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(WEB版)凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!  作者: yuki
第三章 : 凄くモテる後輩と俺
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私、先輩のこと……!

「――――2年、藤代一雪くん、本年度ミスターコンテストグランプリ、おめでとう!」


 おお……何度聞いても自分の名前だ……。

グランプリを目指して出場したけど、まさか本当に取れるとは。

観客席の方を見ると、五百里・音琴の二人と目が合った。

お前らのおかげだよ……さんきゅーな……!


「一雪ー! あんたのおごりで食べ放題じゃない焼肉だからねー!!」


……聞こえてるぞ音琴……デカい声出しやがって。

まったく、一昨日、人の金で散々食ったくせにまだ食うつもりかよ!

まぁいいさ! ああ、お前にも五百里にも、食わせてやるよ!


そして、続けて表彰されるミスコングランプリは……。


「――――1年、天音二菜さん、本年度ミスコンテストグランプリ、おめでとう!」


『うおおおおおおおおお!!!!』

『天音さんおめでとうーーー!!』

『好きだーー!! 結婚してくれーーー!!』


 おい、俺のときに全然なかった歓声がすげー聞こえるんだけど。

どうなってるんだお前ら……俺に投票してくれた人たちはどこ行ったの!?


「ミスター・ミス、おめでとうございます! それではまず、皆さん興味のある天音さんからインタビューを……」

「おい」

「いやだって、まずは女の子の話聞きたいですよねー!?」


『『『聞きたいですー!!』』』


こ、こいつら……!

いやまぁ、俺は別に話したいことなんてないからいいんだけどさ!


「それでは改めて、天音さんおめでとうございます!」

「へへへ、ありがとうございます! でもこれから忙しくなりそうで辛いです、帰ってもいいですか?」

「いやいやいや、帰らないでくださいよ! みんな聞きたいこといっぱいありますって!」

「いやー、もう話すこと、さっき全部話しましたよー?」

「さっきの話って好きな男の子がいるんですよーしか聞いてませんよ!? この子の頭の中、ピンク色すぎるんですけど!」

「えへへ、照れるぜ!」


司会のお姉さんがこいつ何言ってんだって顔してるけどわかる、わかるよ。

俺もこいつが何考えてるのか、今でもたまによくわからないし。


「えー、見事ミスを獲得されましたが、今のお気持ちは?」

「散々好きな人がいるって言ってるのに、みんな私に投票してもよかったんですかー?」

「ですよねー! やっぱりそう思いますよねー! 私もそう思います」


俺もそう思う。

つーか司会のお姉さんよ、笑顔が消えてるぞ笑顔が!

真顔で突っ込みいれんな怖いよ!


「えー、それでは、藤代さんにもお話を聞いてみましょう! 今のお気持ちは!」

「あ、そうっすね、やっぱ嬉しいです、ははは」

「はい、ありがとうございました!」

「終わりかよ! もっとなんか聞けよ!?」

「え、私と付き合ってくれるんですか?」

「結局それかよ!」


もうやだなんなのこの人……。 

だめだ、この人のペースに付き合ってたら何も出来ない!

無理矢理にでも自分のペースに持ち込まないと……!


「すいません、ちょっと、一言言いたい事があるんですけど、いいですか?」

「はぁ、いいですよ?」


そういいながら、司会のお姉さんが俺を手招きして……なんだ?


「(……このステージ、映像記録として残りますからね?)」

「!! ま、マジですか?」

「ふふっ、頑張ってくださいね?」


ぐっ、っとサムズアップし、少し距離を取るお姉さんは、もしかして俺が何をしようとしているのか、知っているのだろうか?

……いや、知っていたとして、だからどうだっていうんだ、今から俺がやることは変わらない。

よし!



「まず最初に……俺に投票してくれた人たちみんな、ありがとうございます! それと、この場を私的なことに使うことを、許してください!」


 五百里と音琴が、真剣な目で俺を見ている。

お前ら二人で、俺のことヘタレへたれって散々言ってくれたけど……もうヘタレなんていわせないからな!


「天音……いや、二菜!」

「へっ!? わ、私ですか!?」

「そう、お前にどうしても、言っておきたい事があるんだ」

「えぇ……な、なんでしょうか……?」


それまで自分には関係ないだろう、と一歩引いていた二菜が、驚いた声を上げる。

まさか、自分がここで話題に上がるとは思っていなかったのだろう、完全に油断した顔をしてたからな。

だからって、目線をうろうろさせてキョドるのはどうなんだ、何をビビってんだよ、お前。

あまりに挙動不審な二菜の態度に、思わず笑ってしまう。


「いや、怒るとか、そういう変な事じゃないから」

「は、はぁ……じゃあ、なんでしょう?」


まぁでも、そりゃそうか。

こんな時、こんな所で声かけられたら、なんだってなるよな?

