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もしかしてこいつは……

 最近、天音について気付いた事がある。

もしかしてこいつは……俺を詐欺にかけようとしていないのではないか? ということだ。

これだけ一緒にいるのに、未だに怪しげな健康食品を出してこないし、飲める洗剤も出てこない。

シャンプーやリンスも一般のものを購入、使用しているところからも、某マルチ商法にハマっている、ということもないようだ。

まぁ、油断したところで、イルカの絵販売所に連れ込まれる可能性はあるのだが……。


とはいえ、未だに何らかの罰ゲームの結果、俺に付きまとっているという可能性は捨てきれていない。

自分から告白したにも関わらず、俺から色よい返事をもらえなかったことにプライドを傷つけられ、なんとか俺を落とそうというゲームをしている可能性もあるだろう。


そしてもう一つ、可能性として最近考えているもの……。



「私には先輩がいるので、お付き合いはできません、すいません」

「えっ、で、でも天音さんとそいつって付き合ってるんじゃないんだよね!?」

「それが何か、貴方に関係ありますか?」

「あるよ! 付き合ってないなら、まだ俺にもチャンスあるってことじゃないの!?」

「ノーチャンスですよ、あるわけないじゃないですか馬鹿馬鹿しい」

「ほら、試しに俺と付き合ってみない? 絶対楽しいからさ!」

「はぁ……どうして貴方と付き合わなければいけないのですか? 時間がもったいないので、失礼します」

「あっ、天音さん……!!」


……なぜ俺は、横でこんな光景を見せられているのだろうか?

勘弁してくれ、彼が俺を視線で殺せそうなほどに睨んでいるじゃないか。

待ってくれ弁解させてくれ、俺は本当にそういうんじゃないんだ……!!


「さぁ、行きましょう先輩♡」


そういうと、天音が胸を押し付けるように腕にくっついてくる。

ああ、殺せそうから、怨嗟のこもった視線に変わった!

おい君、呪いのわら人形とかそういう呪いの類はやめてくれよ、マジで!


「いやいや待って、というかなんで俺、またこんな所に連れてこられてんの!?」

「決まってるじゃないですか! 私の彼氏♡ として、私を守るためですよ!」

「彼氏じゃねえし……」

「それに先輩がいてくれると、こうやって断るのも楽ですからねー!」

「…………さよか」


そう、最近天音が、俺を告白現場まで無理矢理連れてくるようになったのだ。

そして、俺を理由に相手をフるという暴挙に出るようになった。


つまり……これは、俺を弾除け・風避けにしようと考えている!


 そう、何度も言うようだが、天音 二菜はたいそうモテるのだ。

正直、その美少女っぷりは流石の俺も認めざるを得ないほどである。

そんな天音は、ほぼ毎日のように同学園生・他校生から声を掛けられ、愛を囁かれている。

中には他校でもイケメンとしてそこそこ有名な男子生徒などもいるが、その全てに対し、徹底した塩対応を続けている。

曰く、

『好きでもない、知らない人に好きだと言われても何も嬉しくない、むしろ気持ち悪い、話をするのも嫌』


ということらしい。


『あ、先輩ならいくらでも愛を囁いていいですよ! むしろ囁いてください! 録音させてくださいさぁさぁ!』


と、なにやら興奮しながら、俺にスマホを押し付けようとしてきたことは、記憶にも新しい。

正直あの時の天音は、本気で目が怖かった。

つーかやだよなんだよその罰ゲーム、絶対やらねぇよ。

しかも何に使うんだよそんなもん……!!


「もちろん、寝る前に毎日聞きますが何か?」


変態かな?


……話がズレたな。

そう、天音が俺を風除けに使い、よりよい男子を選別しているのではないか? ということだ。

これならば、天音が俺に付きまとってくることも、ある程度説明が付く。

なんせ、俺は絶対に天音に手を出さないし、こいつに邪な感情を持つこともない。

そう考えると、風除けとして俺ほどの好物件はないのではないだろうか?


うむ、この推理はかなりいいセンいってるんじゃないか?

そう思うよね、五百里くん!


「一雪は本当にブレないねぇ……」

「こいつはもう、ただのアホなのよ」

「なんだと貴様」

「わ、私も、藤代くんは考えすぎだと思うな……」

「宮藤さんまで!?」


おかしい……なぜみんな、天音の味方をしているんだ……!!


「もうちょっと、天音さんを信じてあげてもいいんじゃないかな、あんないい子なかなかいないよ?」

「ほんと、二菜ちゃん毎日健気よねぇ……こんなのにお弁当なんて作ってあげちゃって」


お弁当どころか、毎日晩御飯も作ってもらってますけどね、へへへ……。


「まぁ、それには感謝してるけど……」

「藤代くんは、天音さんに何か不満でもあるの……?」

「違うんだ宮藤さん、俺が本当に愛しているのは、実は宮藤さんだけなんだ……!」

「え、ええっ!?」

「ずっと前から好きでした、付き合ってください宮藤さん!」

「え、えーっとえーっと……」

「ほらほら、三月をからかわないの!」

「あ! び、びっくりしたぁ……そうだよね、からかってるだけだよね」


えへへ、と照れながら笑う宮藤さん。

うむ、可愛い。


「それを天音さんに言ってあげたら、多分泣いて喜ぶよ?」

「その後、俺の天音に何ちょっかいかけてんだって怖いお兄さんが出てきたらどうすんだよ」

「ヘタレねぇ……」


――――ぺこん

天音 二菜

今日もお昼一緒に食べましょうね、迎えに行きますからね♡


「その通知は僕らからじゃないとすると……天音さんからかい?」

「あら、ついに二菜とLINEを交換したのね」

「ああ、仕方なくな……昼にまたくるらしい」

「じゃあちゃんと待っててあげなくちゃダメだよ? 天音さん、彼に声かけられるのキライみたいだから」


そういいながらチラっとイケメンくんを見る。

ああ、今日も相変わらず、人が殺せそうな目で俺を見てるなぁ……。

代わってやれるなら代わってやりたいよ、まったく。


「ほんと、勘弁してほしいよ……」


そういいながら机に突っ伏す俺を、三人が生暖かい目で見ていたことを、俺は知らない。


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