あれから……。
「そろそろ出ないと電車、間に合わなくないですか?」
「んー……っと、もうそんな時間か……はぁ、通勤面倒くせぇ」
「もうっ、そんな事言っても仕方ないじゃないですか……頑張って働いて下さいよ、先輩!」
あの学園祭から、早くももう6年が経った。
俺たち二人は、二菜が高校を卒業し、俺の通う大学へ入学したのを機に、二人での生活を始めた。
そして俺は社会人として2年目、二菜は大学を卒業し……。
「……なぁ、二菜」
「はい?」
「もう先輩じゃないだ……ろっ!」
「あいたーっ!? またデコピンっ!? でも……くふふ! そうでした……ついついクセで……」
「いつになったら抜けんだよそのクセ」
「だって6年も呼んでたんですから、仕方ないじゃないですか……一雪さん!」
おでこを押さえる二菜の薬指に、きらりと指輪が光った。
あれから6年。
その道のりは、決して順風満帆なものではなかった。
主に二菜のせいで……主に二菜のせいで!
何せこいつはなぜか物凄くモテるのだ……俺がすぐそばにいるのに! なぜか!
俺と学年が違うので、どうしても1年、目を離すことになるのが不安で仕方がなかった。
ほっとくとこいつ、とんでもない事になってそうなんだよ……!
「はー……先輩を一人で会社に行かせるの、心配です……」
「なんでだよ」
「だって、また一雪さんに色目使う女がいるかと思うと……ぐぬぬ……!!」
「その言葉、そっくりそのままお前に返してやるよ……この1年、どんだけ心配だったか!」
「くふふ! 先輩に愛されてるって実感します!」
「ほんっとにお前……そういうところだからな!?」
そんな俺たちだが、来月、ついに結婚式を挙げることとなった。
高校2年生の春の俺よー、お前の嫁は、詐欺を疑ってた女だぞー……。
天音家へ娘をくれと挨拶に行った時、天音父に号泣されたことは今でも記憶に新しい。
殴られるくらいは覚悟していたんだが……まさか泣き崩れるとは……。
母さんと七菜可さんは、「早く孫の顔が見たい」と会うたびに言ってくる。
ウザい。
まだ式も挙げてないし、就職して1年目なのに気が早すぎると思いませんか!?
「それにしても……あっという間でしたね……」
「そうだなぁ……6年たっても、結局お前の身長は変わらなかったけど」
「も、もー! それはもういいじゃないですかー!!」
「自信満々に、あと5センチくらい余裕って言ってたくせに!」
「むーっ!」
まぁ、今となってはそんな二菜も可愛いと思ってるんでどうでもいいんだけどな。
身長で弄ると、涙目になって可愛いからこれからも言い続けようとは思う。
「さて……そろそろいくか! 新婚旅行のための休み、絶対確保したいからな!」
「頑張ってください一雪さん! 私、めちゃくちゃ楽しみにしてるんで!!」
「おう! それじゃあ、行って来ます!」
「あ、待って待って! 行って来ますのちゅーしてないです!」
「それ……いるの?」
「もー! なんでですかー! 新婚さんの朝の儀式ですよ!?」
「はいはい」
これももはや毎朝のことだ。
というか、二菜はこうやって何かあるたびにちゅーをしよう、ちゅーをしたいと迫ってくる。
もしかするとただの変態なのではないだろうか? いや、辞めておこう……この考えは危険だ。
「一雪さん」
「なんだよ」
「あの日、図書館に行ってよかった……勇気を出して、告白してよかったです」
「そっか」
「はい! 一雪さんは今、どうですか? 私と一緒にいて、楽しいですか?」
ほんと今更だな。
そんなこと聞くか普通?
「楽しくなかったら結婚なんてしようと思わないだろ? それに……」
「それに?」
「昔も言っただろ、二菜が好きだ、一生離さないって」
「……っ! くふふ! はいっ、そうですね! 私も好きです、一雪さん! 幸せになりましょうね!」
はっきり言って、俺と二菜の最初の出会いはよかったとは思えない。
俺も二菜に対して、最低の態度をとっていたと思う。
それでも二菜はずっと側にいてくれたし、そんな二菜を俺は、幸せにしたいと思った。
俺と二菜の二人の関係はこれからもまだまだ続くし、きっとこれから、家族も出来るだろう。
そうなったとき、新しい家族に、俺たちは幸せな家族なんだよ、と胸をはれるように。
これからも、二菜を大切にしていきたい。
「一雪さん、大好きです! これからも末永く、よろしくお願いしますね!」
本作をここまで読んでいただいて、本当にありがとうございました。
二菜ちゃんと一雪くんのお話は、ここで終了となります。
2ヶ月の間、お付き合いいただきまして本当にありがとうございました!
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毎回酷い量で本当に申し訳ありません……。
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隣の席の蓮見さんと幼馴染の心春ちゃん、二人の真意がわかりません!
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