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楓の世界 2

アルはリーパーを構えてこちらに突進してくる。二人の間の距離はたった30メートルしかなかったのでアルは一瞬で楓の懐に潜り込もうとする。


「まぁ、させないけどな」


楓はまだ自分の剣をストレージから出していない。要は丸腰だ。


なので楓は魔法を使ってアルに自分を捉えさせない様にする。


「なに!」


アルは楓に武器が届くあと一歩という所で見えない壁にぶつかった。


「障壁?いや、これは風の魔法で見えない壁を作っているのか。道理で当たった瞬間にダメージが来たわけだ」


アルは一瞬で楓のネタに気付く。


「でも、この位なら…ファイアブレス」


そう唱えた瞬間アルは大きく口を開き火を放出する。


それは本来ドラゴンにならないと使えないもの。だがあいにくアルは伝説龍だ。威力は格段に落ちるが人間の姿でも難なく発動する事が出来る。


「へぇーブレスも撃てるんだ」


楓は感心しながら空を飛ぶ。全くダメージを受けていない。


「んー、やっぱり届かなかったかー」


「まぁな、でも普通なら焼け焦げて死んでるだろあの威力」


「それでもカエデには届かなかったね」


などと二人とも軽口を叩いているがお互い鎌と剣で打ち合っている。


楓はさっきのブレスを回避した時にストレージから剣を出していた。


「初めてまともに剣を交えられる気がするよ…」


「それは…まぁ、この武器も楓に作ってもらってるからね。さぁどんどん行くよ!」


アルはそう言い残し猛攻撃を始める。アルの鎌は自分にはそこまで重さは感じないが受ける方は約200キロもする鎌を振り下ろされているのだ。その衝撃は耐え難いものがあるだろう。楓以外ならば…


二人は5分間ずっと武器を打ち合っていた。攻めているのはアル、受けに回っているのは楓だ。だが、楓にはまだまだ余裕があった。


「アルー落ち着け、だんだん攻撃が雑になって来たぞー」


などと楓からアドバイスまで飛んで来る始末。


アルは悔しさと面白さから更に鎌を振るうスピードを上げる。



「凄いね…」


「ですね、あれがアルの全力ですか。いやドラゴンにはなっていないので全力ではない様ですが私達では一瞬で負けてしまいますね」


「だねー、しかもそれを楓くん余裕そうに捌いてるし…この結界のおかげで私達は何ともないけど多分これがなかったら大変な事になってるよね」


「そうですね。私達も頑張らないと!」


今、椅子に座って日向とミルは楓とアルの模擬戦を眺めていた。参考に出来そうな所は生かしていこうと思っていたが二人の戦いが目で追うのがやっとなので全く参考にならない。


そもそもアルが力技しか使ってないから日向が参考に出来たのは一番最初の楓の風魔法の見えない壁位だ。ミルに至っては未だ何を参考にすればいいか分からない状態だ。



「下の二人の為に少しは工夫して戦った方がいいかな?」


「そうだな、じゃあ任せるよ」


「OK、じゃあカエデに面白いものを見せてあげるよ」


アルは自分の魔力を体に纏わせている。何をして来るのか分からないけど面白そうなのは確かだ。


「は!」


アルはそのまま直進してくる。だが…


「ほう、幻影か。ここまで魔力と闘気で存在を作るのは凄いな」


そう言いながら楓は後ろに剣を向ける。


「やっぱりバレたか…でもなかなか面白かったでしょ?」


楓にあっさりとバレたがそこまで気に病んでいないアルだった。もともと通じると思ってなかった為でもあるが。


「あぁ、今のは二人共に使えそうな技術だしな。じゃあ俺も」


楓は手を前に突き出す。そして…


「貫け」


一言だけ呟くと楓の手のひらから透明の剣が出てきてアルに突き刺さろうとする。


「う、な、なるほど。魔力をそのまま使ったのか。これなら魔法とは違うから魔力さえあれば誰でも使えるわけか。殺さずに気絶程度で済むのもいい点だね」


「だろ?今回はそこまで魔力をのせていないから軽く目眩がする位だろ?」


「あのね?そもそも僕が目眩をするレベルだよ?さっき気絶程度で済むって言ったけどこの威力でやったら普通の魔術師なら体内の魔力が暴走して死ぬからね?」


思わず突っ込む。そろそろ本当に楓に常識レベルを教える必要がありそうだ。


「あーそう?それより二人に知恵をあげるのはこの辺でいいだろう。そろそろこっちから攻めるぞ」


「あぁ」


アルはキタと思った。さっきまでは自分が攻めていたが楓から攻めて来なかった為、遊ばれている感がどうしても否めなかった。


楓から攻撃を仕掛けてくるのは願ったり叶ったりだっ

た。


「行くぞ」


楓は攻撃開始を宣言してからアルに向かう。最初にアルが楓に仕掛けた速度なんて笑えるような速度でアルに詰め寄る。アルもギリギリ反応出来たレベルだ。下の二人は何が起こったのか理解出来ていないだろう。


「う、これは、きついね…」


アルは楓の攻撃を凌ぐのに精一杯だった。隙があれば反撃をしようと思っていたがそんな暇は与えてくれない。


「終わりだな」


到頭アルは楓の攻撃に耐えられなくなり武器を手放しそうになる。その隙を楓が逃すはずもなく顔面にグーパンチをくらい勢いよく下に叩き落される。


勝負ありだ。


「いつつぅ、やっぱり楓はおかしいよ。でも滅茶苦茶楽しかったよ!久しぶりに全力で体を動かせた」


アルは満足そうだった。


「楓くん、アルお疲れ様!」


「旦那様次は私達です」


そこに楓の嫁である二人がやってくる。アルの次は日向とミルだ。


「よーし、かかってこい」


自分は魔王かなんかかな?と楓は思わないでもなかったが二人とも楽しそうに攻撃を仕掛けてくるのでやり甲斐があるってものだ。


その後はまたアルと戦い、それが終われば日向達と戦い、とサイクルを延々と続けていると5時間なんてあっという間に過ぎていった。


楓はなんで自分が一番動いているのだろうかと自問自答していたが3人共とても満足そうだったので良しとする事にした。

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