13 特殊クエスト
「えっと、これはどういう状況なのかしら?」
「セツノお兄ちゃん、面白そうなことしてるね!」
背後からルアとノエルの声が聞こえて振り返る。
「早く集合場所に着いたからレイトスに手伝ってもらって戦闘に使える毒を作ってたんだ」
きりがいいところだったので、自分の周りに広がっている調合セットと作成した毒を片付けながら質問に答える。
「セツノお兄ちゃん、どんな毒作ったの?」
「特に使えそうなのは、状態異常の麻痺にする毒、猛毒にする毒、再生を阻害する毒、一時的に興奮させて痛覚を感じなくし身体能力を上昇させる毒、他の毒と混ざって毒を強化し更にすぐに気化するようになる毒とかかな。他にもあるよ」
「何個作ったのよ。というか聞いただけでもやばいってわかる毒がいくつかあったわね」
ルアが呆れた顔をしてそう言い、ノエルは凄いと言って無邪気に笑っていた。
『わしが教えたとっておきの毒もあるぞ。あの毒を使うのは奥の手になるがのぉ』
「そうですね。あの毒はやばすぎるので強敵への奥の手になりますね」
「そこまで言うなんて、いったいどんな毒を作ったのよ」
「奥の手なので秘密です」
片付けを終わらせるとノエルの横に並ぶ。
「四時半。時間ぴったりね。じゃあ特殊クエストを受けるけど準備はできているかしら?」
「準備できてるよー!」
「僕も大丈夫だね」
「わかったわ。レイトス、もう一度特殊クエストを受けるわ」
『もう一度受けてくれるのか。助かるぞ。前回撃退したモンスターが数を増やしてまた向かってきておる。おぬしらにはそのモンスターの討伐を頼む。』
「わかったわ」
「GAAAAAAAAAA!!!!!」
その時、北西の方角の森の奥からさまざまなモンスターの声が混ざった咆哮が聞こえた。
「行くわよ!」
「うん!お姉ちゃん!」
咆哮が聞こえた方へ走り出したルアとノエルに少し遅れてついて行く。
『戦える蟲人をすぐに集めておぬしらの方に向かわせる』
「わかったわ。私が指揮するから私のことを伝えておいて!」
レイトスとルアのやりとりを聞きつつ両足に闘気を纏わせて身体能力を強化すると、一気に加速してノエルにまで追いつき並走する。
そのままルアについて行くと、植物が全く生えていない更地とかした場所へたどり着いた。
「ここは前回のクエストでモンスターを撃退したところだよ。前回のクエストの前までは植物があったんだけどモンスターに全て踏み潰されちゃったんだ」
「ひどいね」
辺りは一面茶色で緑はなく、地面が削られて岩が見える場所もある。
「セツノ、この辺りで戦うわ」
「わかった」
「時間がないし急いで準備するわよ。ノエルとセツノはこれを埋めてきて欲しいわ」
そう言ってルアから円形のアイテムをたくさん渡された。
「これは?」
「罠よ。作動したら糸が出て拘束するものと毒を撒き散らすもの、あとはノエルの複数の状態異常を与える鱗粉を辺りに散布するものね」
「私とお姉ちゃんのお手製罠だからね!威力は申し分ないよ!期待しててね!」
「楽しみにしておくよ」
そうして渡された罠計五十個を僕とノエルでモンスターの通り道へ埋めた。
「そうだ。ノエルにこれを渡しておくよ」
罠を埋め終わってルアのところへ戻る時、ノエルへ先程作ったばかりの毒が入った試験管を二本渡した。
「一時的に興奮させて痛覚を感じなくし身体能力を上昇させる、自分に使う毒だよ。使う使わないはノエルの自由でいいよ」
「ありがとう!セツノお兄ちゃん!ありがたく使わせてもらうね!」
「効果時間は三十分だよ。効果が切れるタイミングには気を付けてね」
「わかった!」
ノエルに毒を渡してからルアのところへ戻ると、ルアは周りに糸を張り巡らせていてモンスターがトレントの村へ進めないようにしていた。
「埋めてきたよ!お姉ちゃん!」
「お疲れ様。私の方も準備できたわよ。……っ!いよいよ始まるわね」
準備が終わるのと同時に遠くからゴゴゴと大量のモンスターの足音とGAAAAというさまざまなモンスターの声が混ざった咆哮が聞こえ、地面が揺れた。
音のする方を見ると、遠くから黒い波が押し寄せてくるのがわかった。
「もしかしてあの黒いの全てモンスター?」
「そうだよ。前回よりちょっと多いかな?」
モンスターの数が想像を遥かに超えていた。千体は余裕でいるかもしれない。
「【闘気変換】【闘気纏】【闘気操作】【闘気硬化】」
体内の魔素を闘気へ変えそれを四肢へ纏わせると硬化させる。フェルリアにも闘気を纏わせて構えると、最後に先程ノエルに渡したのと同じ毒……狂化毒(今命名)を飲んで、接敵するのを待つ。
ノエルも手甲を装着しいくつかのスキルを発動させて準備を終わらせていた。
「あと五秒で罠を踏むわ!その七秒後に接敵!」
ルアの言葉通りに五秒後に一番前を走っていたモンスターが罠を踏み起動させた。
