どうして先輩は先輩なの?
本更新以降、ショートストーリーとなります。
時間軸が5月近辺に戻り、2人の関係も戻っておりますが
気にせず読んでいただければ嬉しいです、わかりづらくてすいません!
「ああ先輩、どうしてあなたは先輩なの?」
「また天音が阿呆な事を言い出した件について」
5月。
抜けるような晴天の下、学校へ行くために歩く俺の隣で、天音が発した一言がこれだ。
こいつは一体何を言っているんだろう?
そう思ったのは俺だけではないはず。
何言ってんだこいつ。
「だってー、授業が始まったら違うクラスですよ!? 同い年ならずっと一緒だったのに!」
「同い年でも違うクラスになる可能性あるだろ、何言ってんだお前」
「違う学年だと建物も違うんですよ!? 酷いと思いませんか!」
「思いません」
というより、全く意味がわからない。
同じクラスだったとしても、授業が始まってしまえば別々じゃないか。
それなら、学年が違おうが、クラスが違おうが、全く関係ないと思うのだが……。
そう思ってちらりと隣を見ると、天音が難しそうな顔をしていた。
うん、やっぱりこいつの考えていることはよくわからない。
「同じクラスなら、席が隣になったりするんですよ!?」
「前と後ろに分かれる可能性の方が高いな」
「真面目に勉強してる先輩の横顔を、こうチラチラ見ちゃって、『あー、今日もカッコいいなあ』とか思っちゃうわけですよ!」
「前向け」
「教科書を忘れたら、机をくっつけて一つの教科書を2人で見たり!」
「隣のクラスで教科書借りてきてくれ」
「それでそれで、ノートの端っこに『好きです♡』とか書いたり、授業中に秘密のお手紙交換したり!」
「真面目に授業受けようか」
「もーっ! なんでですかー!!」
よかった、こいつが後輩で……同じ学年じゃなくて……。
こんなのが同じクラスにいたら、面倒くさいことこの上なかったに違いない。
「今のままだと修学旅行だって別々じゃないですかー……私、先輩と行きたかったのに!」
「そりゃーどうしようもないだろ、自分の生まれを呪うんだな」
「呪ってますよ! あと数ヶ月早ければ……くうっ!」
そう言いながらぷくーっとほっぺたを膨らませる天音。
子供は授かりものなんだから、そんなことを言っても仕方ないだろうに。
「それに同い年でも、修学旅行の班分け別だと行くところも違うだろ?」
「え? そんなのこっそり2人で抜ければいいじゃないですか」
「いいじゃないですかって……」
さも当然のように言うけど、それって色々問題だよね。
せんせー、藤代くんと天音さんが2人で消えましたーとか、全体の迷惑になるのは間違いない。
いや班の連中と口裏合わせて、最後に帳尻合わせればいいのかもしれないけど。
「くふふ! 夜も旅館で2人で逢引ーとか憧れちゃいますよねっ!」
「見回りの先生にバレて廊下で正座か……」
「先生の見回り中は同じお布団の中で隠れるとか、押入れに隠れるとか……あ、ヤバい鼻血出そう」
「想像しただけで!?」
何この子本当に大丈夫なの!?
その後も引き続き妄想の世界へと旅立って行く天音に不安を感じながら、深いため息をどうしても我慢しきれない俺だった……。