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女子の部屋に遊びにいくのは定番イベント

「やっぱり、彼氏彼女と修学旅行っていうのは全高校生の憧れだと思うんですよね」

「え、その話まだ続いてたの?」


その日の夜。

天音の作った鳥むね肉のトマト煮に目を輝かせていると、この一言が飛び出した。

全高校生とか言われても……その、困る。

少なくとも俺は考えたことはない……あれ、もしかして俺って一般高校生から逸脱してます?


「朝もちょっとだけ言いましたけど、やっぱり高校生が旅行ってなかなか行けないじゃないですか」

「まぁ、そうだなぁ……時間もないし」

「何より、先立つものがありませんからね」

「まぁなぁ」


旅行ともなると、やはりそこだ。

俺はバイトもしているから少なからず貯蓄があるが、皆が皆バイトをしているわけではない。

そうなると、やはりネックとなるのは資金源なわけで。


彼女と旅行行きたいからお小遣い下さい!

なんて言おうものなら、普通の親なら可哀想な子を見る目で見られるだろう。

というか高校生男女が泊まりで旅行とかないない、ありえない。


もしも自分の娘がそんなことを言い出したら……うん。

想像の上とはいえ、相手の男にむかっ腹が立ってくるな!

まぁ娘なんていないんだけど!


「でも! 修学旅行はその前提条件が最初から整ってるんです!」

「入学したときから、親が積み立てで金払ってくれてるからな」

「なので、ここがはじめての恋人との旅行、って高校生は多いと思うんですよね」


なるほど、言われてみると確かに。


「しかも、普段は行けないような見知らぬ土地! 盛り上がらないわけもなく!!」

「言われてみると……確かにそんな気がしてきたかも……」

「自由時間は2人きり、夜も人目を忍んで逢瀬を楽しむ……ね、どうですか先輩?」


想像してみると、確かに高校生の男女にとってはなかなか刺激的な行事に思えてくる。

あーそれでか、修学旅行前になると彼氏彼女が欲しい、と言い出す人が多いのは。

初めて、その現象に納得した気がする。


そう言えば、中学の時もそんな奴ら多かったな……彼女が欲しい欲しいと言いつつ結局卒業まで出来なかった山崎……お前は今、どこで戦っている……?


「あとこれも朝に言いましたけど、男子が女子の部屋に遊びにくるーってイベントもあるじゃないですか?」

「え、あるのかなそんなイベント……中学の時はしなかったけど」

「あるんです! 私の持ってる教科書には、そういうことをやるもんだって書いてました!」

「その教科書、絶対ラブコメものの小説とかそういうのだろ!?」


前も聞いたぞそれ!

それを参考にして物事を進めようってのはやめなさいって前に言ったでしょ!

なんでまだそれを使ってるの! 天音のおばか!


「いえいえ、ちゃんとした女子高生が読んでもいい雑誌ですって! ……その教科書にはこう書いてありました……『先生の見回りは大チャンス』、と!」

「あ、あれ教科書にはするのやめたんだ、それは何より……で、なんて書いてあったんだ」

「急な見回り、あちこちに隠れる男子たち! 手近な布団に急いで入るとそこには気になるあの男の子が! 一組のお布団の中、お互い気になる男女が2人、何も起きないわけがなく!」

「え、それ本当にティーン向けの雑誌なの?」


どう考えても男性向けのそういうネタなんだけど。


「で、こういうのが先輩とは体験できないんです! どう思いますか先輩!!」

「あ、話はそこに帰ってくんのな」

「もちろん帰ってきますよ! そこが一番重要なんですから!」

「そもそも俺とお前は付き合ってるわけでもないから、そういうイベントとは無縁では?」

「確かに今はそうかもしれません……が! 修学旅行の頃にはもっと距離が詰まってる予定ですからね!」

「はいはいワロスワロス」

「もーっ!」


ぺしぺしと机を叩く天音を尻目に、もくもくと食を進めていく。

お、鶏のむね肉ってそのまま食べるとぱさぱさしててあんまり好きじゃないんだけど、こうすると美味しいな。

やっぱり煮る、という工程は偉大だと言わざるを得ない。


「……そういえば先輩って、修学旅行どこ行くんでしたっけ?」

「うちらの世代は北海道だな、確か10月の終わりだったはず」

「いいなぁ北海道……私も先輩と行きたいなー……でも飛び級も無理だしなぁ……あっ!」

「え、何その笑顔、いい事思いついちゃった! みたいな」

「くふふ! 私、いい事思いついちゃいました、先輩っ!」


絶対いい事じゃない。


なぜか今、正確に天音の考えをトレースできている気がする。

片方が片方の学年に合わせようとすると、取れる方法は一つじゃないわけで。

そう、飛び級以外にあるとすれば……!


「「先輩が(俺が)1年留年すれば、一緒に修学旅行に行けますね!」」


やっぱりな!


「いやいや、留年とかマジでないわ」

「えー、私と一緒に勉強しましょうよぉ、一雪くん♡」

「断る」

「……まぁ、そうですよねぇ……流石に留年は無理かぁ」


心底残念そうなため息をついているが、そこまでして一緒に行きたいものなのだろうか? と不思議に思ってしまう。

一体なぜ、そこまで……はっ!? まさか……そういうことか!

旅行にかこつけて外に連れ出し、友人も誰もいない見知らぬ土地という環境に置いたうえで絵画販売員や某ネットワーク系販売員の仲間と合流!

何人もで囲んで半ば強制的に契約を結ばせたい……そういう事か!?


「天音」

「はい?」

「俺は絶対っ! お前とは旅行なんて行かないからな!!」

「!? な、なんでそんな力強く宣言するんですかー!?」

「天音、ごはんのおかわりください!」

「もうっ」


天音の新たな野望を事前に阻止することに成功した俺は、意気揚々とおかわりを要求するのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] やはりこのころのツッコミまくる一雪懐かしいなぁ。 後に全部ブーメランになってかえってくるのほんと草
[良い点] >もしも自分の娘がそんなことを言い出したら……うん。 >想像の上とはいえ、相手の男にむかっ腹が立ってくるな! 過去に遡って着々と続編への伏腺を撒いていて草。 〆は絆されない芸人である一…
[良い点] >もしも自分の娘がそんなことを言い出したら あれぇ? もしかして伏線?
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