表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(WEB版)凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!  作者: yuki
第四章 : 絆されないはずだったのに!
97/140

温泉へ行こう! その2

「せーんぱーい! どーうでーすかー!」

「さいこーにきもちいいなー!!」

「でーすよねー!」


 はー! 自然の中の露天風呂、最高!

 心地よい河のせせらぎ、程よい気候、そして周りには誰もいない開放感!

 さすが秘湯!素晴らしい!!


「こっちは一人だけど、そっちはどうなんだー?」

「こっちも、私一人でーす!」

「独り占めしてるみたいで気持ちいいなー!」

「くふふー! せんぱーい、こっち来てもいいんでーすよー?」

「いえ、マジで遠慮しておきます」

「もー! なんでそこで素に帰るんですかー!!」


 バカ言うな、そっち女風呂じゃねーか!

 誰か入ってきたらどうすんだよ! 

 ……いやまぁ、その前に入らないけどさぁ!



「先輩先輩、こっち、衝立の方に来てくださいよ、お話しましょ!」

「おう、ちょい待ってろ……っと」


 ざぶざぶとお湯をかき分け、男湯と女湯を隔てる衝立へと向かう。

 この向こうに、一糸纏わぬ二菜がいるのかと思うと、少し不思議な気分だ。


「よく、こういう衝立に覗き穴がある、って話あるじゃないですか」

「実際にあったら大問題だよな、あれ」

「まあ温泉エピソードとしては、覗きってやっぱりお約束だと思うんですよ、私は」


 まぁ、たしかにお約束だよな。

 なんなら衝立が倒れて、強制的に混浴になるまである。


「間違えて女湯に入っちゃったりな」

「ありますあります! 先輩もうっかり女湯に来てもいいんですよ?」

「いかねーよ、てかすでにもううっかりでもねーわ」


 どうしてそこまでして、女湯に行かせようとするのか。

 俺をどこのラブコメ主人公に仕立て上げるつもりだお前は……。


「くふふ! 先輩はー、今の私に興味ないんですかー?」

「はぁ? 何言って……」

「今、私、タオルも何も巻いてないんですよー?」


 二菜が、タオルも何も巻いていない。

 この薄い壁の向こうで。


 ……うん。


「興味……なんてないし?」

「先輩知ってますか? 実は私、最近また成長しちゃいまして……」

「ははっ、そうか、ちょっとは背が伸びて七菜可さんに近づいたか?」

「ええ……胸が」

「胸が」

「5本、指を倒せば数えられたのに、今では6本に……」


 6本!?

 待て待て、ええと6本って……A、B……ええ?


「くふふ! 想像しちゃいましたか先輩!」

「そ、想像してねーよ変なこと言うな、この痴女後輩め!」

「えー、思わず想像しちゃった先輩に、言われたくないなー!」

「してませんよ? マジしてませんよ?」

「くふふー! 先輩のえっちー♡」


 くっそ、調子に乗りやがって二菜の奴め!

 どうも最近、あいつに上手くペースを握られてる気がするんだよな。

 ここは一つ、反撃してやりたい!



「あーそうだな、想像しちゃったなー!」

「へっ」

「あとで混浴の美白の湯だったか? に行くんだろ? その時じっくり見せてもらわないとな!」

「え、えーとえーと……え、えへへ、そ、そんな大したものじゃないですよ?」

「二菜は肌も綺麗だし、楽しみだなぁ……あっ、なんなら今こっち来るか? 誰もいないし」

「ふええ!? ななな何言ってるんですか先輩!?」


 おお、焦ってる焦ってる。

 あいつ、結構挑発的なこと言うくせに、自分が言われるとダメなんだよな。

 くくく、あたふたしてる二菜が眼に浮かぶようだ。

 というか、自分が言われて恥ずかしいなら言わなきゃいいのに。


「ばーか、嘘だよ、本気にすんな」

「えっ!? あっ……も、もー! そういうところですよ、先輩っ!」

「ははっ、先に言い出したのお前だろ?」

「むーっ! むーーっ!!」


 衝立の向こうから、ぱしゃぱしゃと水面を叩く音が聞こえてくる。

 どうやらからかわれたことでご立腹のようだ、うんうん、愛い奴め。


「ああそうだ、二菜は年末年始、もう予定決まってんのか?」

「へっ、年末年始ですか? いえ、まだきっちりは決まってないですね……お父さん達は一時帰宅するつもりみたいですが」

「まーそうだよなぁ、あと2ヶ月近くあるし」

「先輩はもう決まってるんですか?」

「うーん、うちもどうなんだろうなぁ……」


 例年通りであれば。

 父さんの実家の藤代家へと帰り、お隣の、母さんの実家の蓮見家と合同でお正月を祝う、の、だが……。


「出来れば帰らないで、二菜とゆっくりしてたいなぁ……」


 なんか、二菜を連れて帰ってこいとか言いそうだし。


「えっ! え……えへへ……私も、先輩とゆっくりお正月してたいです……姫初めとか♡」

「それはいらない」

「もー! なんでですかー!」


 健全なお付き合いじゃなくなるからだよ!

 泣くぞ、お前のお父さん!!


「あ、そろそろ他の湯にも行こうぜ、ずっとここにいたらもったいないだろ」

「ですねー! 最後にもう一回、ここに入りましょうね!」

「だなー」


 その後も、当たり障りのない会話を二菜としながら、温泉を楽しんでいく。

 どの湯も素晴らしく、二人のテンションは際限なく上がり続け……。

 ついに、その場所へと俺たちはたどり着いた。

 そう、「美白の湯」である。



「ついに来ましたね先輩! ここが美白の湯ですっ!」



 ばばーん! と看板を背後に温泉を紹介する二菜。

 お前はこの温泉のなんなんだ、持ち主か?


「くふふ! 混浴ですよ混浴! しかも予約制の貸切! もはやなんの遠慮もなく先輩と入れるんです!!」

「なぁ……ほんとにいいのかお前? 混浴って……」

「まぁまぁ! 混浴って言ってもタオルもありますし! 水着と変わりませんって!」

「いや、水着とは全然違うと思うんだけど」

「固いこと言いっこなしですよぉ先輩! ほら、ここの効能見てくださいよ! 美白ですよ美白!!」


 嬉しそうに美白、美白、と繰り返すが、正直……なぁ?


「お前、それ以上綺麗になってどうすんの?」

「えっ……な、なんですか急に!?」

「いや、今でも充分、肌綺麗だし」

「あ、ありがとうございます……?」

「あんまり綺麗になられると、また擦り寄る男が出そうで嫌なんだけど」

「う……ううーーーっ!!」


 顔を真っ赤にして俯く二菜の頭を撫でてやると、胸元にすり寄ってきた。

 抱きしめろ、ということらしい……甘えたな奴だ。


「ほら、夕方までしかいられないんだし、もう入っちまおうぜ? ええとお湯の効能……えっ!?」

「ど、どうしたんですか先輩?」

「お前、水着とか持ってきてるか?」

「持ってるわけないじゃないですか、なんでです?」


 つまり、二菜も知らなかったのか。

 もう一度、お湯の効能について記載された看板を隅から隅まで見ていき……最後の一文に目を止める。

 まさか……まさかこの美白の湯は……!


「ここのお湯、タオルつけるの禁止、水着は可、らしい」

「えっ」


 つまり……どうすんのこれ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!
『凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!』
GA文庫様より、4月刊行予定です。amazonにて予約も開始しております!
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