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(WEB版)凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!  作者: yuki
第三章 : 凄くモテる後輩と俺
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私の! 先輩なんですけど?

「……お待たせいたしました、ケーキセットになります」

「…………」


じっと見られている……。

し、視線が突き刺さる! なんだ、何か俺に変なところでもあるのか!?


「ご、ごゆっくり……って、さっきから人をじっと見て、何だよ天音……!」

「くふふ……いえ、やっぱり働いてる先輩かっこいいなぁって……」

「……どこが?」


 やっていることは、いつもと変わらず珈琲を運んでいるだけなのに、何がいいのだろう?

時々、二菜の目はなんか常人とは違う、別の世界が映っている気がして仕方がない。

一体どんな世界が見えているんだろう……なんかちょっと怖い。


「いつもの仕事中と違う髪形も素敵です……!」

「さよか」

「ただ……私だけが知ってる素敵先輩がみんなの目に触れたのは、ちょっと寂しいですね」

「髪型がちょっと変わったくらいで、大げさな奴だな」


バイト中、ワックスで固めてあげてる前髪を、今日は下ろしているだけでそんなに変わりはないはずなんだけど……。

強いて言うなら、前髪をさっぱりさせたおかげで、視界がいつもよりクリアってくらいだ。


「ちょっとどころじゃないですよー! ……さっきから、他の女の子もチラチラ見てますし!」

「……まぁ、そう言われると、悪い気はしないな」

「もー! なんでですか! 私という彼女がいながら浮気ですか!」

「彼女じゃないし」


正直、似合ってるとかよくわからなくて不安だったけど、二菜に褒められると悪い気はしないな。

音琴に言われるままにしてきたけど、二菜に言われると変に自信がわいてくるのが不思議である。



「むーっ! むーっ!」

「ほらむくれてんな、ケーキを食えケーキを」

「食べますよ! もうっ!」


ほっぺたを膨らませながら食べる様子は、まさに小動物的だ。

リスとかハムスターとかアレ系の……。

「ごゆっくり」と二菜の頭をなでてやり、微笑ましい気持ちになりながらも、俺は仕事に戻ったのだった。


 * * *



はー! 撫でられた! 先輩に頭撫でられた!

いつもちょっとキツい目が、ふにゃっと柔らかくなったの見ましたか!?

幸せ! 幸せすぎて死にそう! いやもう死ぬ!!!!


「ね、ねぇ、あの人が天音さんの言ってた先輩だよね?」

「? そうですよ?」

「なんか、聞いてた感じの人と、全然違うんだけど!」

「ねー! ていうか、目が……ちょっと怖そうな目元が……!」


 ふふーん、そうでしょうそうでしょう!

誰が言ったのか、先輩を地味だとかぱっとしないみたいによく言われてるのをよく聞いたけど、私の。


私の!


先輩は実は凄くかっこいいんです!!

いや、私は別に先輩の見た目が好きになったわけじゃないですけど。

バイト中に髪を上げて目元を出してる先輩超かっこいい! って前々から思ってましたけど!!

でも、こうやって私の! 先輩が褒められるのは凄く嬉しい!


昨日は急に音琴先輩と用事があるからーって帰っちゃった時はどうしようかと思いましたけど……。

しかもその上! 初めて今日は晩御飯はいいって言われた時は、本当にどうしようかと思ったけど!

浮気ですか! 私がいるのに! 私にす……す……好きって……好きって言ったのに!


いやまぁ、寝言だったんですけどね。

寝言で好きって言ったのに音琴先輩と……ふふっ。


「でも、天音さんの彼氏じゃないって……」

「ちょっとキツそうな見た目だけど、あれで優しくされたらコロっといきそう……」

「わかるわかる! さっき珈琲持ってきてくれたときの笑顔でドキっとしたよー」


!?


「天音さんがまだ彼女じゃないんだったら私にもチャンスが……」

「ない、ない、ありません」

「天音さん!? なんか顔怖いよ!?」


おっと危ない危ない。

でも、今更先輩にアプローチかけようなんて私が許しません!


「でもいいなー、あんな先輩に天音さん、いっつも優しくしてもらってて!」

「最近、お昼も放課後も迎えに来てもらってるもんね! 大事にされてるね!」

「くふふー……やっぱりそう見えますか! 見えちゃいますか!?」

「むしろこれで付き合ってない、って言われても、え、なんで? ってなるよねー」


ああ、いけないいけない、顔がにやけちゃってる。

私のイメージが! イメージがいつもにやにやしてる変な子になっちゃう!


「この後、天音さんは学園祭デートなんだよね?」

「えへへへへへへへそうなんですよぉ~」


あ、もうだめだ諦めよう。

今日は一日にやけ二菜ちゃんでいることにします!

ああ、楽しみだなぁ学園祭デート……!


「天音さんの表情がさっきからずっと蕩けてるんですけど……」

「ほんと、どんだけ好きなのって感じだよね……」

「えへへへへもうほんと好きすぎて辛い……」

「や、やばいよ天音さん! 男子に見せられない顔になってる!!」

「え、私、今そんなヤバイ顔してましたか?」


自分で自分がどんな顔をしてたのかわかりませんが、みんなが言うならそうなんでしょう。

あー、好き、ほんと好き、大好き。

いつになったら先輩も素直に好きって言ってくれるのかなぁ。



「そうそう、そういえばミスター・ミスコンの話だけど……大丈夫? 天音さん」

「? 何がですか?」

「ほら、1位になった男女二人は~ってやつ」

「ああ、広告塔になるってやつですよね」


そういえば、先生もそんな事を言っていた気がしますね。

先輩にも綺麗な人はたくさんいますし、私みたいな1年生が1位になる可能性は低いだろうな、と思っていたので適当に聞き流していましたが。


「その先の話なんだけど、その後、結構な確率で付き合うようになるらしいよー?」

「ああ、聞いた聞いた! やっぱり一緒に行動する時間が増えるからなのかなー?」

「へぇ、そんな噂があるんですねぇ」


誰が言い出した話なんでしょうか?

まぁ、私に関係あるとは思えませんが。


「天音さんはミスが獲れる可能性高いから、気にしないとだめじゃないかなー……」

「ね! 今年のミスターは……やっぱりバスケ部の往面先輩かなぁ?」

「2年だと香月先輩もいるけど、あの人もう彼女いるからって絶対出ないもんねー」

「藤代先輩は……出たら人気出そうだけど、ねぇ?」

「参加してないよねーさすがに!」


あ、ちょっと不安になってきました。

これが先輩なら、全力でミスを獲りにいきますが……先輩がミスターコンなんかに興味持つとは思えませんし……。


仮に!


私が1位になっちゃったら、あの変な先輩と一緒に写真とか撮るんですか?

その上、お付き合いするように……?

うわぁ、ない、本当にありません。 ちょっとぞっとしました。

今からでも棄権とかできないかなぁできないでしょうねぇ……。


「あ、あとで先輩に相談しないと……!」


ちらっと先輩を見ると、笑顔で女の子に珈琲を渡す先輩の姿が目に入りました。

あ、女の子が顔赤くしてる……。

もう! もうっ! 先輩の笑顔は、私だけに向けてればいいのにっ!!



私の先輩が褒められて嬉しい反面、私以外にも先輩のいいところが見えるようになって、とても微妙な気分になったのは、私のわがままでしょうか……?




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