20 旅人バトルロワイヤル 決着
追記 エリスを間違えてイリスと書いていました。修正しました。正しいのはエリスの方です。申し訳ございませんでした。
――――――
『セツノ。わしだけが知っているとっておきの毒の作り方を教えてやろう』
「とっておきの毒、ですか。どんな毒なんですか?」
『それはな……一時的に他の種族の特徴を発現させる毒じゃ!』
「そんな毒が作れるんですか!?」
『あぁ、作れるぞ。まぁ作るのには特徴を発現させたい種族の血もしくは同じような働きをする体液が必要じゃからのぉ、今作れるのはエルダートレントの特徴を発現させる毒だけじゃが』
「その毒の作り方を教えてください!!」
『いいぞ。この毒は危険な毒じゃからの。わしの話をよく聞いて作るんじゃぞ』
「はい!」
――――――
「アハッ!」
「「「!?」」」
自分の体が破鬼とエルダートレントの特徴が混ざった体に変質していくのがわかる。全身の皮膚がゴツゴツし裂け目のある樹皮のように変質し、自分を中心にしてさまざまな植物が生え始める。エリスにやられた部位は完全に再生し毒も抜けた。
「硬そうですね。斬ったらどんな手応えがあるんでしょうか?」
「確かにぶった斬ったら面白そうだな。アイは少し下がったら支援頼む」
「わかった」
「まだまだ力を残していたのね。もう一度地に伏せてあげる」
変化した僕の姿を見た三人がそれぞれ自由に喋る。ハルバードを持った男と一緒にいた女は後ろに下がるとバイオリンのようなものを構えた。
(エリスに付けた傷が治ってる。ポーションは使ってなかったからなんらかの回復スキルを持っているのか。確実にとどめを刺した方がいいな。あとは下がった女が何をするのかに気を付けよう。他の二人は何をするのかわからないから様子見からだな)
僕は四人を一通り観察すると、自分の周りに巨大な木の根を生やし四人に向けて伸ばす。
「さて、どう動くか」
最初に動いたのは刀を持った女だった。
「【抜刀術 白閃】」
女がそう呟いた次の瞬間、黒い刀のはずなのに刀身が白く光ったと思ったら女に向かっていた木の根が全て斬り裂かれていた。
次に動いたのは支援職だろう女とその仲間の男。
「【戦の音色 勇猛果敢】」
「ナイスだ!おっらぁ!!」
女がバイオリンのようなもので聞いたことのない曲を演奏すると男がハルバードを両手で薙ぎ払うように振り、一振りで男と女に向かっていた木の根が引き裂かれた。
「演奏でバフをかけれるのか。早めに潰しておいた方が良さそうだね」
そして最後に動いたエリスは血を操って障壁を作り木の根を止めると、その上を走って僕との距離を詰めてくる。
刀を持った女とハルバードの男も僕が次々伸ばす木の根を斬り飛ばしながら距離を詰めてくる。
「まずはハルバードの男とそのセットから倒すか」
木の根を全て刀の女に集中して伸ばし木の根を斬り続けている間にエリスとハルバードの男に対応する。
「【開花 麻痺ノ毒花】」
自分の周囲に主に黄色のさまざまな花が咲き始め、それらの花は吸い込むと麻痺を引き起こす花粉を辺りに振り撒く。
「【風の音色 風車】」
「ナイスだ!アイ」
「攻撃もできるのか。ますます厄介だね」
後ろの女が別の曲を演奏すると風が吹き麻痺の花粉を全て吹き散らした。そして僕に風の刃を飛ばしてくるが闘気で無効化する。
(闘気で無効化できるということは一応魔法なのか)
花の中を男が駆け抜けハルバードを僕に振り下ろす。僕は試しに右腕を闘気で強化せずに受け止める。
「僅かに傷が付いただけか。この皮膚は相当硬いんだね」
「ちっ」
男の振ったハルバードは僕の腕を斬ることができずに止まっている。【闘気硬化】を合わせて使ったら無傷だっただろう。
「【血液操作 血爪】」
背後から茨姫の命剣と血を纏った左手から放たれた爪撃が僕を襲う。
僕は左手に持ち替えたフェルリアで茨姫の命剣を受け止めたが、爪撃は僕の腹部に直撃する。しかし僕にダメージはない。
「【開花 烈火ノ紅花】」
今度は僕の周囲に紅い花が咲き始め火の粉を撒き散らすと、麻痺の毒花を燃料にして僕とエリス、ハルバードの男の間で燃え上がる。