ルアの罠を起動させたモンスターは飛び出した斬糸によって斬り裂かれ、遅れて飛び出した粘着質な糸によって周りのモンスター捕まった。
急には止まることはできない。それは人もモンスターも同じで糸で動けなくなったモンスターは後続のモンスターに次々と轢き殺されていった。
ノエルの罠を起動させたモンスターは状態異常によって悲惨な終わりを迎えていた。
罠が起動した時、さまざまな色の鱗粉が辺りに撒き散らされた。吸った鱗粉によって違う状態異常にかかり、鱗粉を吸ってしまったモンスターは等しく死へと誘われた。
赤色の鱗粉を吸い込んだモンスターは数秒後に突如倒れて体が燃え、同じ種類のモンスターに面白いように燃え広がった。
青色の鱗粉を吸ったモンスターは何故か近くのモンスターへと攻撃を始めた。後続のモンスターも巻き込んで同士討ちが始まった。
黄色の鱗粉を吸ったモンスターは痙攣したかと思うと倒れて動かなくなり、後続のモンスターに踏み潰されてぐちゃぐちゃになっていた。
緑色の鱗粉を吸ったモンスターは体に白い塊ができると急速に枯れていき、原型がわからなくなるほど枯れて小さくなると白い塊が爆発して緑色の鱗粉がさらに広まった。
ルアとノエルの罠によってモンスターは数を減らしていくが、それでも足を止めることなく向かってくる。
最初の罠が踏まれてからルアが言った通り七秒後、僕はモンスターと接敵した。
【鑑定】を発動させてモンスターのレベルを見てみると、高いレベルのモンスターは全くおらず、レベル二十を超えているモンスターが数体程度でレベルが一桁の個体までいる。
レベル四十を超えている自分からしたら雑魚ばかりだった。
フェルリアで飛びかかってくる小型のモンスターを斬りつつ貫通に特化した闇の槍を撃つ魔法暗黒槍を連続で飛ばしてモンスターの急所をまとめて貫く。
フェルリアがない左から襲って来るモンスターは闘気を纏わせた左手で殴って頭を潰す。モンスターのレベルが低いのと闘気の強化のおかげで、少ない力で弾くだけでも簡単に倒せる。
フェルリアの魔法でモンスターの処理が早くできる。その結果、少し余裕ができたのでルアとノエルの様子を確認する。
ノエルは背中の羽を羽ばたかせて空を飛び鱗粉をばら撒いてモンスターに死を振り撒きつつ、急降下してモンスター数十体を殴り殺すと再び空へ戻るを繰り返している。
鱗粉で休息しながら戦えているのでまだまだ大丈夫そうだ。
ルアの方は斬糸で近づいてくるモンスターを片っ端から切り裂いていた。ルアが手を振ると次の瞬間にはモンスターが肉片に変わっていて、ルアの前にはモンスターの肉片の山が出来ていた。
ルアが張り巡らせた糸の後ろにはレイトスが言っていた蟲人が集まっていた。糸の間から魔法を撃ったりそれぞれの蟲の力を使ったりしてモンスターを処理していた。
「僕ももっと頑張らないとね」
力強く一歩を踏み出しフェルリアを真横に薙ぎ払った。その時、踏み出した足から無意識に地面へ闘気を流し込んだ。直後、剣のような形をした岩が前方に隆起し、モンスターを穿った。
「!?……っ!そうか!これが【闘気反応】か!地面に闘気を流し込んだから地面とそこにあった岩を操ったんだ!」
もう一度地面に闘気を流し込むと、どこをどのように動かせるのかが理解できた。
「穿て!」
先程よりも多く闘気を流し込み、自分の視界に映るモンスターの足元から剣の形をした岩が隆起するのを想像して【闘気反応】を発動させる。
結果、僕から五メートル以内にいた全てのモンスターが岩に貫かれて死んだ。
五メートルより離れていたモンスターには流し込んだ闘気が足りなくて倒せなかった。
「なるほど。自分から離れれば離れるほど操るのに必要な闘気の量が増えるのか。五メートルまではある程度の闘気の量で自由自在に動かせそうかな」
再び地面に闘気を流し込み、今度は左腕に纏わせるのを想像して【闘気反応】を発動させる。すると僕の闘気が流し込まれた岩や土が浮かび上がり、左腕に付着し纏うことができた。
「流し込んだ闘気を自分の体に纏わせるようにすればこの岩と土にも【闘気硬化】が使えるはず……できた!」
思いっきり地面を踏み込んでモンスターの集団に突っ込むと、【闘気硬化】が発動した岩と土でできた巨大な腕を無造作に振るう。
それだけで僕の目の前からモンスターが消え去り、モンスターだった肉片や大量の血が辺りに降り注いだ。
「ふふふ。しばらくはこれであーそぼ!」
フェルリアを腰に戻すと右腕にも【闘気反応】と【闘気硬化】を使って左腕と同じものを作り纏う。
そしてモンスターの集団の中へ飛び出した。
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投稿遅れてごめんなさい。




