表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(WEB版)凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!  作者: yuki
第三章 : 凄くモテる後輩と俺
80/140

駄目なお兄ちゃんは決意する

 二菜顔真っ赤事件から、1週間がたった。

あれからも相変わらず、二菜がすぐ顔を赤くするのは直っておらず、俺は心配する毎日を送っている。

そして……。


「俺、2学期にはいってから、できるだけ二菜と一緒にいるようにしてるんだけどさ」

「うん」

「その割りに、あいつへの告白が減るどころか増えてんのはどういうことだよ五百里!?」

「それはね……顔を真っ赤にした天音さんがとんでもなく可愛い、って噂が広まっているからさ」

「そんな事、俺だけが知ってればよかったのに……!」


そう、耳まで真っ赤に染まった二菜は、可愛いのだ。

その顔はずっと、俺だけが独り占めできる、俺だけの二菜だったのだが……。


「そこらの連中に見せるなんて、勿体無さすぎる」

「一雪、君完全にキャラ変わってるって気付いてるね?」

「そもそもなんであいつは、告白されるたびにそんなことになってんだよ……」


 くしゃりと前髪を握りながら、思わず溜息をついてしまう。

あの後色々と聞いては見たのだが、結局何が原因なのかは頑なに教えてはくれなかった。

原因が分からなければ、こちらも対処のしようがないのがまた、頭の痛いところである。



「なら方法は一つ……周りの連中を、結果で黙らせるしかないわね!」


 そんな時に現れるのはいつだって、音琴 六花という女だ。

またなにやら、面倒くさそうな話を持ってきたんじゃないだろうな……。


「前にもちょっと言ったと思うけど、もうすぐ学園祭があるじゃない」

「あるな……そういやうちのクラスは、何をすることになったんだ?」

「……どうして一雪は知らないのかな? 自分のクラスのことなのに」

「その時間、起きてるフリして寝てたからじゃないか?」


正直、クラスの出し物には特に興味はない、休憩時間には興味があるが……。

あ、でも二菜のところは気になるな、何をやるんだろう、凄く気になる。


「で、その学園祭で俺に何をさせるつもりだ?」

「簡単な話よ……最終日に行われる学園のミスター・ミスコンであんた、1位になりなさい!」

「無理」


……こいつは何を言っているんだ。


 そう、この学園の文化祭には、ミスター・ミスコンが存在する。

高校生のくせにと思うかもしれないが、実はこれ、学園側が主導のイベントなのだ。

参加資格は1年生から2年生まで、他薦・自薦問わず。

ここで全校生徒と外から来たお客さんに選ばれた二人が学園の広告塔として、翌年の学園パンフレットなどで大きく取り立たされることになるのだが……。


「俺がそんなもんに出ても恥かくだけだろ」

「ああ、うちのクラスの往面くんも出るって今から張り切ってるね」

「ならなおさら無理だわ」


1年生はどうかわからないが、2年であればあいつが1位になるのは間違いない。

無理無理、俺はそんなイベントに関わらず、寝ていたい。


「でも多分、二菜ちゃんは出ることになると思うのよね~」

「……かもな」

「おそらくミスコンは、天音さんが1位になるだろうね……そうなると、舞台には往面くんと二人が並ぶのかな?」

「……………」


思わず、その場面を想像してしまう。

舞台の上に上がる、イケメンと二菜の姿。

その後も広告塔として、学園主導なので断ることも出来ず二人でいる時間が増え、次第にうちの部屋にも寄り付かなくなり……。


「そんなもん……許せるわけない……っ!」

「なら、出て1位になる! そしてその舞台の上で告白! これね!」

「これね! じゃねーよさらにハードル上がったわ」


運よく1位になったとして、その後に待ち受けるのは全校生徒とお客さんの前での公開告白じゃねーか。

今でもどうやって告白しようって悩んでるのに、一気に難易度上げるんじゃない!


