勇者達との初対面 4
あの後、案の定他の貴族から他にないのか聞かれたが全て断っておいた。
そして、運命の時が来た。国王であるバルバトスが解散宣言を行い勇者達は先に会場を退出していた。その時に楓達の方向を向いてにやけて居たのは勘違いではないだろう。
「カエデ様方。こちらになります」
どさくさに紛れて帰ろうとしたらメイドに入り口で見つかってそのまま部屋へと連行された。
「クラン『無限の伝説』入ります」
連れて来てもらった部屋の前で楓は最後のため息と息を吐いてからそう言いながら部屋に入る。
「やぁ、さっきぶりだな」
王様はいつも通りの堂々とした声で楓達を出迎える。
そして、そこには勇者達もいた。ソファーの都合上代表3名ずつしか座れないので他の人は後ろに立っていた。
なのでその対面に堂々と座りに行く。こちらは日向、楓、ミルの順番で椅子に座る。アルは楓の後ろで手を後ろに回してニコニコしている。
何人かブルっと身体を震わせていた。コイツ、地味に威圧使ってやがる…
「久しぶりだね、楓」
そう、話を切り出したのは学級委員長である、須藤佐助だ。
「久しぶりだな。んで?俺らに用ってなんだ?」
あくまでも楓は来てやったという事を前提に話す。実際そうなのだが。
「あぁ、佐倉 日向とミルテイラ・デスハイムをこちらに引き渡して欲しいと思ってね」
まぁ、ありきたりすぎて逆に面白くないなこのパターン。
「あのな…引き渡せって2人は俺の妻なんだが?」
楓はもう、話自体意味のないものと判断し適当に流す。
「でも、まだ婚約だよね?正式な妻じゃない」
「だとしても、だ。まずなんでお前達に渡さなくちゃならない」
「そもそも、君は勇者候補から外れた身だろ?その2人も君なんかより僕達の誰かの妻となった方が幸せだと思うけどね」
まぁ、また暴君な。さっき俺が言った事聞いてなかったのかな?
「それは二人が決める事だ。お前らが決める事じゃない」
「じゃあ、二人に聞くよ、君達は僕達と一緒に来るべきだと思うよね?」
『マスター』
わかってる。佐助の左の男、誰だったか忘れたがそいつが魔眼を発動しやがった。
「わ、私は…」
「レジスト」
「は!今何が…」
ミルは一瞬意識が飛んだ事に気が付いて戸惑う。そして、
「お前ら、今何したか分かってるんだろうな?」
楓は静かにキレる。そう、あくまでも静かに、だ。
「ば、バカな。レジストされた!?」
魔眼を使った男はミルも日向も誘惑の魔眼にかかってない事を知り戸惑っている。
尚、国王であり、ミルの父親であるバルバトスはずっと沈黙を守っている。このやり取りに口出しをするつもりはないみたいだ。
「日向とミルに誘惑の魔眼を使って引き込む、か。そんな事させるわけ無いだろ。それとさっきも言ったが二人を渡す気はないし手を出してくるなら叩き潰すぞ?」
少し、威圧を混ぜてそう勇者達に言う。
「では、攻城戦で決めればいい」
ずっと沈黙を守ってきた、国王がそう提案してくる。久しぶりに聞いたなそれ。
「いいでしょう。僕達が勝ったら佐倉さんとミルテイラ様をいただくという事で」
「それならこっちが勝てばどうするんだ?一方的な賭けなんて成立するとでも?」
「するさ、だってそうしないとこの国潰れちゃうから」
なに?
「もし、ここで交渉決裂したら僕達はこの国で暴れ回らないといけない。それも教会の精鋭と、ね?」
「おかしな話だ。お前らは魔王を討伐する為に召喚されたんだろ?王都を壊してなにをする?」
「それは知らないよ。で、どうするの?」
「そんなものうけるわけが…」
その時、日向とミルが悲しそうな顔をしていた。
自分たちのせいでこの国の人たちの行き場がなくなる、と。
「いいだろう、受けてやるよ。攻城戦を。そのかわりもし俺たちが勝てば金輪際二人を仲間に引き込もうとするな」
「いいだろう、どうせ僕達の勝ちは決まっている事だしね」
「決まりだな。この攻城戦は国王である私が見届けよう。本来なら攻城戦は他の人の参戦も許されるが今回は非公開であるが故それは無しにしてもらう。純粋にクランメンバーだけ戦ってもらう」
との事だ。
「いいでしょう。38対4、数も力も圧倒的。負ける要素がありません」
それだけ言い残し勇者達は部屋を退出する。
「はぁ〜やっちまったー!」
楓は勇者達が全員が退出した後に大きな声でそう叫んだ。
「でも、面白そうだよ?」
「そうだな、ボコボコにしてやる。おい二人ともしょんぼりしてないで気合をいれろ!これから作戦会議だ」
楓は自分達のせいでと思い込んでるおバカな嫁に喝をいれる。
「ご、ごめん」
「また、ご迷惑を…」
「ミル、ヒナタ。二人とも聞きなさい。今後、カエデと共に歩んで行けばこういう事は当然起こってくるだろう。その時に君達二人はずっとカエデに謝り続けるのか?それならそもそも結婚しなければいい」
「「…!!!」」
意外と辛辣な言葉をかけてきた国王に二人は驚く。普段この人は身内にはとても甘い。
まぁ、それほど楓達四人の事を気にしていると言えるのだが…
「今、君達がする事は後悔じゃない。カエデと共にどうやって切り抜けるか考える事だ。分かるね?」
「は、はい」
「そうですね、絶対に勇者の思い通りにはさせません!」
バルバトスは最後、二人に優しい顔をしながら、諭すと二人の表情は明るくなりやる気に満ちる。
「凄いね、ミルのお父さん」
「だな、流石国王だ」
男性陣の二人はバルバトスの話の持って行きかたを素直に称賛するのであった。




