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(WEB版)凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!  作者: yuki
第四章 : 絆されないはずだったのに!
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温泉へ行こう! その3

 

「で、どうすんだこれ?」

「え? 普通に一緒に入りたいんですけど……ダメなんですか?」

「いや、ダメだろ」


 まさかのタオル厳禁に、途方にくれる俺……と、なんでダメなの? と、きょとんとする二菜。

 おい、ちらちらとこっちを見てくるな、答えなんてわかってんだろ。


「二菜だけで入ってこいよ、楽しみにしてたんだろ?」

「ええー……でも、それだと先輩が……」

「いや、俺は外でマッサージチェアでも座って待ってるからさ」


 最近、物凄い肩凝ってんだよね。

 とくにこの春あたりから、肩が重くて重くて……ははっ、ストレスかな?

 マッサージチェアを使うなんてなかなか出来ないし、ちょうどいい機会だ。

 別に、誰かさんのせいで疲れてるとかないぞ? ほんとだぞ??


 と、思っていたのだが。


「だ、ダメですダメです! 先輩と混浴、すっごい楽しみにしてたんですよ私!?」

「とは言ってもお前、流石にこれはダメだって」

「ま、まぁ、たしかにちょっと、恥ずかしいですけど……先輩ですし……」


 ぽっと頬を桜色に染めた二菜が、視線をうろうろと彷徨わせながら、ちらちらとこちらを見上げる姿がなんていうかその。

 ああもう、ほんと可愛いなぁこいつ!

 その上目遣いとかお前、わかっててやってんだろ! お前……そうやって見上げられるの、俺が好きな仕草だって、わかっててやってんだろ!


 あざとい! さすが天音二菜あざとい!!


「あ! そうです、背中あわせ! 背中あわせで入ればいいんですよ!」


 いい事考えました! と言わんばかりに瞳を輝かせてこちらを見上げる連続コンボ!

 ……あまりのあざとさに頭がクラクラしているところに、さらにあざとさを積み重ねるのはやめてもらえません? マジで、マジで。


 というか、背中あわせでも結局は二人とも裸なのには変わらないんだけど……。



「これなら、私は恥ずかしくないと思うんです……うん、恥ずかしくない! よし! 入りましょう先輩!!」

「えー……お前がいいって言うならいいけどさぁ……先に俺が入って、お前が後から入る、なら大丈夫か……?」

「うーん……私としては、先に入りたいんですけど」

「それだとお前がモロに目に入るだろ、ダメだダメだ」

「えーっ、なんでですかー?」


 なんでですかも何も、どう考えてもダメだろ……。


「先輩はちょっとお固すぎると思うんです! もっと臨機応変に行きましょうよぉ!」

「俺はなんでそこまで必死に一緒に入りたがるのかがわからんよ」

「えー……先輩がついついムラっときて既成事実的な?」

「おしおきデコピン!」

「あいたー!? なんか最近、ほんと酷くないですか先輩!?」

「酷くない! いいか、俺が入ったらちょっと待てよ!」

「ぶー……はぁい……」


 ほんと、ちょっと甘い顔見せるとすぐ調子に乗るんだからなぁ、こいつは。


 * * *



 脱衣場で浴衣を脱ぎ入ったそこは、なるほど家族風呂、といった感じの空間だった。

 ただ、風景が物凄い絶景で……これは凄い!!

 秋も深まり、赤く色づいた山を見ながらの温泉、これはとてもいいものだ。


「はあーっ……めっちゃ気持ちいい……!」


 今日一日でかなり体の疲れが取れた気がする。

 やっぱり温泉はいい……これから帰らないといけないのかと思うと、憂鬱になってくる。

 あー、一泊くらいしたいなぁ、一人なら一泊して帰るのになぁ。

 流石に二菜を連れて一泊はちょっと……なぁ?


 ……先に二菜を一人で帰らせるか?

 いやいや、それはもっとダメだろ。

 うーん、さすがに諦めるか……次は絶対一人で来よう、そうしよう。


 そんな風に考えていると、背後でからから、と引き戸が開いた音がし……。

 続いて、ぺたぺた、と足音が聞こえてきた。



 ……あ、ヤバイ、めっちゃ緊張してきた。

 すぐ後ろに、何も着ていない二菜がいる、と思っただけで落ち着かない気分になるんだから、まだまだ修行が足りない。

 そうだ、こんな時は素数……では心もとない、やはり般若心経だ、般若心経に限る。


 観自在菩薩・行深般若波羅蜜多時……


 うむ、やはり般若心経はいい、すーっと心が落ち着いていくのを感じる。

 世の男子諸君も、般若心経を唱えるといいよ、マジで。


「ふぅ……先輩、お待たせしました」

「……なんでお前、俺の背中にくっついてんの?」

「くふふー! 背中合わせに入る、とはいいましたが、背中をくっつけないとは言ってませんしー♡」


 こいつ……!

 最初からこのつもりだったな!? おのれ二菜め!

 俺が悟りを開いていなければ危ない所だった!



「はー……気持ちいいですねぇ先輩……」

「そうだなぁ……」

「足伸ばしてお風呂に入れるのがいいところですよね」

「わかるわかる、やっぱ部屋の風呂だとなかなかなー」


 そうだったそうだった、元々は足を伸ばしてのんびり風呂に入りたくて、温泉に行きたかったんだ。


「もうちょっと、お風呂が広いといいんですけどねぇ」

「間取り的にも仕方ないだろそれは……もっと広い部屋でないと」

「1LDKですからねー」

「高校生の一人暮らしには広すぎる部屋なんだけどな」

「ですよねー」


 LDKがついてる部屋なんて、下手したら大学生でもなかなか住めないんじゃないだろうか。

 だいたいワンルームだよね、ワンルーム。

 そしてIHつき! といいつつ置いてあるのは電熱コンロなやつ。

 お湯もわかねーよ! っていう代物、いいよね……!


「先輩先輩、次借りる部屋は広いお風呂付で探しましょうね!」

「うんうん……うん?」

「くふふー! 一緒に不動産屋さんめぐりするの、楽しみですねー!」

「ちょっと待て、なんでお前と一緒に生活する前提なの?」

「え? しないんですか?」

「脳内で慎重な検討を重ねました結果、大変恐縮ですが、今回はお取引きを見送らせていただくこととなりました」

「もー! なんでですかー!!」


 まぁ、将来的に一緒に生活……はすることになりそうな気はするんだけどなぁ……今は早い、あまりにも早すぎる。

 せめて、二人とも高校を卒業するくらいまでは、我慢してもらいたいものである。


「おい二菜」

「はい、なんですか?」

「もたれかかりすぎ、重い」

「くふふ! それも愛の重さってやつなんですよ!」

「お前の愛が重すぎて潰れそうです」

「全校生徒の前で公開告白した先輩に言われたくないです」

「事あるごとにそれを持ち出すのやめてください……死んでしまいます……」


 恥ずかしい……マジで恥ずかしい!

 あれから、音琴を中心にあのネタで弄られるんで本当に勘弁して欲しい……。


「先輩、好きです、大好きです!」

「俺も好きだぞ」

「もー! 軽い! あまりにも軽いです愛の重みを感じません!」

「どうしろと……」

「こう、後ろから抱きしめるくらいしてもいいと思うんです!」

「遠慮させていただきます」

「じゃあ、私から……」

「絶対すんなよ!?」


 お前、今裸なんだからな!?


「くふふー、照れちゃって……あれ?」

「ん、どした?」

「なんか……暗くなってきた気が……」

「ほんとだな、さっきまであんな明るかったのに……」


 まさか雨とか……降らないだろうな。

 まさかね?



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