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いつもの天音といつもの帰り

今回はB-銀河先生に描いていただいたTwitter漫画の元ネタ話になります

放課後の帰り道。

俺の少し前を、鼻歌を歌いながら……なんならスキップでも始めそうなほどに上機嫌な天音を見ながら。

俺は、物凄く微妙な気分を味わっていた。


一体、何があってあいつはあんなに上機嫌なんだ?

放課後だから? ようやく学校が終わって帰れるから?

うん、それならわかる。

一日の辛いお勤めを終えて帰宅するのって、本当に心が躍るよね。

とはいえ、あそこまで気分よくなるようなものだろうか?

明日が土曜日で休みーというならわかるが、明日も平日、もちろん授業もあるし、まだまだ気分は嬉しさ半分、といったところだろう。


だからこそ、思う。


解せぬ。


「……なぁ、天音」

「? どうしました、先輩?」

「いや、今日は妙に機嫌いいけど……なんかいいことでもあったのか?」

「え、私機嫌よさそうに見えます?」


見えるから言ってんだよ。

普段からニコニコとして俺の前ではあまり機嫌の悪さを見せない……いやまぁたまにぶーたれてる事もあるけど。

基本的にいつも笑顔な印象の天音だが、今日は明らかに。


「鼻歌まで歌ってて見えますかもないと思うけど?」

「鼻歌!? 私そんなの歌ってましたか? ちょ、ちょっと恥ずかしいですね」

「気づいてなかったのか……ていうか天音は料理中とかも時々なんか歌ってるぞ?」

「完全に無意識でした……!」

「つまり無意識に歌っちゃうくらい上機嫌だったってことだな」


ん?

ということは、こいつは普段から上機嫌って事か?

ますます謎だな天音二菜……一体何がそこまで彼女を盛り上げるのか。

もしや、恐れていた天音の仲間がそろそろこちらに到着するのか?

ここ最近、帰宅後はすぐに天音が着替えてうちにくるからと玄関のドアの鍵を掛けていないが、今日辺り天音が屈強なスーツ姿の営業お兄さんと来たりするのか?

はたまた貴方は神を信じますか? なおばちゃんと来てしまうのか!?


「先輩が百面相してる……」

「俺にだって考えないといけないことはたくさんあるんだ、時にはそんな顔だってするわな」


特に自分の生活に関わることはな!


「まーどうせ先輩の事だから、見当違いな事、考えてるんでしょうけど!」

「それならそれでいいんだけども……で? お前はなんでそんなに機嫌がいいんだよ」

「……うーん、別に私はいつも通りですし、特に何があった、ってわけではないですよ?」


唇に指を当てながら、天音が真剣に考えているのを見つめる。

眉をひそめてむーっと唸っているところを見るに、本当に特に思いつかないようだ。


「今日はお天気もよくてご飯も美味しかった、友達ともいつも通り、この前の小テストも満点でいつも通り」


なんか聞き間違いかな? と思わせる一言があった気がするが……いつも通りなのはいつも通りらしい。

となるとやはり、今晩あたり営業のお兄さんが……!


その危険性について真剣に考えようとしていた俺の隣にいた天音が、小走りで正面に回り込むとくるり、と振り向きながら。


「強いて言えば……」

「おう」

「くふふっ! 先輩と一緒にいるから、幸せすぎてつい鼻歌歌っちゃうくらい、上機嫌なのかもしれませんねっ!」


こんな事を言いやがった。


その時の笑顔がまた、なんというか……。

あまりにも綺麗な笑顔で……。


「あっ! 先輩今、私に見惚れましたね!?」

「ば、ばーか、そんなんじゃねーし、単に単純な奴だなって呆れただけだし……!」

「くふふー! もー! ほんと素直じゃないんだから、先輩はー!」

「うっせー……ほら、後ろ向きで歩いてるとこけるぞ天音」

「はーい! 先輩先輩!」

「なんだ、後輩」

「手をつないでくれたら、もーっと上機嫌になりますよっ!」

「せっかくのご提案をいただきながら誠に残念ではございますが、このたびはご辞退させていただく所存です」

「もーっ! なんでですかーっ!!」


いつもの天音の非難の声を聞きながら、いつもとは違う顔の火照りを感じながら、夕方の街をゆっくり、家へと帰るのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「のうりん」「りゅうおうのおしごと!」の白鳥士郎先生が書籍版をお買い上げされたようです。取り急ぎご報告。 https://twitter.com/nankagun/status/124926…
[良い点] キミと生きることが私の幸せというやつですね、尊い。 二人一緒なら何気ない日常も鮮やかに彩られるのさ。 気づけば書籍発売までもうすぐそこ。
[良い点] 更新お疲れ様です。 良きですな。…因みに、これは付き合う前のお話ですか? 応援してます。
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