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(WEB版)凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!  作者: yuki
第四章 : 絆されないはずだったのに!
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こたつにみかんは素晴らしいという話

 

「うー、寒い……外出たくねぇ……!」

「はいはい、そんなこと言わないで学校行きましょうねぇ」

「こたつから出たくねぇ……」

「もー! ほんと、遅刻しちゃうんですけど!?」


 早いもので、暦の上ではすでに12月、今年も残りわずかとなってしまった。

 そして12月と言えば、こたつにみかんが常備される季節になるわけで。

 なんでこたつで食べるみかんって、こんなにおいしいんだろうなぁ……いくらでも食べれる気がするぞ。

 見てくれよこの指を……みかん色に染まってしまった! ははっ!


「ふっ、俺はもうこたつから出ない……悪いな二菜、今日は1人で行ってくれ」

「またそんな事言って! 冬の間は学校、行かないつもりですか!」

「あー、まぁ、それもいいかもなぁ……」

「よーくーあーりーまーせーんー!!」


 ぐいぐいと手を引かれるが、所詮二菜の非力な手で俺を引きずりだすことなどできるわけもなく。

 どれだけ手を引いてもこたつから出る気がないと言う事を悟ったのか、ついにその場に座り込んでしまった。

 座るならこたつに入ればいいのに……そこ、寒くないの?


「ほれ、お前もおこたに入りなさい……そして今日は一緒に学校を休もうじゃないか」

「……まー、皆勤とか狙ってるわけじゃないんで、一日くらいいいって言えばいいんですけどー」

「お前、春先に午後まるまる休んだりしてるもんな」

「あれは先輩が悪いです」

「はいはい俺が悪い俺が悪い、ほれみかんを食べな、あーん」

「あ、あーん……くふふー! ま・許してあげようかなっ」


 みかん一つで許されるとは、チョロい奴である。

 二菜の口の中にみかんを放りこみながらチラリと時計を見ると……うん、まだ大丈夫。

 あと10分はこたつに入っていられる事を確認し、次のみかんに手を伸ばした。

 俺1人ならサボるところなんだけど、流石に二菜をサボらせるのはちょっとなぁ。


 ただでさえ、俺と付き合いだしたせいで奇行が目立つようになった、とまで言われるようになったんだ、これ以上二菜に悪評がつくような行動は避けたい。

 正直、今更な気もしないでもないけども。



「あ、そう言えば先輩、お正月ってどうする予定なんですか?」

「正月? 正月かぁ……正月なぁ……そうか、もうそんな時期か……」


 今年はどうすっかな?

 例年通りなら、母さんの実家の蓮見の家に正月の挨拶に行って初詣やらなんやらするんだが……

 今年は二菜がいるからなぁ……って、そういやこいつはどうするつもりなんだろう?


「お前はどうすんの、正月」

「お父さんたちは30日からこっちに帰ってくるらしいので、そっちに行くか、もしくは……」


 ちらちら、とこちらを見上げる二菜の視線は、「先輩次第」と訴えているようだった。


 そこでふと考えたのは、「こいつを蓮見の家に連れていくか?」と言う事だ。

 蓮見の婆ちゃんも老い先短いだろうし、こいつを紹介するべきなんだろうか?

 まぁ、あの婆ちゃんマジで全然死にそうにないんだけど……あの婆ちゃん、もう妖怪入ってるかんなー。


「ていうか、お父さんたまにはかまってあげようよ!?」

「えー、まぁ、うん、お父さんは大丈夫ですよ……うん」

「俺、たまーに二菜のお父さんが可哀想になっちゃうんだよなぁ……」

「そうですか?」


 そうだよ。

 自分の娘、しかも溺愛してる娘にそんな塩対応されたら、俺だったら泣いちゃうと思うぞ、多分。

 はぁ、将来が心配だよ……俺も自分に娘が出来たら、そんな思いをするようになるのかなぁ。

 お父さんのあとにお風呂入りたくないとか、お父さんの着た服と一緒に洗ってほしくないとか。

 想像しただけでもう辛い。


「はぁ……」

「なんで先輩がそんなに遠い目を!?」

「遠い目をしたくもなるわい……はぁ、可哀想……」

「もー! なんでですかー!!」


 あー、こたつがあったかい、もう出たくない。

 でも、そろそろ出ないとまずいよなぁ……時間的にもそろそろ出ないと、マジで遅刻しそう。


「まぁ、正月までまだ1カ月近くあるし、おいおい考えるとして……そろそろ行こうか、二菜」

「あれっ、学校、結局行くんですか?」

「いや行くでしょ……俺1人なら休もうかなって気にもなるけどなー」

「くふふ! じゃあ2人でサボっちゃいましょ!」

「あっ! おいこらお前っ」


 そういうや否や、二菜が俺の膝の上に滑り込んできた。

 つーかこの炬燵ちっこいんだから、そんなとこ入ったらぎゅうぎゅうじゃねーか!


「膝の上て……子供かお前は」

「ふふーん、子供でいいですもんねーせんぱーい」

「都合のいい時だけ子供になりやがって……!」

「こういう時は、ちょーっとだけ! 小さめな自分がお得に感じますね!」


 ちょっとて。

 胸元に甘えるようにすりよる二菜を見て、次に遅刻確定の時計を見て。


「こりゃ、今日はもうサボり確定だな」


 さすがに、溜息をつくしかなかった……。

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凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!
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― 新着の感想 ―
[良い点] おこたでミカン…いいですね(о´∀`о)
[良い点] 2人で炬燵から出れずにダラダラしてサボるのはエモすぎる。最高です。
[良い点] 二菜たそと鈴七たそ~のエンカウントが見たい。w いや、この場合は一雪くんの方か。 電話の時といい、しょうもない理由でガチのレスバしてくれそう。 [気になる点] 絆されに出会うまでは「なん…
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