最強魔法『日本語』の取り扱いが難しい件
とにかく一度書いてみたかった設定です。
他の作品も同時進行でやって行きたいと思います。
よろしくお願いします!
俺、江本康夫(42歳)某編集社勤務の国語辞典担当。
静岡の田舎に生まれ、未だに実家暮らし。
小学校4年生の時、何故か急に『国語辞典』が好きで好きで仕方がなくなってしまった。
匂い、質感、何よりそこに書かれた文字。
興奮する!
彼女いない歴がそのまま年齢というごく普通の、今時のサラリーマンの俺。
実家は代々地元の豪農で、戦後のゴタゴタを悪用して広大な土地を手中にし、それを国に貸す事で生計を立てている。
いわゆる名家でセレブ、俺はそこの長男で一人っ子。
父は既に他界し、母と二人暮し。
実質家長である。
仕事は趣味の延長。
土日も大好きな国語辞典の編集を、自宅でまったりやるのが俺の至福の時。
土曜日で休みの今日も、編集中の辞書の資料を探しに、家の裏庭の隅に建つ蔵に入った訳だが、『神様』を名乗る爺さんと世界を救うか救わないかでもめているなう。
「へ?だれだって??」
「だから神様じゃよ。」
「ああ、そういう感じの人ね、、、ちょっと待っててね、おまわりさんとお話ししてくださいねー。」
「無駄じゃよ、スマホは通じないよ。
結界を張ったからな。」
「ああそう?かなり痛いファンタジジイだな、、、あれ?本当に圏外でやんの!」
「誰がファンタジジイじゃ!神様だって言ってんべ?」
「まあ座って茶でも飲みなさいよ。」
「ありがとうございます。」
「いやいやいや、どこからお茶を出したの?」
「そもそも鍵の掛かった蔵にどうやって入ったのさ!」
「神様だもの。」
妙に落ち着いた爺さんの雰囲気に観念した俺は、とりあえず爺さんの話しを聞くことにした。
「なあ康夫よ。」
「随分と馴れ馴れしいじゃねーか、ってなんで名前を知ってんだよ!」
「まあいいわ、いちいち突っ込んでいたらキリがない。」
「お前、ガキの頃から国語辞典が好きじゃろ?変態的に。」
「一言多くね?まあその通りなんだが。」
「それな、ワシが間違えて与えた能力のせいなんじゃ。」
「能力?」
「特別な力じゃよ。」
「今度は異能かよ!割と若い感じにぶっ壊れてんだな。」
「その能力な。」
「何気に二回スルーしたよな?」
「わかった、もう突っ込まない!聞く、聞きますよ。うんそれで?」
「この世界の裏側の世界のお前に与えようとしたんじゃ。」
「あの日は二日酔いが酷くてな、繋げるチャンネルを間違えてしまってな、コッチの世界のお前にあげちゃったわけよ。」
「チッお次は異世界モノか、なんだよ二日酔いって、キャバクラで弾けちゃったってか?」
「弥生ちゃん可愛かったなぁ。」
「ベタベタの源氏名じゃねーか!」
「いいよ弥生のはなしは!続きを話せって。」
「まったく今時の若いもんはせっかちじゃなあ。」
「そんなんじゃから未だに嫁さんどころか彼女もいねーんだわ!」
「放っとけや!若くもねーしな!!」
「あーもう、つーづーきー!」
「わかったわかった。」
「改めて自己紹介をするとじゃな。」
「言語、地球極東アジアユーラシア部門日本担当」
「これがワシの肩書きじゃ。」
「はあ、それで?」
「なんじゃリアクション薄いのう、まあいいわ。」
「コッチと向こうの両方の日本に言葉を授けたのがワシなんじゃ。」
「文字を考え出したのはお前達人間じゃがな。」
「、、、。」
「しかし裏の世界では、コッチにはない魔法があるんじゃよ。」
「生活水準は大して変わらんがな、コッチの科学や化学が、魔法に置き換わったと理解して欲しい。」
「、、、、、、、、。」
「今から千年程前にな、向こうの世界の魔力が暴走してな、、、って聞いとるのか?!」
「なあ爺さん、その話し長いの?」
俺はいつの間にか用意されたコタツでお茶を啜りながら、せんべい片手に聞いてみた。
「なんじゃ、コレから盛り上がるんじゃ!」
「あ、何それ!」
「光を失った目で見るのやめてくれる?」
