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新学期

青木達もニ年になりクラス替えの結果、青木だけが違うクラスとなってしまう。


愕然(がくぜん)とする青木を見て励ます三人。青木は三人と放課後部室で会う約束をして新しいクラスに入った。


見渡す限り同じクラスだったやつらは何人かいるものの、親しく会話をする仲でもなく、青木は席に座り窓の景色に目を向ける。


外を見渡(みわた)しても山と畑が広がるうんざりするほど変化のない風景だった。その時、前の席に座る男子生徒が視界に入る。


「よぉ、お前もこのクラスか」


声に驚き思わず目を向けるとバツの悪そうな顔をしている竹田がいた。


「あぁ」


青木は無愛想(ぶあいそう)に返事をすると竹田は目を合わせず話を続ける。


「そ、その、一年の時は悪かったな……」


竹田の意外な言葉に少し驚いた顔をする青木。


「おまえ……由井と付き合ってるの?」


唐突(とうとつ)な質問に青木は思わず顔を上げる。


「な、なんだよいきなり、冷やかしなら止めてくれよ!」


青木は驚きと動揺から思わず大きな声を出した。


「いや、冷やかしじゃない、真剣に聞いてるんだ」


竹田の目は先程と違い、いつになく真剣に思えた。


「別に付き合ってはいないけど、それをお前に言ってどうなるんだ?」


竹田は少し頬が(ゆる)むと「そっか、俺さ由井が好きだから」と軽い笑顔を見せた。


竹田から(はっ)せられた言葉は青木の心に突き刺さった。竹田は青木の顔色などは(うかが)わず続ける。


「俺、二年から写真部に入ろうと思うんだけどいいか?」


青木は少し不満な顔をする。


「どうして俺に聞くんだ?」


「いや、お前が写真部の部長だからだよ」


「え?俺が?」青木の驚いた顔に驚く竹田。


「部活動紹介パンフレット見てないのか?お前の写真が表紙だぞ……」


呆れ顔の竹田だったが、青木に入部届けを手渡す。竹田と揉めた原因を知っている皆はどう思うのだろうか、由井は傷付かないだろうか、様々(さまざま)な思いが青木の頭の中で試行錯誤(しこうさくご)する。


「まぁ動機(どうき)不純(ふじゅん)だけどやるからには真剣に取り組むから考えておいてくれ」


そう言い残すと席を座り直し正面を向いた。


放課後、部室では竹田の入部をどうするかの話し合いが行われた。高柳、鈴木は猛反対(もうはんたい)していたが、由井は部員が増えればという理由から賛成だった。


由井の賛成を無下(むげ)にはできず、結局入部を認める形となった。

翌日、竹田に入部を許可することを伝えると表情から目に見えるほど喜んでいるのがわかった。


そして放課後。


部室では重々(おもおも)しい空気になると予想していたが、竹田が全員に頭を下げこの一件は終わりを迎えた。

そして写真部にとっての一大イベント、新入生歓迎会に向けての準備が始まる。写真部には三年生がいないため少々の不安はあったものの、中原の残した資料には各催事(かくさいじ)の細かな資料までもが残されていた。


「すごい先輩だったな」


資料を見て感心(かんしん)する高柳。中原は一人で部活動の(もよお)しを考えていたのかと思うと(あらた)めて中原の存在の大きさに気付かされる。青木も部長として何か考えなくてはと過去の資料に目を通す。文化部系は地味の印象がどうしても(ぬぐ)えないので、そこを払拭(ふっしょく)したいと考えていた。


「そうだ!」


青木は何かを(ひらめ)き皆を呼んだ。


「それいいじゃん!」


鈴木もノリノリで青木の提案に賛成をする。


「あ、青木君がそれでやるって言うのなら……」


由井も少々(しょうしょう)仕方ないといった感じではあるが、渋々(しぶしぶ)と納得している。


「なんか部長って感じになってきたな」


高柳もニヤケながら青木の肩を叩く。竹田も少しずつではあるが、写真部の部員として溶け込んできていた。こうして、写真部は新入生歓迎会に向けての準備(じゅんび)を着々(ちゃくちゃく)と進めていった。

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