「でもこれくらいやれば、多分二菜ちゃんの現状も変わるわよ?」

「その場で断られたら、俺の残りの学園生活が死にますがそれは」

「その時は……頑張れ?」

「他人事だと思って……っ!」


とりあえず、まずは二菜に言ってミスコンへの参加は絶対に辞退するように言わねばならない。

それにさえ出なければ、俺も出る必要もなく恥もかかなくていい。

さらにイケメンくんの思惑も外れる、完璧じゃないか!


「と、考えてるかもしれないけど……多分天音さんは、参加を断れないんじゃないかな?」

「なんでだよ」

「あの容姿で今年の1年生代表だよ? 教師側からの推薦があるのは間違いないからさ」

「むぅ……」


そう言われると……確かに、二菜の不参加は難しい気がする。

かといって俺が1位? はっ、無理だろそんなもん。


「うーん、あんた、そのボッサボサの髪整えたら、そこそこいけると思うんだけどねー」

「服はバイト先のウェイター服がいいね、あれよく似合ってるから」

「そうね! ふふふ、あんたが出るって言うなら、私たちがイケメンに仕立ててあげるからね!」

「……考えてはおく」


とは言ったものの。

結局、出ることにはなるんだろうなぁ……。


 * * *



 その日の食後の話題は、自然と学園祭での出し物の話になった。

俺は未だに、自分のクラスが何をやるのかをしらない。


「学園祭の、うちのクラスの出し物ですか?」

「そうそう、何やるのかなって」

「うちはお団子屋さんするんですよー! みんなで茶衣着で接客するんです!」

「へぇ……二菜の茶衣着かぁ、可愛いんだろうなぁ」

「かわっ……!」

「髪はクルッと巻いてお団子にしてくれるとさらにいいと思う」

「可愛い……可愛い……先輩が可愛いって……へへへ……」


こいつ、可愛いって言ってやると、すぐ顔赤くするよなぁ。

こんなんでこれからも大丈夫なのか、お兄ちゃん心配になるよ……お、そうだ。


「二菜、ちょっとそのまま、座っててくれな」

「? はぁ……なんですかー……ひえっ!?」

「……はー、二菜はちっちゃくて、抱き心地いいなぁ……」

「あわ、あわわわわ……」


 俺はソファーに腰掛けた二菜を、後ろからそっと抱きしめてやった。

はは、耳まで真っ赤になってる、可愛い。

そのまま腕の中に閉じ込めるように、俺もソファに腰掛ける。

うむ、これはいい……いつか、二菜を抱き枕にして寝たいものだ……。


「せせせ、先輩、なん、なんですかこれー!?」

「何って……妹とのスキンシップ?」

「こんなスキンシップしてる兄妹なんていませんよぉ!」

「うーん、俺、妹いないからわかんないけど……するんじゃないか?」


俺の中の兄と妹はこれくらいする。

そう決めた。


「……するんでしょうか? わ、私もいないから……わかりませんね……えへへ……」

「そっか」

「一雪お兄ちゃん……こういうこと、私以外にしないでくださいね?」

「……俺にはお前しかいないから、しないよ」

「えっ、あっ……も、もー! そういうところですよっ! ほんと駄目なお兄ちゃんですね!」


すっかり俺も駄目なお兄ちゃん扱いである。

でも、こうやって二菜とすごせるならそれでもいいよなぁ……。


「なぁ」

「はい、なんですか?」

「学園祭、一緒に回ろうな」

「それは……先輩からのデートのお誘いですか?」

「兄妹でデートはしません」

「もー! なんでですかー……でも……いいですよ、休憩時間、あわせましょうね?」

「了解、楽しみだな」

「くふふ、そうですねー♡」


……明日、宮藤さんにクラスの出し物をちゃんと聞こう。

そして、二菜とのこんな時間を守るために、俺は……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!
『凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!』
GA文庫様より、4月刊行予定です。amazonにて予約も開始しております!
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