「爺さんがどうやってこの蔵にはいったのか? その点を除いては神、異能、異世界と、およそ聞き流して構わない内容だけじゃん? どうせこの後『転生』とか言い出すんだろ? いいよ聞くよ、全部話してスッキリしたら帰ってくれるかな?」
「あ、信じてないな!?」
「当たり前だ!」
「ふぅ、仕方ない。」
「ちょっとお前の愛用の国語辞典を貸してみろ。」
「汚すなよ。」
そう言うと俺は、上着の内ポケットに入れてあった辞書を爺さんに渡した。
「肌身離さずってか。」
「本書は部屋に大切に保管してあるよ。」
「それは読書好きが文庫本を持ち歩いているようなものだよ。」
そう言うと、爺さんは急に眉間にシワを寄せて真剣な表情で俺の目を見ながらこう言った。
「悪い事は言わん、あちらの世界へ行く時は必ず本書を持って歩きなさい。 これではいざという時に用が足りないかも知れない。」
そう言うとペラペラと辞書のページをめくり始めた。
「おいちょっとまて。」
「なんじゃ?」
「あっちの世界へ行ったら? 」
「うん?」
「俺が行くのか?」
「他に誰が居るんじゃ。」
「はあ?! おい爺さん、もう付き合いきれねー、頼むから帰ってくれ!」
「いや、俺が出ていくわ! おまわりさんと納得行くまで話しをするがいいよ。」
「結界を張ったと言ったろう? 出られないよ。」
「とにかく話しを全部聞くまで開放はいたしません。」
本当だった。
出口の少し前、何も無い空間に俺の身体は遮られ、まるでそこに壁でもあるかのように前に進む事ができなかった。
ジジイに閉じ込められたのである。
仕方が無いので、ジジイの言う事を聞くことにしたのだ。
要約するとこうだ。
向こうの世界では昔の魔力の暴走で文字が失われたらしい。
というか、文字を読む能力を持つ者が極端に少ないそうだ。
世界中に魔力は溢れているが、人によって魔力を扱う力に差があるんだと。
で、文字を読むとなると魔法使いになれる程の魔力を持ち、かつ操る事の出来る優秀な人材が、死ぬより辛い修行をした結果ようやく読む事が出来るらしい。
そしてそんな世界だから文化の継承が上手く行かず、文明そのものが退化して来ているらしい。
おまけに魔力が暴走した歴史的事件を堺に魔物が溢れ出るようになったんだそうな。
そこで俺の能力を使って、魔力が暴走した原因を探り、原因を取り除き、世界を救えと言うわけだ。
さっきジジイが俺の能力を実演してみせたが、簡単に言うと
辞書を開く→文字を選ぶ→文字の持つ意味を強くイメージする→文字を音読する→文字が意味する現象が起きる
という事らしい。
ちなみにジジイが辞書を開き「点火」と言ったらロウソクに火がついた。
すげーじゃねーか。
なぜ魔力の暴走を止めなければならないかというと、平行世界の中でも繋がりが深い姉妹世界であるコチラ側とのバランスが崩れて、アチラかコチラか、下手をしたら両方の世界が崩壊する可能性があるそうで、そうなるとジジイは責任を取らされるんだと。
だから、アッチの世界の俺に異能を与えて世界を救おうとしたが、酒が原因でやらかしたと。
「オイ!」
「なんじゃ?」
「ジジイ、全部お前のせいじゃねーか! 自分で世界を救えばいいだろうが!」
「不介入の原則があってな、ルール上それは出来ないんじゃ。」
「それにさっきも言ったが、言葉を与えたのはワシじゃが、文字を考えたのは人間じゃ。 直接ワシが文字を取り戻す事は出来ないんじゃよ。」
「あっちの世界で他のヤツを探せばいいだろうが?!」
「いないんじゃよ。」
「何?」
「世界を救う力を授けるのに適した人間がお前しかいないの!」
「じゃあ俺の異能をアッチの俺に入れ替えればイイだろ?」
「能力はお前の身体に深く溶け込んでおる。 取り出して移植をするとなると、お前さんを二度と元に戻らんぐらいバラバラにする必要があるんじゃが、それで良いか?」
「やります!世界を救います!」
こうして俺は世界を救う事になった。
読んでくださってありがとうございました。
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