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犯人の予想



「さて、それでは今日の放課後ですね、どこで待ち合わせますか?」

「どこでって、え、これ行くの? ほんとに?」


さっき手紙は即焼却とか言っていたわりに、行く気満々な二菜に驚く。

行ったところで、そんなに面白いものなんてないと思うんだけど。

どうせあれだよ? 暇な男子のおもちゃになるだけだよ?


「もちろん行きます、こういうのはぱっ! といってぱっ! と終わらせるに限るんですよ」

「お前って、ほんと思いきりいいよなぁ……無駄に」

「えへへへへ照れ……褒めてるんですよねそれ?」


もちろん、褒めていない。

ランチバックに弁当箱を片付けながら肩を竦めて二菜へと返事を返した。

隣でむくれた気配がしたが、気にしない、気にしてはいけない、見てはいけない。


ランチバックを二菜に手渡して立ち上がると、ちょうどいいタイミングで予鈴が鳴った。

うーん、午後の授業が始まる……帰りたい!


「さて……それでは先輩、放課後、中庭の自販機前で集合ってことでいいですか?」

「ほんとに行くんだ」

「もちろん行きますよ! 先輩だって行くんですからねっ!」


行きたくない。

どうせ行ったってろくな事にならないのはわかってるし、行くだけ無駄だと思うんだけど……やる気に溢れた二菜を見ていると、このまま放っておくほうが後々面倒臭い気がしてくるから困る。

まぁ、行くだけ行って何もない、ってことがわかれば二菜も落ち着くかな?


「わかったわかった、それじゃあまた後でな」

「はぁい、授業ちゃんと受けてくださいね! サボっちゃだめですよ!」

「お前は俺のおかんか」

「彼女です!」

「はいはい」


腰に手を当ててそう言う二菜に少し気恥しいものを感じながら、校舎へと戻っていくのだった。

くそ、なんかちょっと顔が熱いな……春の陽気のせいか?

曇ってるけど。



 *



そうして、迎えた放課後。

午後の授業を終えた俺は五百里たちと別れ二菜と合流し、校舎の中を歩いていた。

あちこちから部活を始める生徒たちの声が聞こえてくる。


この時間はいつもとっくに帰っているので、少し新鮮な気分だ。



「先輩は、どんな子だと思います?」


そんなことを考えていると、隣を歩く二菜がこちらを見上げながら、そう尋ねてきた。

ふむ、どんな子、どんな子ね。

筆跡からわかる情報なんてものは特になく、せいぜいわかる事と言えば「これ書いたの、多分女の子だよね」くらいのものだ。

どちらかと言えば丸っこい字だったので、女の子女の子しているイメージは伝わってきたが。

まぁ、今わかっていることと言えば。


「犯人は10代から20代、もしくは30代から40代、または50代から60代の日本人、あるいは外国人の男性、もしくは女性だろうな、複数人の犯行の可能性は非常に高い」

「つまりまったくわからないってことですねわかりました」


何をいう、完璧な犯人像のプロファイルだろうが。

あ、そうそうこれを言うのを忘れていたな。


「ただし、今回の犯行は愉快犯の仕業、という可能性は非常に高いと考えられる」

「先輩って……なんていうか、こういうことに関しては途端にぽんこつになりますよねぇ」

「二菜にポンコツとか言われると、ほんと微妙な気分になるのはなんでだろうな?」


お前には言われたくないというか、なんというか。


そんなことを考えながらたどり着いた屋上の扉を押し開けると、目の前には雲に覆われた曇天が現れた。

そして、そんな屋上の中央には、こちらへと背を向け佇む、1人の女の子。

この時俺の頭の中には、五百里の『その手紙は、波乱を持ち込むものだよ』という声が再生されていた。


ああ、なんていうか……うん、波乱を感じるわ。

だって俺の左隣からすでに波乱を感じさせるオーラ出てるもん。

念のため、きょろきょろと周囲を見回すが、その女の子以外に特に人影は確認できず、念のためもう一度後ろを振り返って確認するも、特に誰かが隠れている様子もない。

ふむふむ、なるほどなるほど。

……なるほどね?


そんな俺たちに気が付いたのか、屋上にたたずむ女の子がぱっとこちらへと振り向くと、ほっとしたような笑顔を見せた。

彼女の胸に揺れるリボンの色は……緑。

俺たち3年生は青、二菜たち2年生は赤……ということはつまり、今年入ってきたばかりの新入生を表す色、ということだ。

もちろん、俺に新入生に知り合いなどいないので、その警戒心はさらに高まっていく。

なんだ、今度はなんのつもりだ? 何を売りつけるつもりだ、お前は?


「先輩、先輩」

「なんだ、後輩よ」

「やっぱり女の子じゃないですか、どうするつもりですか」

「どうする、って言われてもなぁ……どうせあれだろ、胸元にボイスレコーダーでも仕込んでるぞ、あの子」


後から聞いてネタにするためにな。


「先輩って、1年経ってもあんまり変わりませんね……」

「何言ってんだよ、この前の測定で身長はなんと3センチも伸びてたぞ」


これも恐らく、栄養のある食事を1年摂り続けたおかげだ。

二菜には感謝しなければならない……目指せ身長190センチ台!


「なっ!? ど、どれだけ大きくなるつもりですか……っ!」

「お前は……ふっ、頑張れよ、二菜」

「むーっ……!」


二菜がジトーっとした目を俺に向けてくるが、それに対して反応したら負けかなと思っている。

肩を竦めて返した俺たちは、屋上で待つ女の子へと近づいていく。


……やっぱり、俺には見覚えのない女の子だ。

念のために二菜へと「知ってる?」という目を向けるが、ふるふると首を振られた。


「すいません、こんな時間に呼び出すような事しちゃって」

「いや、別にいいよ。それで、今日はどうして呼び出されたのかな、いい羽毛布団の紹介? それとも浄水器――――痛い、足を踏むな二菜、痛い」

「先輩が口開くと、話が進まないんですっ! あ、すいません、どうぞ続けてください?」

「は、はぁ」


それきり口を閉ざす目の前の女の子。

あー、曇ってるなぁ、雨降らないといいなぁ、傘、折り畳みしかないけど大丈夫かなぁ……。

などと考えて意識を半分飛ばしかけていた頃。

意を決した女の子が顔を上げ――――。


「……っ、藤代先輩!」

「あっ、はい」



「付き合ってください!」

「はい?」


そのような事を、のたまわれた。

あ、これ真面目に考えて返答したらダメなやつですねわかります。




「………………」


そんな彼女を、二菜だけが真剣な目で見つめていたが……それにきづくことは、出来なかった。

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