表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(WEB版)凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!  作者: yuki
第二章 : 俺は絶対に絆されない!
35/140

ぜーったいにダメですっ!



「それじゃあ再開するか、まずはにんじんをやっつけるぞ!」

「えー……もうやめませんか? 絶対危ないですって……」

「だーいじょうぶだって、もう包丁の使い方は完璧に覚えた!」


 とりあえず押さえる手さえ離さなければ問題ない、ということだろう?

 さっきだって、ヘタににんじんを無理矢理切ろうとしなければ問題なかったのだ。

 それを学習した俺に、もはや隙はない!


「――――なんて事を考えてるのかもしれませんけど! ダメです! 絶対に許しません!」

「えー……どうしてもダメか?」

「ダメです、先輩にはまだにんじんは早すぎました、危ないです! にんじんは私が切ります!!」

「天音がそこまで言うなら……でも、炒めるのは俺がするからな!」

「……むー……そっちももう諦めて欲しいんですけどねー……」

「お前はそろそろ、俺が諦めるのを諦めろ」


 俺の意思は固い。

 俺は、なんとしても料理出来るようにならないといけないんだ!


「もしかして……先輩、私の料理に何か不満でもありましたか……?」

「いや、お前の料理にはなんの問題もないというか、美味過ぎて毎日助かってますありがとうございます」

「えー、じゃあやっぱり覚える必要なんてないじゃないですか! これからもずーっと、私が作りますよー?」


 いやいや、そのずっとがいつまでかわからないから、覚えようとしてるんですよこっちは!


「まぁまぁ、そういわずに……ほら天音、にんじんの正しい切り方、見せてくれよ」

「もうっ……じゃあ、見ててくださいね?」

「おう」

「まず、先輩は大きな塊のまま、切ろうとしてたのがいけませんでしたね」


 そういいながら、慣れた手つきでにんじんを三分割にし、次々と薄切りにしていく。

 おお、慣れたもんだな……っていうかすげぇ、俺が使ったときは全然切れなかった包丁が、次々とにんじんを仕留めていく!

 これが噂に聞く、達人が使うとどんななまくらも名刀になってしまうというアレか!

一山いくらの包丁だけど!


「丸いままだところころと転がっちゃいますから、端を落して断面を作って、転がらないようにするといいですよ」

「へぇ、そんなこと全然思いつきもしなかったぞ、俺」

「くふふー! どうです? 料理上手な私に惚れそうになりましたか? お嫁さんにしたくなりましたか? 先輩、私と結婚を前提としたお付き合いをしてください!!」

「提案を慎重に審議した結果、誠に残念ではございますが、今回は採用を見合わせていただくこととなりました」

「もー! なんでですかー!」


 そんな話をしながらも、見る見るうちににんじんが料理されていき、あっという間に材料が揃ってしまった。

 あれっ、さっきまでの俺の努力って、マジでなんだったの……?



「さて、それでは実際に炒めていくわけですが!」

「全部ぽいぽいっとフライパンに」

「入れるなーんてわけはなく! まずはフライパンを温めましょう!」

「お、おう」

「順番は、まずは豚肉を入れて、ある程度焼いてから順番にお野菜です、なんでかわかりますか先輩?」

「そのほうが美味しく焼けるから?」

「うーん、50点! 正解は、お肉と野菜だと、火の通る時間が違うからですねー!」


 なるほど確かに。

 肉のほうが火の通りが悪い、といわれれば確かにその通りだ……そして、言われるまでそれに気付かない俺。


「もしかして、俺の料理に対する知識ってヤバい?」

「小学生の家庭科レベルで止まってますね」

「……そうか……」

「まぁ、最初なんてみんなそんなもんだと思いますけどね、このくらいは小学生で習いますけど」

「待ってくれ、そうすると俺の知識は小学生以下なのでは……?」

「お気づきになられましたか……」


 なんとなくそうじゃないかなぁとは思っていたが、まさかマジで小学生以下だとは。

 こりゃ、マジで本腰入れて勉強しないとやばいな。

 天音がいる間に上達できれば程度に思っていたが、これは圧倒的に時間が足りないぞ……!



「それじゃあ、豚肉炒めるぞ……ってなんかもうタレみたいなのがついてるんだけど!?」

「くふふー! これは、二菜ちゃん秘密の味付けをした状態の豚肉になります!」

「おい天音、それをされると俺が作れないじゃないか」

「ふっふっふっ、こればっかりは教えるわけにはいきませんねぇ」


 ……ちっ、それを是非とも聞いておきたいところなんだが……。

 今日のところは仕方ない、次は絶対に見逃さないようにしないと。


「それではまずは、中火で豚肉を炒めます」

「炒めます」

「ここで豚肉の色に気をつけてくださいねー! 色が変わってきたなって思ったらにんじん!」

「がばっと?」

「はいがばっと! あとは順番にたまねぎ、キャベツを入れていきましてー」

「どんぐらい炒めればいいんだ?」

「そうですねー、しんなりするくらいですかね? あ、にんじんには気をつけてくださいね?」

「了解」


 ざっざっ、と菜箸で混ぜ合わせるように焼いていくのが、意外と面倒くさい。

 こんな作業を毎回天音にさせているのかと思うと、頭が下がる思いだ……もう、コンビニ飯でもいいんじゃないかな……いやいや待て、絶対満足できないだろ、藤代一雪!

 我慢だ、我慢して最後までやり遂げるんだ!


「しんなりしてきましたらー……この二菜ちゃん特製のタレをがばっと!」

「おい待て、天音」

「はい?」

「なんで、また、そんなタレが、出てくるんだ!?」

「いたっ! いたたたたっ! くふふー! 簡単に再現できないようにですっ! くふふー!!」


 天音の頭をぐりぐりとしてやると、次々と出るわ出るわ、天音しか知らないタレや味付けの数々!

 これじゃ、俺が習ったって全然同じもの再現できないじゃないか……!


「先輩のことですから、どーせ私がそのうちいなくなるかもーとか思ってるんでしょうけども!」

「…………よくおわかりで」

「くふふー! そんなわけないじゃないですかぁ♡」


 そういいながら、天音の手により最後の仕上げをされていく、俺の初めての……野菜炒め。


「まぁそれでも、料理を覚えたいーって先輩の気持ちは、よーくわかりました」

「そうか……それは嬉しいよ……」

「なので、私の知ってるレシピとか! これからじーっくり、ながーく時間をかけて、覚えていきましょうねー!」



 本来、天音がいついなくなってもいいように覚えよう、と思った料理だったが。

「老後の楽しみにもなりますよね!」 なーんて言う天音を見ていると、なんとなく。

 ほんとになんとなくだが、料理を覚えよう、という気が消えていくのだった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!
『凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!』
GA文庫様より、4月刊行予定です。amazonにて予約も開始しております!
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