俺だってなる。



「二菜、俺はお前のこと……一人の女の子として、大事だと思ってる」

「えっ」

「最初は、なんだこいつって思ってた、やたらと馴れ馴れしい奴だなって……正直、何が目的だってずっと思ってた」

「……………」


たった半年ほど前の話だ。

あれだけ疑ってたのに、今やこんな舞台でこんなことしてるんだから、信じられないよ!


「あれから半年、ずっと一緒にいて、色んな事して……気がついたら、二菜が隣にいないと、落ち着かなくなった」


何時頃からだろう?

二菜のいない時間が、なんとなく物足りなくなったのは。


「お前の事をもっと知りたいと思ったし、気がついたら……大事にしたい、って思いだしてた」


二菜は、じっと俺の話を聞いていた。

何も言わないが、今何を考えているんだろう?

彼女の澄んだ青い目からは、今はまだ、困惑以外の感情は見えてこない。


「夏祭りのあの時……はっきりとわかったんだ、お前を、誰にも渡したくないって」


往面に連れて行かれそうになった二菜を見た時。

あの時にはっきりと悟った。

俺は、二菜の事を……。



「二菜、俺はお前が好きだ!」


「二菜、好きだ、一人の女の子として、好きだ! 俺とずっと一緒にいてくれ!」



ステージの下がざわついているのが遠くに聞こえる。

はは、心臓がバクバク言って、足が震えてるよ……。

二菜は俺の告白を聞いてから俯いてしまい、こちらからは顔が見えない。


今、俺が言える事は言った。

後は二菜がどう答えるかだけ……。



「先輩……私……」

「ああ」

「私、先輩の事……!」



弟みたいだな・・・・・・って、ずっと思ってたんです!!」



「えっ」

「「「えっ」」」


今、俺と観客のみなさんの心が、間違いなくひとつになった。

えっ、弟……えっ、俺、えぇ……?


「えっ、ど、どういう……へ?」


あれ、俺もしかして今……二菜にフラれた?

え、なんで? だ、だって昨日もあんなに……!

あー、ダメだ、考えがまとまらない、頭がグラグラして地面が揺れる……。



「くっ……ふふふふ……っ!」

「二菜……?」

「くふふふふ! 先輩! お祭りのときの私の気持ち、わかりましたか?」

「えっ……あっ!」


こいつ、もしかして!


「くふふ! 私、絶対一度は仕返ししてやる、って思ってたんです!」

「二菜……お前ぇ……!」


くそっ、やられた!

こいつ、いつからこれ考えてたんだ?

絶対今、とっさに思いついて言ったことじゃないだろ……。


「お前……ほんとお前、そういうところだぞ……! 心臓止まるかと思ったわ!」

「くふふ! 先輩! 先ほどのお返事ですけど……」


まるで弾丸のように、俺の胸元に飛び込んできた二菜を受け止めてやる。

後ろに押し倒されなかった俺を、褒めてくれてもいいと思う……。


「私も先輩の事好きです、大好きです! 愛してます! 結婚してください!!」

「お前は……こんな状況でも、ほんとブレないね……」

「はー……幸せです……」


抱きしめながら二菜の髪をなでてやると、嬉しそうにこちらを見上げてくる。

大好きな二菜のその笑顔を見ていると、俺も幸せな気持ちになってきて。

そのまま、二人の顔が近づき……。



「あのー、お二人さん」

「「!?」」

「二人の世界作るのはいいんですけど、やるなら人のいないところでやってもらえますか?」

「えっ……あっ!」


そ、そうだった!

ここ、まだステージの上じゃねーか!

しかも、大勢の人の前で……。


その瞬間、ばっ!と二人の距離が離れる。

俺も二菜も、見なくても分かる、顔が真っ赤だ。

あー、やらかした……いくら盛り上がったからって!

というか、司会の人に指摘されるまで気付かない俺も俺だが、ここまで放置するのもどうなんだ……。


「それと、司会の私から一言、みなさんを代弁して言いたい事があります」

「な、なんでしょうか……?」



『お前ら、まだ付き合ってなかったのかよ!!』

「えっ」


その瞬間、わぁっ! と観客席から歓声が上がる。

「このヘタレー!」「さっさと別れろ!」「今まで付き合ってなかったのかよ!?」

って待て、今やっと付き合いだしたのに別れろってなんだよ!?


「うるせー! ヘタレで悪かったな!」


お呪いしてやるー! は言いたい気分は分かる、俺もよく思った。

それは許そう。


ちらりと隣を見ると、顔を真っ赤にしながらも、幸せそうな二菜と目が合った。

どちらからともなくお互いの手が触れ合い、しっかりとつながれる。



「先輩、好きです」

「俺も好きだよ」

「くふふ! やっと、好きって言ってもらえました」


相変わらずステージの下からはお祝い、お呪い、野次がたくさん飛んでくる。

それでも、嬉しそうに微笑む二菜をみているだけで、満たされた気持ちになり……。



「ちなみにこの公開告白、学園のライブラリに一生残りますからね」

「け、消してください……!」


その一言で、真っ青になったのだった……。



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