「【水の音色 瀑…】!」
「……くそっ!アイ!気を付けろ!」
炎でハルバードの男の視界を遮った瞬間に支援の女に向けて走り出しフェルリアを向けて魔法を放つ。
「暗黒…!?」
「【色光流 赤円転】!」
魔法を放つ直前で左側から赤い光と共に刀の女が回転しながら木の根から出てくると僕の左腕を断ち切った。
(相当な硬度を持つ樹皮の腕を斬った!?やばいなこいつ)
「私を仲間外れにしないでくださいよ」
赤い光と共に続けて振られる刀をギリギリで避けつつ斬られた左腕を刀の女に向けて伸ばす。
「潰れろ!!」
「タイミングが悪いね」
背後から迫るハルバードを左に跳んで避け、後ろに木の根を伸ばして壁を作りエリスを止める。更にハルバードの男の足に木の根を巻き付けて足止めをする。
これで三秒ほどは刀の女だけに集中できる。
「「ここで……」」
「倒す!!」「斬る!!」
斬られた左腕から木の根が勢いよく心臓目掛けて伸びた。刀の女はそれを避けることなく足を進め、心臓に木の根が突き刺さる。その状態で女は刀を振った。
「【開花 彼岸花の棘鞠】」
「【色光流 黄の七凪】」
刀の女の心臓を貫通したままの木の根が緋色に染まると膨張し棘がある球体に変形する。膨張した時に刀の女の胸から下が千切れ棘が上半身を穴だらけにする。しかし刀の女は止まらず、その状態で刀を六回振って木の根を斬り刻むと最後の一閃で僕の胸部を浅く斬った。
今度は【闘気硬化】を発動させて受けたのと直前の僕の攻撃で全力を出せなかったからか傷は浅く済んだ。
「アハッ!」
斬り刻まれた木の根を再び伸ばすと刀の女の上半身に巻きつけて支援の女に向けて投擲する。
それを見たハルバードの男が僕に攻撃するのを諦めて支援の女を守りに入ったのを確認すると、振り返って木の根の壁を斬り破って飛び出してきたエリスの相手をする。
「【血液操作 鮮血千剣葬】」
「【開花 月下銀花】」
鮮やかな赤色の血で作られた千に届きそうな血剣が僕を取り囲みその中心で一段と紅く輝いている茨姫の命剣が僕の首に向かって伸びる。
そんな僕の左手には月の光を浴びて銀色に輝く一輪の月下銀花がある。右腕から木の根を伸ばして回収したフェルリアで茨姫の命剣を受け止め、左手で月下銀花をエリスの胸に突き刺す。次の瞬間、月下銀花が枯れると共にエリスが大量に血を吐いて倒れ、エリスが発動させていた辺りを夜にする魔法と全ての血剣が解けた。
「この、花、どういう、こと?……聖の力を……」
「アハッ!僕が聴いた話によるとさ、この花は月の光で育って銀の花弁を作り聖素を溜め込む対魔の花なんだって!」
魔の陣営に所属している全ての種族は魔素というものが体内に流れており、この魔素を使って魔法や種族限定のスキル、例えば鬼なら闘気を使う。
聖の陣営の場合、魔素の代わりに聖素というものを使う。それ以外は魔法の使い方も種族限定のスキルの使い方も魔の陣営と変わらない。
そして聖素と魔素には互いをぶつけると打ち消し合い、力が強い方が残るという性質がある。
「アハハ!何が起こったか説明してあげるよ。僕はね、この花が溜め込んでいた聖素を君の体に流し込んだんだ!君は【血液操作】で魔素を結構消費していたから僕が流し込んだ聖素の方が勝った。その結果、君の体の中に残った聖素が魔素に適応した体と拒絶反応を起こした。君が今受けているそのダメージは体の拒絶反応だよ」
「……クソ!」
「アハッ!女の子がそんな汚い言葉を使ったらダメって教わらなかったの?お仕置きが必要だね。それじゃあさようなら」
そうして僕は地面に倒れているエリスの首にフェルリアを振り下ろす。
「【破壊の音色 爆裂音響】」
「……せっかく今いいところなんだからさ……邪魔しないでよ!!」
フェルリアがエリスの首を突き刺そうとした時、支援の女が演奏する曲が聞こえ、それと同時に僕の体が爆ぜた。
「自分の体が爆発しといて無傷とかほんとに化け物かよ」
エリスを殺すのを一旦先延ばしにして楽しい時を邪魔して僕をイライラさせたハルバードの男とセットの女を先に殺すことにした。
