12 毒作り
「もうこんな時間か。そろそろログアウトしないと」
時間を確認してみると、現実の時間で夜の七時を過ぎたところだった。夕方の四時に学校から帰って来て始めたから、だいたい三時間ほどプレイしていたことになる。
「三時間も経ってたんだ。時の流れは一瞬だね」
ノエルとルアの鬼ごっこに視線を戻すと、ノエルが糸でぐるぐる巻きにされてイモムシのようになっていて、ルアから説教を受けていた。
少し目を離した隙に鬼ごっこに決着が付いていたようだ。
ノエルが蝶の蟲人でルアが蜘蛛の蟲人だから、こういう結果になるだろうとは鬼ごっこが始まった時には予想ができていた。
「安全な場所でログアウトしたいし、泊まらせてくれる場所があるかルアに聞きに行こう」
ノエルとルアのところまで歩いていく。
「ルア、聞きたいことがあるんだけど、大丈夫かな?」
「あっ、えぇ大丈夫よ。ほったらかしにしてしまって申し訳ないわね」
「大丈夫だよ。それで聞きたいことなんだけど、ここにある泊まれる場所を教えてくれないかな?今日はそろそろログアウトしようかなと考えているんだけど」
「あぁ、それならあの三階建ての建物が宿屋よ」
「……あれか」
ルアが指差す方を見ると、木造の立派な三階建ての建物がある。
「良さそうなところだね」
「実際良いところよ」
「ルアとノエルも泊まってるの?」
「えぇ、あそこに泊まっているわ。というかあそこ以外にここで泊まれる場所がないから自動的にあの宿に泊まることになるわ」
「そうなんだ。教えてくれてありがとう。じゃあ僕は行くね」
「あっ、ちょっと待って。フレンド登録をしましょう?」
「フレンド登録か。いいよ」
ルアから届いたフレンド申請を了承する。
「お姉ちゃん。私もセツノお兄ちゃんと登録したいからこの糸解いてほしいな!」
「わかったわ。ほら」
「ふぅ、やっと解放された。じゃあセツノお兄ちゃんフレンド登録しよ!」
ノエルからも届いたフレンド申請を了承する。
「やったぁ!これでセツノお兄ちゃんと友達だ!」
「最後に聞いておきたいのだけど、セツノは明日もプレイする?」
「する予定だよ」
「何時くらいにログインする?」
「んー、何か予定が入らなければ夕方の四時くらいかな。遅くても4時半までにはログインすると思う」
「私とノエルもだいたいその時間にログインするから、四時半に集まってその後特殊クエストを攻略するってことでいいかしら?」
「うん。いいよ」
「クエストの詳細は後でフレンドとできるチャット機能で送っておくわね」
「わかった。ありがとう。じゃあまた明日」
「セツノお兄ちゃん、ばいばい!また明日!」
「明日また会いましょうね」
僕はルアとノエルと別れると教えてもらった宿屋に向かい、部屋を借りてログアウトした。
――――――
そして翌日。何事もなく家に帰ってこれたので四時過ぎにログインする。
昨日泊まった部屋のベッドの上にスポーンすると、木が放ついい匂いが僕の鼻腔をくすぐった。
「そういえば昨日はノエルに振り回されてあまり景色を見てなかったね」
部屋の壁の一部に大きな窓があり、そこから外を眺める。
目の前にはそこまで大きくはないが川が流れていて、石造りの橋が何個かかけられている。そして川の周りには家が数軒建てられていて、少し離れたところによく実っている畑がいくつも確認できた。
「しばらくここに滞在してもいいかもね」
一週間くらいはここでゆったりと過ごすのもいいかもしれない。
現実だと都会に近い場所に住んでいるため、このような自然に囲まれたところで一日を過ごしてみるのに少しの憧れがあった。
「そうだ!チャットを確認しないと」
クエストの詳細はチャットに送っておくというルアの言葉を思い出して、チャット機能を開きメッセージを確認する。
◇◇◇
『そういえば集合場所を決めていなかったからまず集合場所を教えるわね。この宿から出て道を左に進んでいくと二軒ほど建物を越えた先に大きな一本の木があるわ。その木で集合ね』
