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コンクール

部室に集まった皆の前で中原はポスターを机に広げた。


『全日本写真展~高校生の部』


中原以外のメンバーはキョトンとしているが、そんなことはお構い無しに中原は口を開く。


「驚いたか?」


「驚いたって何がです?」鈴木は中原に質問返しをする。


「ポスターの右下の名前を見ろ」全員は言われるままにポスターの右下に目を向ける。


銀賞「若葉の芽生え」青木博一(県立富豊高等学校)


「え!?」一同は一斉に驚き青木を見る。


青木も身に覚えが無く、中原を見る。


「ふふふ……部員の写真を全員分出展しておいたんだ」ニヤケながらVサインをしてみせる中原。


「で、でも、どの写真を出展?」慌てる青木の肩に手を乗せると「まぁ明日見に行こうじゃないか」と笑顔で交わされた。


「青木すげーじゃん!!」高柳は青木の肩を掴み喜ぶ。


「うん、青木君凄いよ!」由井も鈴木もはしゃいでいる。こうして部の活動一環として翌日に出展されている写真を見に行くこととなった。



待ち合わせの駅で集合して展覧場へ向かう。入口で学生証を提示して中には入ると学生や大人達が大勢写真を眺めている。

銀賞の写真は全部で3つあり、青木の写真になぜか多くの人が魅了(みりょう)されているように思えた。


「この写真なんか恋愛のもどかしさを感じるよね」


ヒソヒソ話で話す女子高生達。青木は写真を我先にと見る。チューリップ畑に映し出された由井の写真がそこにあった。

デジタル一眼レフの画面からでは分からなかった、空の色、由井にピントを合わせたせいか、少しボケた色とりどりのチューリップ、由井の服を(なび)かせる風、それぞれが一枚に納められていた。


「これが俺の写真!?」心の声が思わず口から出る。


中原は青木の肩をポンと叩くと


「どうだ?自分の写真が自分の思いのまま写し出されていたか?」


間髪(かんぱつ)いれずに「わかりません」と返答する。


クスッと笑うと「まぁいい、写真を見てどう思うかは人それぞれだからな」


写真を見たまま立ち尽くす青木に由井が声をかける。


「青木君って本当にすごいよね。こんな写真が撮れるなんて」「え……」青木は驚き由井の方を振り返る。


写真に映る姿よりも暖かみがある由井の笑顔がそこにはあった。青木はこの時、由井が好きなんだと実感した。展覧会場は金賞の写真よりも銀賞の青木の写真の話題が多いくらいだ。


「なんかすごいよね」他人行儀(たにんぎょうぎ)のような感じで鈴木は(つぶや)く。


「まぁな、けどあいつらしいっちゃあ、あいつらしいけどな」高柳も鈴木に同調するかのようだ。



写真を見終えた皆は休憩を()ねた昼食をとりに近くのファミリーレストランへと向かった。

各々(おのおの)が好きな物を注文を終えると写真の話で盛り上がる。恥ずかしがる青木を他所(よそ)に、皆は青木をからかいつつも祝福する。青木も照れながら中学の頃には想像も出来なかった現在(いま)が幸せで仕方ないように見えた。



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