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(WEB版)凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!  作者: yuki
第三章 : 凄くモテる後輩と俺
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あの子なら大丈夫よ


「お、おい……本当に切るのか!?」

「切るのよ! ……あ、すいません、気にせずやってください!」


俺の頭部で、ジョキン、とはさみの音が鳴ると、ぱらぱらと髪が落ち……。


「待て待て待て! 今、なんか凄い量の髪の束落ちたぞ!?」

「うるさいわねー、黙ってなさい! ……あ、大丈夫です、さっぱりさせてください!」

「ほんとに!? ほんとに大丈夫なの音琴さん!」

「あーもー! プロに任せておけばいいのよ!!」


 学園祭前日。

クラスの準備を早々に終えた俺は、音琴に髪を切るように、と、美容院へと連れて来られていたの……だが……。


「す、すいません、ちょっと切りすぎではないでしょうか……?」

「あ、こいつの言うこと気にしなくてもいいんで、どんどんやってください!」

「音琴てめぇ……!」


1000円カットで適当に切ってもらっていた髪が、なんだかどんどん凄いことになっていく。

足元に落ちる髪の束を見ていると、本当に不安しかわいてこない。

えっ、人間の髪って、そんなに切ってもいいの? 終わったら髪の毛なくなってるとかない?


「……うん、まぁまぁ、見れるようになったんじゃない?」

「ほんとかよ……」


自分で鏡を見ていても、何がいいのかがよくわからない。

ただ、音琴がまぁまぁと言うなら、まぁまぁいいんだろう。


「五百里には遠く及ばないけどね!」


知ってた。


「いい? 明日は朝、五百里がまずあんたの家行くから」

「おー……何しに来んの……?」

「どうせほっといたら、あんた寝癖つけたままくるでしょ! ダメよそんなの!」

「いや、別に自分で髪くらい整えられ」

「られるなら、今までも出来てるのよ……」


はぁ、と溜息をつかれるが、ぐうの音も出ない。

出来ていれば恐らく、今日こんなところに引っ張ってこられなかったのだろう。


「明日、二菜ちゃんは私が連れて行くから、あんたは五百里と来なさい」

「了解……」


なんか、大事になってきてしまった……。

え、ただの学園祭ですよね? なんで俺、こんな気合入れてるみたいになってんの?

明日学校行ったら、「やだ、藤代くん気合い入りすぎててキモい……」みたいにならないよね!?


「今日はお風呂入ったらさっさと寝るのよ、目の下にクマなんて作ったら許さないからね!」

「わ、わかりました……」


そして音琴が本気すぎて怖い。

やだ、ちょっと目が血走ってる気すらするわ……。



「なんか、今日は色々と時間使わせて悪かったな、音琴」

「別にいいのよ、私も楽しませてもらったし……ご飯もおごってもらったしね!」

「食いすぎなんだよお前!」

「あんたの前なら別に我慢する必要もないからねー……ね、一雪」

「なんだよ?」


いつになく、真剣な声音の音琴に、思わず身構えてしまう。

結構長い付き合いだけど、こんな音琴は初めてだ……。


「あんた、昔私のこと好きだったでしょ」

「ななななにを言ってるのかな!?」


きゅ、急に何を言い出すのかなこの娘さんは!

え、なんなのもしかしてバレてたの? しかも今更言われても困るというか……!


「や、今更だし、だからどうってわけじゃないんだけど」

「おう……」

「前に言ってたじゃない? 自分の好きになった子はみんな~って」

「言ってたなぁ……」


じゃああれ、お前も含めてるんだけどなって俺の副音声も聞こえてたのか?

うわ、情けない……!


「なんていうか、今のあんたのそのヘタれな性格に、私も一枚かんでるんだなぁと思うと……」

「いや、別にお前が気にするようなことじゃないけど」

「気にするわよ、それで友達が今みたいなひねくれた性格になったんだなって見せ付けられるとね」

「……俺はひねくれてない」

「ひねくれてるわよ」


こいつは一体、何を言いたいんだろう?

先ほど自分でも言っていたが、本当に今更な話だ。

俺と五百里と音琴の三人で中学の頃からつるんでいて、音琴は五百里を選んだ。


そのことについて、俺は根に持った覚えもないし、心から二人を祝福している。

……いや、少しはなんでだよって思ったけどさ!

お祝いもとい、お呪いしてやる! って思わなかったとは言わないけどさ!!



「二菜ちゃんは大丈夫よ」

「?」

「見てれば嫌でもわかるわよ、あの子は本気であんたの事、好きよ?」

「そうかなぁ……」

「あの子なら私とか今までの子と違って、ずっとあんたの隣にいてくれるわ、安心しなさい!」

「お前に言われても、なんも安心できねぇ!」

「なによ!」

「なんなのよ!!」


くすくす、とお互いに笑いあう。

少しずつ、明日への不安が消えていく気がした。


「ありがとな、音琴」

「べ、別にあんたのためじゃないんだから! 二菜ちゃんのためなんだからねっ!!」

「なぜそこでツンデレた」

「五百里と楽しm……応援してるから!」

「今楽しみって言おうとしたなお前!?」


くそっ、やっぱこいついいやつだな、ってちょっと思った俺の感動を返せ!


 * * *



 翌日は、朝から戦争だった。

どうして男の準備で、こんなにも時間がかかるのか……。

そう、五百里に問いかけると、「オシャレというのは時間がかかるものだよ」と返された。

こういうことをさらっとできるからこそ、五百里はイケメンなのだろうなぁ……。


さぁ、五百里と音琴に頼りに頼りまくって、新しくなったNEW藤代 一雪のお披露目だ。

俺が伊達じゃないってところを、二菜にも、全校生徒にも見せてやらねば!



「おはよう、宮藤さん」

「あ、おはようございます藤代……くん?」

「はー、今日明日と、大変だけど頑張ろう……うん?」


隣の席を見ると、ぽかんと宮藤さんが口を開けて……

な、何その表情、俺の顔になんかついてますか?

それともあれか、何学園祭で気合いいれちゃってるんですかってあきれてるんですか!?


「だ……」

「だ?」

「誰ですか……?」

「えっ!?」


それ以前の問題だこれ!?


大丈夫かこの学園祭……なんかいきなり、不安になってきたぞ……?




「ちょ、ちょっと先輩!今日出番なかったんですけど!?」

「二菜……実はここからはな……ヒロインは宮藤さんになるんだ……」

「もー!なんでですかー!!」


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凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!
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