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(WEB版)凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!  作者: yuki
第四章 : 絆されないはずだったのに!
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まだまだ先の話だね


「先輩、お茶、飲みますか?」

「おお、もらおうかな」


俺の下ろしたカバンの中から二菜が魔法瓶の水筒を取り出し、コポコポと注ぐ……って魔法瓶!?

湯気の立ったまだ暖かいお茶を見つめ、なんとも言えない表情をしてしまう俺を、誰が責められるだろうか?


「なんか重いカバンだなぁと思ってたが、そんなもんが入ってたのか……」

「本当はお弁当も持ってきたかったんですけど、流石にこれ以上は、ねー……はいっ、どうぞ」

「さんきゅ……はぁ、お茶が美味い」

「もうっ、お爺ちゃんみたいになってますよ、先輩!」

「しゃーないだろ、疲れてんだから」


いつもは少し冷たく感じる風も、今日ばかりは気持ちいい。

お爺ちゃんと言いたければ言うといい……

紅葉を眺めながらゆったりと飲むお茶、最高……!


「さっき、山降りたところで売ってた団子でも買っとけばよかったな」

「あのみたらし団子、美味しそうでしたよねー」

「な、あとでどっかで食べるか」

「はいっ!」


そうして、2人の間に無言の時間が流れる。

聞こえてくるのは周囲の喧騒と風の音、遠くに聞こえる河のせせらぎだけだ。

だけど最近では、こんな静かな時間も悪くないな、と思うようになっていた。


以前はやかましかった二菜も最近では大人しく、こうして2人一緒に静かな時間を過ごす事も増え


「先輩先輩、膝枕、してあげましょうか?」

「はぁ?」


静かな時間、終了いたしました。

いやいや膝枕て、いきなり何を言いだすんだこいつは?

なんか、最近こいつも落ち着いてきたな……と思ってたのは俺の気のせいだったのか?

しかも家の中ならともかく、こんな外でとかお前!


「いえ、結構です」

「くふふー! 照れちゃって先輩、可愛い♡」

「周りをみろ周りを、家の中とかならともかく、ここではないわ」


観光客もたくさんいる公園で彼女の膝枕とかどこのバカップルだよ。

お前と違って、俺はそういうの恥ずかしい、って思う羞恥心がまだ生きてんの!

まぁ、家の中なら? ちょっとくらい、してもらってもいいかなー、とは思う、けど?


「なるほど、では私が先輩にしてもらう方で」

「結局バカップル全開じゃないですか、やだー!」

「もー! されるのも嫌、するのも嫌とか、先輩ちょっとワガママですよ!?」

「あれっ、なんで俺が怒られてるの?」


前言撤回。

やっぱこいつは、初めて会った時から全然変わってないわ。

はぁ、いつになったら落ち着きのある正統派美少女になるのか……せっかく可愛いのに、ほんとイロモノ美少女すぎるよ、二菜……。


「はぁ……」

「あっ、ダメですよー溜息は、幸せが逃げます!」


勿体ない! と手を伸ばす二菜を見て、また一つ溜息をつく。

うん、多分こいつは一生、この落ち着きのなさのままなんだろう。


「七菜可さんは遠いな、二菜……」

「ふふん、身長なら、来年にはお母さんを追い越す予定なので楽しみにしていてくださいね!」

「そっちはもうどうでもいいわ」

「諦められた!?」


そっちはほんと、まったく期待してませんから。

身体的な成長より、精神的な成長をお願いしますよ二菜さんや……。



「それにしてもあれだな、このくらいの季節が一番過ごしやすいな」

「ですねー、そろそろコート出さないとなー、って考え出すくらいの時期が、一番いいですよねやっぱり」

「あー、あとあれだ、梨、梨が美味しんだよなこの季節……あ、ヤバい食べたくなってきた……帰り、梨買って帰ろうぜ二菜」

「くふふー、いいですよー! 柿とかもいいですよね、あまーいのが食べたいです!」


いいよなぁ、秋の味覚。

果物もいいけど栗とか、キノコ類に……さんま!

あ、ヤバい久しぶりにさんま食べたくなってきた!


「あとさんま、さんま焼いてほしいな、今日の晩御飯さんまがいい」

「了解ですよー、って、この会話の方がなんかちょっと恥ずかしくないですか、先輩?」

「どこが? 普通の会話だと思うんだけど」

「いえー、その……し、新婚夫婦、みたい、な? 会話だなーって」

「ほんっとに今更な、それ」


お前と買い物いくたんびに、試食やらレジのおばちゃんからそういう目で見られてんだろうが。

ていうか、春先からずっとそんな会話を人前でしてきたのに、今更だと思わない?

恥ずかしがるなら、もっと前々から恥ずかしがってほしかったわ、ほんと。


あの頃の俺、ほんといっつもそんな気分だったんだぞ、天音二菜よ……!


「えへへ、先輩もずいぶん、私に染まっちゃいましたねぇ」

「染まってないし、ただ慣れただけだし」

「くふふー! ……えいっ!」

「あっ、こらお前!」


そう言うやいなや、二菜が俺の腕に体をすりよせてきた。

いやいやほんと、観光客でいっぱいの公園でそれはないわー。


「先輩先輩!」

「……なんだよ」

「くふふ! 将来結婚しても、ずっと仲良しでいましょうね♡」

「はいはい、そうだねそうだね」

「ぶー、先輩はもうちょっと私に甘くなるべきだと思います! 甘やかして! さぁ早く!!」

「はぁ……」

「もー! なんでそこで溜息なんですかー!!」


溜息もつきたくなるわ。


凄い山の紅葉を眺めながら、二菜の妄言を聞き流す。

結婚、結婚ねぇ……結婚って、あまりにも気が早くない? 俺たち、まだ高校生だよ?

……と思いつつも、あまりにも先の話でやたらと盛り上がる二菜の笑顔を見ていると、なんとも言えない気分になるのだった……。

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凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!
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― 新着の感想 ―
[良い点] 一雪君、未だに、ちゃんと周りを気にすることができる正統派男子な点。 絆されつつ(というか絆されてるけど)、ちゃんと守るべき所を守ってるのは偉いと思う。(謎の上から目線) 光景を想像すると…
[良い点] 相変わらずの2人に癒されますねぇ。 外で膝枕の方がバカップルっぽいかなぁ。
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