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竜の落とし子 ~没落少年が最強へと至るまでの英雄譚~  作者: 矢立 まほろ
○ -エピローグ- これからの世界
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  『静かな世界』

 人間と竜の戦争は、かくして一日も経たずにして終わった。


 その終結の立役者となった少年、ミレンギ。赤竜と呼ばれる竜の国の代表者を率いて凱旋した彼は、人々の前で、正式なる竜との国交を宣言した。


 竜という存在の公への情報開示。

 しかしまだ全てを知らせきるには国民の感情整理が間に合わない。今回の竜との戦争は、予想よりもずっと被害の少ないものだったが、それでも勇敢に命を落とした者もいる。突然現れた竜に対して恐れを抱くものもいる。


 そんな人々の感情を落ち着かせるためにも、竜の情報は全ては明かされなかった。


 その最たるものとして、悠久の大樹の存在は極秘となっている。それはおそらく新たな争いの火種になりかねないと予想したからだ。


 そこで、ノークレンがある提案をした。


「竜の国を聖地にいたしましょう」


 それは、ずっと昔から竜神への信仰を続けてきた彼女らしいものだった。


「竜の国を、竜神様の信仰の聖地とするのですわ。聖地は不可侵。そこは神聖なる場所。間違ってはいませんわ」


 しかしとも暮らす竜人を神をあがめれば、それはそれで立場が対等ではなくなってしまう。そのため、竜信仰の最たる偶像はかつて存在した純潔の竜を。絶滅してしまった彼らを悼み、今の人と竜が共に暮らせている融和を尊ぶという思想へと移り変わっていった。


 こうして悠久の大樹は竜と、そして人間側の国を纏める一部の者にのみ知られることとなった。


「これから少しずつ理解しあっていって、やがて何の隔たりもなくなれば」


 そうミレンギが言うと、アイネが手厳しく言葉を返す。


「そうならぬようにせいぜい人間たちを見張っておくんだな」と。


 まだどこか不服そうにしていたアイネだったが、ミレンギが強く頷くと、まんざらでもなく頬を緩めていたのだった。


 こうして新しいファルドは始まった。


 人と、竜の国となった。

 二つの種が混ざり合い、これから新しい歴史を紡いでいく。


 その行く末は誰にもわからない。たとえ竜にだって。けれどだからこそ希望がある。伝承とは違う、まだ決まってない未来へ。


 ミレンギたちは、その新たな一歩を踏み出していった。


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