10 出会い
スタヴィルでの買い物を終えた僕は草原のフィールドに出た。
昨日は見れなかった草原のモンスターだが今日は問題なくスポーンしているようだ。
周りを見渡してみると、ハイエナのようなモンスターに追いかけ回されているプレイヤーと兎のような小型モンスターを追いかけ回している二通りのプレイヤーが確認できた。
「おっと、僕にもか」
【気配察知】が発動した。どうやら僕を取り囲むようにモンスターが四体草むらに潜んでいるようだ。
そういえば【隠密】を発動させていなかった。
フェルリアを抜いて構える。
次の瞬間、左右から同時にライオンのようなモンスターが飛びかかって来た。そしてタイミングをずらして前から二体姿を現し襲いかかってくる。
僕はフェルリアで右から飛びかかって来るモンスターの首を落とすと、左から飛びかかって来るモンスターの両前足を【闘気硬化】を発動させた手で振り払った。
すると、モンスターの両前足が吹き飛んだ。
「おぉ!?ただ手を振っただけなのに……。それに手にはモンスターの爪痕も付いてないしダメージも受けてないね」
レベル差があるとはいえ、モンスターの攻撃に傷一つ付かずにダメージ無し、それどころか逆に手を振っただけでモンスターの両前足を吹き飛ばす、と。
「【闘気硬化】は防御面でも攻撃面でも使いやすくていいね。……というかうるさい」
耳をつんざくような断末魔の声をあげてのたうち回り、辺りに大量の血を撒き散らすモンスターにとどめを刺す。
「風刃」
今度は前方から飛びかかって来る二体のモンスターにフェルリアを向け、今登録した風属性の魔法の一種風刃を放った。
風刃によって二体のモンスターは上下真っ二つになる。
「フェルリアの魔法も高火力で強いね。まぁ武器の元を考えれば納得の威力か」
フェルリアを腰に戻しドロップしたアイテムを回収すると【隠密】を発動させて歩き出す。
◇◇◇
目に付いた【毒作成】に使えそうな植物を採取しつつ歩き進めると、昨日攻略したダンジョンの近くまで来ていて周りの様子が草原から森に変わって来ていた。
「街から離れた森の中なのに意外と綺麗に整備されてるみたいだね。」
ルコールとスタヴィルを繋ぐ交易用の道を歩きながらそんなことを考える。
ちなみになぜこんな場所に道があるのかというと、ルコールと交易をするためらしい。
ルコールは中立の街のため、聖魔関係なく交易を行なっている。
そのため、ルコールの商人の中で魔の陣営で交易を行う商人がこの森を安全に通れるようにするためにスタヴィル側が作ったのがこの道とのこと。
「……ん?」
足を止めて道の右側の森の中に目を向ける。
森の中から誰かに見られているような気がする。視線がする辺りを見てみるが森の中ではあまり日の光が当たらず暗いため、何がいるのかはわからない。
「!?」
【気配察知】を発動させて視線の正体を確かめようとした時、【危機察知】が発動した。その直後、紫色の球体が飛んで来た。
僕は咄嗟に左手を出して【闘気結界】を正面に作り出すと紫色の球体が直撃するのを防いだ。
紫色の球体は液体だったようで結界にぶつかると形が崩れて辺りに飛び散った。その飛び散った液体に【鑑定】を発動させる。
「かなり強力な毒みたいだ…!?」
再び【危機察知】が反応した。今度は上からだ!
