天音の嫌いなもの
「先輩って、本当に美味しそうにごはん食べますよねぇ……」
「美味いからな、実際……すまん天音、おかわりくれ」
「はぁい、どれくらい盛りますか?」
「うーん……茶碗半分くらいでいいや」
残ったおかずをちらりとみて考える。
もうちょっと食べたい気もするけど、茶碗半分くらいが適量だろう。
それにしても天音の料理、日に日に腕が上がってる気がするのは気のせいだろうか?
なんというか……俺の舌にベストな味付けに近づいている、というか。
そのうち、マジで天音から離れられなくなるんじゃないだろうかという気がする。
うむむ、胃袋を掴まれるのって、本当にきっつい……!
「先輩ってほんとなんでも食べてくれますけど、苦手なものとかないんですか?」
「あんまりないなぁ……どうしてもこれは無理! ってのは」
「えぇ……私なんて結構あるのに……ピーマンとか……」
「だからか」
「え? 何がですか?」
おかしいと思ってたんだよ……ピーマンの肉詰めが出てこないのを!
1回、どうしても食べたいなーと思って天音にリクエストしたんだけど、結局出てこなかったんだよな、あれ。
その時は普通にハンバーグがでてきてあれっと思ったんだけど、その時は追及しなかったんだよね、ハンバーグ普通に美味しかったし。しかも大きかったし。あれ、焼くの大変だよねってサイズだったし。
しかし、これで納得がいった。
「まさかピーマンがダメだとは……子供舌だな」
「だ、だってピーマンって苦くないですか!? あんなの食べれるなんておかしいですよ!」
「ピーマンがダメなら、アスパラガスもダメだろ、お前」
「うっ……な、なんでわかったんですか?」
「やっぱりな」
子供が嫌いな食べ物と言えば、ピーマン、にんじん、アスパラガスだよね。
トマトがダメとかキュウリがダメ、って子供もいるけど、この3つは共通してるはず。
「ピーマンも食べ方によるだろ、おじゃこと和えて醤油で炒めると美味しくない?」
「うえー……想像するだけでダメです、今口の中に苦みが広がりました先輩のせいです責任を取ってくださいちゅーしてください」
「I'm sorry, but I can't accept your proposal.」
「もーっ! なんでですかーっ!!」
スキがあればぶっこんでくる天音にため息をつきつつ。
こりゃ、晩御飯にピーマンとアスパラが出ることはないんだろうなぁ、とため息をつくのだった。
「あ、グリーンアスパラはともかく、ホワイトアスパラは……」
「すいません、ダメでーす!」
「はぁ……」