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(WEB版)凄くモテる後輩が絡んでくるが、俺は絶対絆されない!  作者: yuki
第四章 : 絆されないはずだったのに!
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温泉へ行こう! その7

 

 朝起きたら、離れた場所で寝ていたはずの二菜が、なぜか俺の腕の中で気持ちよさそうに眠っていた。

 解せぬ。

 目が覚めて最初に目に入ったのが、腕の中ですやすやと眠る美少女の姿だった時の男子の気持ちを百五十文字以内で答えなさい。(配点15点)


「なんか、前もこんなことあった覚えがあるぞ……」


 あの時も起きたらこいつが目の前ですやすや気持ちよさそうに寝てて、ぎょとしたのを今でも覚えてる。

 ったく、あの時からなーんにも変わってないな、こいつ……身長も伸びないし。

 いや、別に身長も伸びなくてもいいんですけどね?


 それにしても。


「やっぱ可愛い顔してんだよなぁ二菜って……」


 長い睫毛、整った鼻梁に桜色の唇……そしてそれがバランスよく配置された、まさに美少女。

 そんな彼女が、今はあどけない顔で、俺の腕の中で緩みきった顔をさらし、すやすやと眠っているんだからたまらない。

 二菜が眠っている姿なんて、この数ヶ月の間に何度も見たけど、こうやって安心しきった表情を見ていると、なんともいえない愛しさを感じるというものだ。



 枕元にある時計を見ると、まだ朝の6時を少し回ったあたり。

 もう少し、このままゆっくりしていてもいいだろうと二菜の柔らかな髪に指を通し、さらさらとした感触を楽しんでいると、「んー……」と、少し掠れたような声が、二菜の口から漏れた。


 しまった、起こしてしまったか……と思っていると、閉じられていた瞳がゆっくりと開かれ、少しぼーっとした焦点の合わない瞳が、俺の顔の辺りを見て……。

 ふにゃり、と表情を緩ませたかと思うと、また瞳を閉じ、俺の胸元に擦り寄るように顔を埋めてきた。


 二菜はまだおねむのようだ。

 いつも世話になってるんだから、今日くらいはゆっくり休ませてやってもいいよな?


(それにしても……幸せだなあ……)


 絶対に自分しか見れない、自分しか味わうことのできないこの時間が、たまらなく幸せに感じる。

 腕の中の二菜の、暖かな体温をもっと感じたいと優しく抱きしめ、少し甘い二菜の香りを堪能する。

 ほんと、どうして女の子ってこんなにいい匂いがするんだろうな?

 昨日一日、俺と同じように温泉を楽しんでいたのに、不思議である。


 そうしていると、徐々に二菜の意識がはっきりしてきたのか、先ほどよりすこしハッキリした瞳で、俺の顔をじっと見つめてきた。

 そのまま、よしよし、と背中をなでてやること、数分。



「……お、おはようございます、先輩……」

「おはよう二菜、何か俺に言うことはないか?」

「え、えへへ……先輩の腕の中で眠るのは、とっても寝心地がよかったです?」

「なぜ疑問系」


 えへへ、と笑う二菜の頬が、少し色づいて見えるのはご愛嬌といったところだろうか。

 自分が何をやったのか冷静に把握しているであろう二菜が、俺に怒られるんじゃないか、ときょろきょろと目線をうろつかせながら、どう言い訳しようか……と考えているのが手に取るようにわかる。

 まったく、怒られるって思ってるならやらなきゃいいのに、ほんとバカだなこいつ。


 そんな二菜の頭を撫でながら、そっと目の上に口付けを落としてやると、さらに頬の赤みが増していき――。


「ふぁ……」

「なんだよ」

「きょ、今日の先輩はなんだか、あ、あれですね、甘やかしモードですね!」

「いやだったらやめるけど?」

「いえいえいえ! もっと! もっと甘やかしてください! さぁさぁ!!」

「あ、なんか一気にやる気なくした……」

「もー! なんでですかー!!」


 うーん、なんというか……調子に乗り出した二菜を見ていると、なぜか甘やかしたくなくなるというか……。

 なんでだろうな?


「さて、そろそろ起きるかー……帰る前にもう一回風呂入っておきたいし……」

「あ、ま、待ってください待ってください!」

「なんだ?」

「もーちょっと! あと5分! 5分でいいので!」


 5分て。

 なんてテンプレ会話。

 そんなこと言って、5分たったらもう5分……ってどんどん時間が伸びていくんでしょ!

 わかってるんだから!



「あと5分でいいので……だ、抱きしめてください……」


 ……俺の顔を見上げるように、潤んだ瞳を向けるのはダメだろお前、反則だろそれは……。


「お前はあれだな、ほんとズルいやつだな」

「え、な、なんでですか?」

「なんでもだよ」


 そういうと、改めて二菜を優しく包み込むように抱きしめてやると、嬉しそうに俺の胸に顔を埋めなおしてきた。

 そんな二菜を甘やかすように頭をなでてやると、「んー……」と小さく声を出しながら、もっともっと、とせがんでくる。

 なんかこうしてると、どんどん甘やかして、ふにゃふにゃにしてやりたくなる……けど、も!


「はい5分!」

「えー! もっと! もっと愛を下さい! 5分の延長を希望します!!」

「延長はオプションとなります」

「わかりました、払います!」

「払うな! ほらほら、朝飯の前に俺は風呂行きたいの! 二菜はどうすんだ!?」

「もーっ! いきます! いきますよぉ!! って頭ぐちゃぐちゃだし! ぎゃー!!」

「今更!」


 外を見ると、今日は気持ちよく晴れた、快晴。

 今日はもう帰るだけとはいえ、いい一日になりそうだ。



「先輩先輩!」

「ん、なんだ?」

「楽しかったですね、温泉旅行!」

「一泊する予定なんて、まったくなかったけどな……」

「くふふ! 次はどこ行きましょうかー♡」


 そうだなぁ……。


 次は、どこへ行こうか?




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