毒を警戒して左手で結界を張ったまま上を見上げると、背中にニ対四枚の蝶のような羽を持つ少女が僕の頭目掛けてかかと落としを入れようとしていた。
「もらった!」
少女の声が森に響く。
僕は右手に闘気を纏わせ更に硬化させるとかかと落としを受け止める。ずしん!とかなりの衝撃があって右腕が若干痺れたが、ちゃんと受け止められた。
「嘘ぉ!?」
「よくもやってくれたね」
たとえ同族で見た目がかわいい少女でも喧嘩を売って来た以上容赦しない。
「こ、【甲殻強化】!」
少女がなんらかの防御強化系だと思われるスキルを発動させたため、少女の足を握り潰すことはできなかったが骨を軋ませるくらい力を入れて握ると結界へ思いっきり叩き付けた。
「ごふっ!」
少女が緑色の血を吐く。
「さて、どうしようかな」
足元に転がる少女の背中を踏みつけつつ考える。
「なんで襲って来たか尋問してみてもいいし、そのまま殺してもいいよね。……あなたはどっちの方がいいと思うかな?」
「……前者の方がいいかしらね」
森の中から両手を上げてもう一人少女が出てくる。その少女の背中には三対六本の蜘蛛のような足が付いている。
「僕の問いにちゃんと答えてくれるよね?」
「約束するわ」
「なら殺すのはやめとくか。これは返すよ」
少女を踏みつけていた足をどかして一歩下がる。
「お姉ちゃん!この人強かった!やられたところめちゃくちゃ痛い!ポーション頂戴!」
「まったく。ノエルが勝手に飛び出していって返り討ちにあったんだから自業自得よ。ポーションはあげない……と言いたいところだけど見ていてかなり痛そうだったから今回はあげるわ」
「やったー!ありがとうお姉ちゃん!」
ノエルという名前の少女はすぐに起き上がるとお姉ちゃんと呼ぶもう一人の少女からポーションを貰いすぐに飲み干した。
「かなりの力でやったはずなんだけどなぁ。こんなにピンピンしてるならもう少し力を入れてやってもよかったかな」
痛いとは言ってるから効いているとは思うが、ここまで元気にしていると効いていないのかと心配になるね。
「あはは。鬼のお姉ちゃん、あれ以上力入れられてたら私の片足千切られてたよ」
「笑いながら言うことじゃないわよ!ノエル!」
「お姉ちゃんもやってもらえば?足たくさんあるじゃん!千切れても大丈夫!」
「大丈夫じゃないわよ!足がたくさんあるからって千切れていいわけではないのよ!」
「足の一本くらいならやってあげようか?」
「丁重にお断りします!」
「でもさ、ノエルさんが襲って来たから僕はやり返したわけだけど、思い出してみると最初の毒玉ってあなただよね?それなら僕はあなたにノエルさんと同じことをしてもいいんじゃないかな?」
「確かに!お姉ちゃんも私と同じの受けるべきじゃないかな!」
「結構です!やめてください!それよりも私たちに質問することがあるんですよね?!話がずれ過ぎています!元に戻しましょう!」
「「(お姉ちゃん)逃げた(ね)」」
「うるさいわよ!」
まぁ話がずれ過ぎているのはそうだね。元に戻そう。
「話を元に戻すか。なんで襲って来たの?」
「強い人探してたの!一緒にクエストやってくれそうな強い人!」
「……私が説明するわね。まず私たちの種族のことなんだけど蟲人って言って見たらわかる通り蟲の力を持つ種族なの。それで蟲人ってRFOを始めた時にスタヴィルかトレントの村のどちらかに転移させてくれるのよ」
「それでお姉ちゃんと私はトレントの村を選んでRFOを始めたの!良い場所だよ!」
「ノエルは少し静かにしてて。……それで昨日レベル上げをしてたらレベルが40を超えて二度目の進化をしたの。そうしたら特殊なクエストがトレントの村で発生したのよ」
「特殊なクエスト?」
「そう。森にトレントを襲うモンスターが大量発生したからそのモンスターを全て倒してトレントを守れというクエストなんだけど、あまりにもそのモンスターの数が多すぎて私とノエルだけだとモンスターを全て倒してトレントを守りきるというのが出来ないのよ」
「それで最初にノエルさんが言ったように強い人を探していると?」
「その通りよ。一緒にクエストをやってくれそうなプレイヤーを探していて見つけたのがあなただったの。攻撃したのは力を確かめるためよ。実力がちゃんとあるプレイヤーかどうかを確認するためにね」
