攻城戦 1
あれから2週間みっちりと各自戦い方を研究していた。
楓とメイド達は既にステータス的な成長は無いがそれ以外の三人はだいぶステータスも伸びていた。
「よし、今日はこの辺にしておくか」
「今日は早いね。僕はまだ戦えるよ?」
「いや、攻城戦は明日なんだ。今日はもう終わりにしよう」
攻城戦の場所は王城の訓練場らしい。明日9の鐘が鳴る頃に馬車の出迎えがあるらしい。
今朝、手紙が送られてきたから間違いないだろう。
「ご主人様、私達も明日は出場してもいいんですよね?」
「アウラそれ今日で10回目だぞ?何回も言ってるけど君達にも出てもらうつもりだ。迷惑かと思うがよろしく頼む」
アウラとはメイドの一人である。作戦会議の時にメイドも出場させる事を決めてから一緒に訓練をしているが迷惑だったかな?
まぁ、確実に仕事は増えてるからな…
『多分、メイド達は嬉しいんだと思いますよ?』
「いえ!私もクランの一員として、そしてご主人様の為に戦えてとっても嬉しいです!」
『ほらね?』
メイド達の喜びとは、楓の役に立つ事。これが、普通に雇ったメイドなら先程楓が言った様に余計な仕事が増えた事に不満を持つ者もいるだろう。
だが、セリスやアウラ達は違う。まず彼女達は楓に召喚されて存在する者達だ。
自分のご主人様と一緒に戦えるなどこのメイド達からすればご褒美なのだ。
誰一人として余計な仕事が増えたなど思う者はいない。
「そうか、なら明日は頼むな。終わったら俺から夕食をご馳走しよう」
「え?楓くんが作るの?」
楓が作ると知って一番反応してきたのは日向だった。まぁ全員楽しみといった表情をしているのがバレバレなんだが…
『マスターはクランメンバー全員の胃袋をつかんだ様ですね』
みたいだな。美味い食事は世界を救うかもしれない。
「あぁ、明日攻城戦が終わったら俺のフルコースをご馳走しよう」
「旦那様のフルコース…」
「なんかやる気が出てきたね。明日は僕も活躍しないと」
日向達はとても嬉しそうだ。こんなんでやる気が出るのか…
「あ、あのご主人様。それって私達もですか?」
アウラが聞いてくる
「勿論だ、なんで日向達にご馳走してお前達にご馳走しないなんて結論に至るんだよ。俺がお前達をいじめたいとでも?」
「い、いえ!ありがとうございます!」
アウラ達メイドも嬉しそうだ。さて、明日は何を作ってやろうかな。
『マスターのフルコース、私も食べてみたいです』
ナビちゃんは無理かな…
『食べたかったです…』
そのうちなんとかしてあげるから泣かないで下さい。
そんなわけで攻城戦の前日は全員のモチベーションが最高迄上がっていたのだった。
そして、当日。最近日常化している朝起きたら日向かミルがいるのを確認する。
「今日は二人か…」
楓は思わず苦笑する。なんだかんだ言っても自分達を賭けの対象にされるのは不安なのだろう。
楓たちが百パーセント負ける事がないと言っても、だ。
楓は寝ている二人の頰に軽くキスをしてから二人を起こさない様に起き上がる。
「それにしても、慣れって凄いよな」
最初は二人と一緒に寝る事さえ出来なかったのだ。今は頰にキスさえあまり恥ずかしくない。
『ゴールイン迄あと一歩ですね』
それ、前も言ってたよな。まぁそのうちな。
今、ミルのお父さんが三人の結婚式を計画してくれているらしいからその後位かな。
楓は無音で着替えを済ますと何故か無性に日の出が見たくなったので屋根の上迄ジャンプする。
「あ、おはようカエデ」
屋根の上に辿り着くとそこにはアルがいた。
「よう、珍しいな。お互い」
「そうだね。何故か無性に朝日を見たくてね。たまには早起きもいいかなって」
「本当は?」
「カエデが来そうだったから待ってた」
だろうな。こいつに限って朝日が見たいとかないだろうしな。
「そっか、んでどうした?」
「あまり緊張しちゃダメだよ?ヒナタとミルも結構緊張してるみたいだけどカエデも結構穏やかじゃないよね」
アルはからかう様なトーンの声で話しかけてくる。
「まぁな、まず日向とミルを賭けにされるのが気に入らない。万に一つも無いが二人がそれを考えてビクビクしてるのを見ていて穏やかでいられると思うか?」
楓は決して二人の妻の前では出さない様な黒いオーラを出す。
「分かるよ、僕は二人の夫じゃ無いしカエデとは違う感情だけど仲間として二人が怯えているのは気に入らないね」
アルは楓達を仲間と見ていてかつ年齢的にも孫の様にも見ている。楓の感情とは少し違うが似ている様な怒りをアルも当然抱いていた。
「今日は頑張って勇者達に恥をかかせてやろう」
楓はいたずらをする少年の様な笑みでアルにそう言う。
「そうだね、今から楽しみだ」
アルはそんな楓に向かって同じ様な笑みを返す。
その後、二人は何も話さず日向達が起きる迄屋根の上で朝日を眺めていたのであった。
〜楓の部屋〜
「絶対に勝とうね!」
「勿論です、勇者達に目にもの見せてあげましょう!」
とっくに起きている二人は楓のベッドの上でやる気に満ちた声で「えい、えい、おー!」と掛け声をするのであった。