「【闘気反応】」
僕から支援の女まで男と分断するように調整をして地割れを引き起こすと、闘気で足を強化して支援の女まで一気に距離を詰める。そして闘気で強化した手で殴りかかる。
「予想通りの単純な動きだな!」
聖なる力を纏わせスキルや女の支援で更に強化したハルバードで僕の頭をかち割ろうとする男が突如僕と女の間に現れた。
(幻術の魔法かそれを引き起こすアイテムもしくは女の支援にそういうのがあったのか、とにかく地割れで分断したのは偽物で本物は女の近くに隠れていてこの時を待っていたのか。まぁ……)
「僕もお前がそんな単純な動きでくることを想定していたけどね!」
そもそも最初から狙っていたのは支援の女ではなく、女を狙った時に必ず守りに来るハルバードの男。一回目と同じようにただ走って距離を詰めて攻撃しようとしたのは確実に男を誘き寄せるトラップ。
ハルバードを振り下ろされる前に男の顎を殴って脳震盪を引き起こすと動けなくなった男の心臓に左手でフェルリアを突き刺す。
念のため蹴って頭を180度回転させて確実に殺したことを確認すると、すぐさま支援の女に足掛けをして転ばせると無駄な抵抗される前に頭を踏み砕く。
「さて、今度こそエリスを殺すか……ってまだ生きてたの?」
「【色光流 黒隠斬】」
何故か五体満足の状態で僕に斬りかかってくる刀の女をフェルリアでいなす……が完璧な奇襲だったため、数カ所傷を負った。
「アハッ!君って不死身なの?」
「既に死んでるだけ」
「既に死んでる……アンデッドか」
刀の女から距離を取る。
(さて、どう倒すか)
刀の女は刀を鞘に戻して構えを取った。
「次で終わりにします。【色光流奥義 七色征現斬】」
七色の光を放つ刀に手をかけた女が僕に迫る。
(これ当たったら死ぬね。というかフェルリアで受け止めてもその後に確実に斬り殺される。どうしよう?)
「あっ、閃いた」
僕と女の距離が二メートルほどまで近づいた時、倒し方を思い付いた。
「【闘気反応】」
「これで……えっ!?」
「アハハ!じゃあねぇー」
最後の一歩を踏み出した刀の女が僕が【闘気反応】で作った落とし穴に落ちていく。そして落とし穴を【闘気反応】を使って一度押し潰してから埋める。
ベキベキベキと骨がひしゃげ最終的にグシャッと押しつぶされて砕ける音が聞こえた。
「ここまですれば倒せるかな。倒せてなくてももう何もできないだろうからいいけど。……邪魔者は消えたし今度こそエリスを殺すか」
「それは……できないわよ」
「へぇー。もう立ち上がれるんだ。凄いね」
振り返るとふらふらの状態でどうにか立っているエリスがいる。
「君は私よりも強かった。今は勝てない。だから私は逃げさせてもらうね」
「逃がすと思うの?」
「君に私は捕まえられないよ。それじゃあ次は勝つから」
そう言った直後、エリスの体は数多の蝙蝠に変化し飛び去った。
僕は木の根を伸ばしてなるべく撃ち落としていく。飛んでいった蝙蝠の九割を落とした時、エリスに逃げられたのを確信した。
「あーあ、そういうことか。まんまと逃げられた」
おそらく蝙蝠はフェイクで影を使ってエリスは逃げた。今頃片腕でも失った状態でどこかの影から外に出て回復するのを待っているのだろう。
「勝負に勝って戦いに負けたとでも言うのかな?まぁ生き残ったんだからいいか」
注射器を取り出して解毒薬を自分にうつ。すると体は元の鬼の体に戻る。そして大の字になって草原に寝転がる。
「体が動かない。毒の代償か。使う時は気を付けよう」
その状態で数分間経った時、右手首からルアの声が聞こえてきた。千切れていた糸がもう一度繋がったようだ。
『セツノ無事?』
「どうにか。でも動けなくなっちゃったから回収しに来て欲しい」
『わかったわ。ノエルと一緒にすぐに向かうわ。場所はわかるから大丈夫よ』
『セツノお兄ちゃん!待っててね!』
「待ってるよ」
二人に回収しに来てくれるように頼んで連絡を終わりにした。
「アハッ!楽しかったなぁ」
僕は戦いの余韻に浸りながら二人の到着を待った。
ブクマと評価、よろしくおねがいします。