「なるほど。それで僕はどうだったの?」
「ノエルを倒したんだからもちろん合格よ。それでお願いなんだけど、どうか私たちに協力してください!」
「私からもお願い!お姉ちゃんの足を三本までなら潰してもいいから!」
二人の少女が僕に頭を下げる。
「モンスターとたくさん戦えるんでしょ?いいよ。協力しても」
新しく獲得した種族専用スキルの検証をするのには最高の機会だ。この誘いは受けるしかないだろう。
「本当に!感謝するわ!」
「鬼のお姉ちゃんありがとーー!」
ノエルさんが勢いよく僕に抱きついてこようとしたため、それを避けるとノエルさんは地面にダイブした。
「さっき私の足を犠牲にしようとした罰ね」
「ちゃんと聞いていたんだね、お姉ちゃん」
「そうだ。自己紹介がまだだったわね。私はルア。ルアって呼んでね。そこに転がっているノエルの姉よ。よろしくね」
「ここで転がっているのがノエルだよ!ノエルって呼んでーー!ルアお姉ちゃんの妹だよ!よろしく!」
ルアとノエルは姉妹でルアの方が姉でノエルの方が妹か。
身長はルアの方が高くてノエルは僕より僅かに小さいくらいかな。
髪は二人ともショートカットでルアの髪の色が赤でノエルは青。
ルアは妹に振り回されるちゃんとした姉でノエルは天真爛漫で常に姉を困らせてるような妹って感じだね。
「僕はセツノ。自由に呼んでくれて構わないよ。種族は鬼の破鬼で暗殺と短刀と闘気を使った近接戦闘をするよ。よろしくね」
僕が自己紹介をした途端、ルアが驚いたような表情をした。ノエルの反応は未だに転がったままでわからなかった。
「セツノってもしかして昨日ダンジョンを攻略して更に真ボスを討伐したとかで現在公式掲示板を考察で騒がしているセツノ!?」
「そんなことになってるの?まぁ僕はそのセツノだよ!」
「そうなの!?セツノお姉ちゃんは凄い人だったんだね!」
「わっ!」
いつの間にか起き上がっていたノエルが後ろから僕の左腕に腕を絡ませて体を密着させて来た。
「ノ、ノエル?!あ、当たってるよ」
ノエルのグレープフルーツくらいの二つの柔らかいものが僕の左腕に当たっている。
「あー、胸のこと?女の子同士だから大丈夫だよ!」
「…………」
あ、これはまずいやつだ!その瞬間確信した。なかなか言い出せる時がなくて聞けなかったけど、何でノエルに鬼のお姉ちゃんと呼ばれているのかずっと気になっていた。そして今理由がわかった。ずっと女の子だと思われていた!そういえば僕の容姿は自分でも女の子に見えるくらい女の子だったね。これ、どうしよう。
「あー、ノエル、あのね、」
「どうしたの?セツノお姉ちゃん?」
「言うタイミングが無くて言ってなかったけど、僕、男だよ」
「「えっ!?」」
ルアとノエルが同時に声をあげ、ノエルが凍り付いて動かなくなった。
「セ、セツノお姉ちゃんが男?」
「う、うん。そうだよ」
「ま、待って!じゃあ、じゃじゃ、じゃあさ、わ、私がかかと落としをした時さ、も、もも、もしかして……見えた?」
ノエルが顔を真っ赤にして聞いてくる。気まずい空気が流れる。
ノエルの今の下半身の装備はスカートのようになっている。そこからわかるノエルが聞いていること、それは……
「………………」
「そ、その反応!見えてたんでしょ!」
「………………はい」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ノエルが僕の耳元で叫んだ。鼓膜が破れそうだ。
「ノエル!落ち着いて!」
「……そうだね。お姉ちゃん」
ルアがノエルを落ち着かせた。さすが姉だと僕が感心した時、
「ノエルが勝手に飛び出していかなかったらこうはならなかったんだからノエルの自業自得よ」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「とどめを刺した!?」
ルアの言葉のナイフが羞恥心に悶えるノエルを切り裂いた。
セツノは桜お姉ちゃんにべったりだったから、そういう耐性を持っていない。
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