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デート?いいえただのお出かけです

 結局あの後、丸一日を過去作の復習に費やした俺たちは、1日を休日としてダラダラ過ごすことに潰し、その翌日に映画を見るために出かけることになった。

 そして待ちに待った映画当日、俺たちは映画館のある繁華街まで出てきたのだが……流石連休、人が多すぎて早くも帰りたい……。


「先輩先輩! 早く行きましょう! 先にチケット買わないといい席取れませんよ!!」


 そんな中、俺の隣ではしゃぎまくっているのは、もちろん天音 二菜である。

 何がそんなに楽しいのか、はじけるような笑顔で周囲を魅了するのやめてくれない?

 俺に対する男子諸君の殺意の篭った視線が、マジで怖いんだけど。


「先輩は映画って、どのあたりの席で見ますか?」

「普段なら、ちょっと後ろより真ん中ってあたりかな」

「まぁ、そのへんですよね。今回もそのあたりの席を狙って行きましょうか」

「おっと待て天音、今日はそんな普通の席じゃなくてもいいと思わないか?」

「え?」


 そう言って券売機を操作しようとする天音を止める。

 ふふふ、今回はそんな席じゃなくてもいいんだぜ……?


「せっかく母さんからの現金支給があったんだ、ここは奮発しちゃおうじゃないか」

「ま、まさか先輩……あれを買うつもりですか……!」

「そうだ、高校生ではなかなか手の出ない……その名もプレミアムシート……!」

「やだ……先輩かっこいい……好きです付き合ってください……」

「申し訳ございません、遠慮させていただきます」

「もー! なんでですかー!!」


 何やらぶつぶつと言っている二菜を無視して券売機を操作し、プレミアムシートチケットを購入する。

 ふふふ、一回買ってみたかったんだよなぁこれ!


 プレミアムシート。

 それは選ばれし視聴者のみが座ることを許されるシート……。

 そこに座れば、ちょっと狭い座席や、前の人の頭が微妙に邪魔!

 なんて事に煩わされず、ゆったりとしたソファで見る事が許されるのだ。

 一回、これで見てみたかったんだよなぁ、映画!


「よし、これでゆったりとした環境で蜘蛛男が見られるぞ!」

「ちなみに、こんな話を知っていますか先輩」

「何をだ」

「プレミアムシートって、別名カップルシートって呼ばれてるんですよ?」

「え」


 なんだよその別名、誰が言い出したんだよ!

 って……うわ、女の子と二人で来てプレミアムシート買ってるとか、俺たち付き合ってます、って宣言してるようなもんじゃないか……!

 まさに今の俺がそう! なんだそれめちゃくちゃ恥かしい!!


「くふふ、先輩もやーっとそういう気になってくれたみたいで、私嬉しいです♡」

「な、なってねーし! だいたいそんなの、友達同士でも買うだろ」

「いーえ! 男女が二人で来てプレミアムシート買うなんて、そういう関係で間違いないです!」

「ま、まぁとはいえ、俺とお前は付き合ってるわけじゃないしな、気にしすぎだろ!」

「でもきっと、映画館のスタッフさんは『あー初々しいカップルだなー』って思うんでしょうね!」

「うぐ……」


 なんか、調子に乗ってプレミアムシートとか買っちゃったけど、後悔してきた……。

 い、今からでも普通のチケットに交換できないかな……。


「くふふ、さあさあ! 映画まで時間はあります! 時間潰しに行きましょう!」

「お、おい待てこのチケット……」

「まずはどこに行きましょうかねー!」

「チケットー!!」


 ***



「ところで先輩、ちょっと周りを見てください」

「なんだ?」


 怪しい人物でもいるんだろうか?

 もし事件でも起ころうものなら巻き込まれてしまう、早急にここを離れなければ。

 そう思い周りを見回すが、特に危なげな通行人はいないように見える。


「カップルがたくさんですね」

「ああ、そうだな」

「みんな、手を繋いで歩いてますね」

「リア充みんな爆発すればいいのにな」


 なんであんな見せつけるように歩いてるんだよ。

 ちょっとは周囲の迷惑を考えろよな、こっちは彼女いない歴=年齢だっていうのに!

 そんな風にイライラしていると……。


「はい、先輩」


 そう言いながら、天音が手を出してきた。

 なんだこの手は……金か?

 白昼堂々金を要求するとは、天音も図太くなったものだ。


「金の要求ならやめろ、欲しいもんがあれば買ってやるから」

「違いますよ!? なんですかその勘違い! 手を繋ぎましょうってことですよ!!」

「なんで?」


 なぜ、俺が天音と手を繋がねばならないのか。


「私が手を繋いで歩きたいんです!」

「え、俺は嫌なんだけど」

「なんでですかー!!」

「なんでって言われても……クラスメイトに見られて、噂されたら恥ずかしいし……」

「どこの乙女ですか先輩……」


 いやだってなぁ?

 俺と天音は別にそういう関係じゃないし、手を繋ぐとかおかしくね?

 今時の高校生って、そんなもんなの?

 あれ、俺は今時の高校生じゃないの!?

 わからないよ助けて五百里マン……!


「ほら、手を繋ぐくらい普通ですって! みんな手を繋いでますし!」

「それはどういう関係の男女の普通なんでしょうね?」

「私と先輩も、もう彼氏彼女みたいなもんですよー!」

「違うと思います」


 もー! と牛のように怒る天音を尻目に、さっさと歩き出す。

 映画の公開時間まで、まだ2時間近くある。

 ちらりと時計を確認すると、今は時刻11時半を回ったところ、先に軽く食べておいた方がいいかもしれない。


「どうする天音、先になんか食っておくか……あれ?」


 後ろを振り返ると、付いてきているものだと思った天音が、付いてきていなかった。

 どうせなんやかんや言いつつも、いつもくっついてきていたから、どうせ今回も……と、油断していた。

 というかちょっと目を離しただけなのに、こんな一瞬ではぐれるとは……。

 逆に芸術的な迷子と言わざるをえない。


「はー……これは俺が悪いな、ちゃんとあいつを見てなかったせいだ」


 これは言い訳の余地なく、完全に俺が悪いだろう。

 せめて、隣に並ぶのを確認してから歩き出すべきだった……。


 そう反省しつつ、今来た道を振り返り、天音を探しに走るのだった。

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