水中から目的のモンスターを引きずり出す。


僕とリンの頭上を独特な形をしている大きな魚型のモンスターが通った。


「うわぁ、凄いモンスター釣りましたね」

「湿地帯の中ボス的なモンスターらしいよ。武器と防具を作るのにはぴったりだと思うよ」


僕とリンは、目の前でジタバタと少し暴れてから体制を持ち直した五メートルほどある魚に大きな足が生え、鋭い鱗が全身に生えているなんとも言えないモンスターと向かい合った。


「「【鑑定】」」


リンは【世界視の瞳】、僕は【鑑定】を発動させて相手を調べる。


――――――

種族:泥鱗魚(でいりんぎょ)

名前:なし

LV:44

――――――


「リンとレベル差はあるけど勝てない相手ではないから頑張ってね。僕はサポートに徹するから」

「私があれを倒すんですか!?」

「そうだよ。こんなのにも負けるようじゃウォーレアと戦って生き残るなんて夢のまた夢だよ」

「そう、ですね。私やってみせます!」

「うん。それじゃあ始めようか」


リンがハルパーを構えて戦闘態勢になる。向こうも咆哮を上げ、戦闘が始まった。


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