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竜の落とし子 ~没落少年が最強へと至るまでの英雄譚~  作者: 矢立 まほろ
○ 第2部 -王の奪還編- 1章 『ルーン侵攻』
66/153

 -6 『決起』

     ◆


 ミレンギがシドルドで息を潜めている間にも、ファルドを取り巻く情勢は刻一刻と変化していた。


 税収を緩めたり、内乱によって頻発した野盗などを積極的に討伐したりと、献身的な政策を多く行い、人々の信心を着実に得ていった。


 通商を盛んにさせるために東方や北方に伸びる街道を不整地が少なくなるよう整備したり、更には軍備の強化、攻城兵器などの拡充が計られた。


 決して財源に余裕のある国情ではなかった。その出所はかつて商人としても活動していたグラッドリンドの懐からか賄われたという。その金の流れは不自然なほどに膨大だったが、国勢が良くなることに疑問を呈する人間は現れなかった。 


 国が好転していっている。

 今ではそう口にする民も少なくはない。


 しかしそれからしばらくして、東の軍事国家ルーンにて動きが見られたと伝わった。


 ファルドとの国境近辺の町にて兵を集合させているとのこと。その様子から、ついにルーンが本格的な侵攻を企てているのではないかという憶測が市井に広まっていった。


 そこでノークレンは、民衆に向けてこう言い放った。


「わたくしはファルドの皆さんを守りたい。けれど、わたくしたちの平和を乱す者が、今も牙を研いでこちらを窺っています。彼らが存在する限り、真の平和は訪れませんわ。みなの者、剣を取るのです。あの東方の逆賊を討ち果たし、この国に本当の平定をもたらすのですわ!」


 それは調子付いた心を煽る、決起を促す声であった。


 こうして気がつけば、クレストによる戦争状態の継続に苦を呈して国民は、ノークレンによる更なる戦争へと誘導されていた。


 ノークレンが掲げるは一点集中の短期決戦。


 ほとんどの兵力を集めてルーンに侵攻。

 そのまま一気にルーンの中心にまで攻め込み、ルーン王ガセフを討ち取る。


 思えば政権発足時からノークレンが推進してきた軍備の拡充も、全てこれのためだったのだろう。王城の常駐兵の数割を国境付近に投入するほどの徹底振りである。


 国民の前に立ち鼓舞するノークレンの横で、更に煽るように、側近として王を補佐している男グラッドリンドが猛々しく声を上げる。


「今こそ我らの手で真のファルドを掴み取るのである!」


 その激励が国民を奮い立たす。


 ミレンギたちが一度は勝ち取った一瞬の平和は、しかし何も変わらず、より大きな激動となってこの国の有り様を変えようとしていた。


     ◆

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