『それじゃあクエストの詳細ね。クエスト名は《トレントの村を守れ》でクリア条件がトレントの村を襲うモンスターの討伐と村を守ること。参加条件はレベル四十以上だけ。場所はトレントの村の周りの森の北西部』
『頼りにしてるわよ』
◇◇◇
「モンスターの数はわからないのか。まぁどんなに多くても倒すだけだし村を守るのも近くのやつを片っ端から倒していけば大丈夫かな。参加条件も満たしているし問題ないね」
一通りクエストの詳細を目を通す。
「あっ、ノエルからもきてる」
ノエルからのチャットも確認する。
◇◇◇
『セツノお兄ちゃんへ!今考えてる作戦を教えるね!今考えてある作戦はお姉ちゃんが糸と毒で私とセツノお兄ちゃんのサポートをしつつ狩り損ねたモンスターを討伐してくれるよ!』
『それで私とセツノお兄ちゃんの役割はとにかく一番前でモンスターをたくさん倒すこと!倒しきれなくてもダメージを与えられたら一緒に戦ってくれる蟲人NPCが倒してくれるよ!ここでモンスターの侵攻をなるべく多くくい止めるよ!』
『抜けられてもある程度ならお姉ちゃんと後ろにいてもらう蟲人NPCが倒してくれるから、とにかく多くのモンスターを倒すことが大事になるよ!』
『作戦はこれだけ!一緒に頑張ろうね!』
◇◇◇
「フェルリアの魔法も大事になってきそうだね。多くの敵にダメージを与えられる魔法を登録しておこう」
フェルリアに登録する魔法を考えながらチャット機能を閉じ、時間にはまだ早いが集合場所へ向かう。
宿屋の受け付けをしていた蟲人のNPCに挨拶をして宿屋を出ると、ルアのチャットにあった通りに歩いていく。
そして数分歩くと五十メートルはあるだろう大きな一本の広葉樹が見えた。
「あの木か。想像よりも遥かに大きいね」
駆け寄って触れてみると、生命力のようなものが感じ取れた。
『おぉ?もしかしておぬしがセツノか?』
「ひゃっあぁぁ!?」
触っていた場所の少し上に人に似ている顔が現れ、口が動いて僕の名前を呼んだ。突然のことに驚いた僕は変な悲鳴をあげて尻餅をついてしまった。
『面白い反応をするのぉ。もう一回やってくれ』
「やりませんよ。というか何で僕の名前を知っているんですか?」
『昨日ルアとノエルがわしのところまで来てのぉ、協力者を呼んで来たと言ってセツノという名前の鬼の子について話していったからじゃの』
「そ、そうですか。ちょっと待ってください」
心拍が落ち着くのを待ってから立ち上がると装備についた汚れを払い、木に浮かび上がった顔を見る。
「えっと、改めまして僕はセツノです。あなたの名前を聞いてもいいですか?」
『いいぞ。わしはレイトスという名前でのぉ、種族はエルダートレントというものじゃの。蟲人の者に任せきりじゃが一応この村の村長をやっておる。よろしく頼むぞ』
「こちらこそよろしくお願いします」
レイトスと名乗った目の前のトレントは枝を動かして僕と握手のようなものを交わした。
「ところでセツノ。おぬしは今暇かのぉ?」
「今ですか?…… 戦いに使える毒を作るので暇ではないですが時間はありますね」
時間を確認すると集合時間までまだ二十分ほどある。
「そうか。ならわしがその毒作りを手伝おう。トレントは皆植物に精通していてのぉ、植物を使った毒作りならおぬしの役に立てると思うぞ」
「本当ですか!!それなら是非お願いします!!」
「いい返事じゃ」
調合セットと採取しておいた素材をレイトスの前に取り出して並べる。
「上質な素材が揃っておるの。それなら早速始めるぞ」
「はい!」
そうしてルアとノエルが来るまでの間、レイトスに調合の仕方や素材の特徴を教わり更に【毒作成】のスキルを使ってさまざまな毒を作った。
暗殺に必要な物といったら毒だよね。
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