ランクアップ試験 3
楓たちは一睡もせずに、日向達はゆっくりとふかふかのベッドで一夜を過ごした朝、楓達は例の如く楓の料理スキルのお陰で世界一美味しい朝食を机を出して食べていた。
貴族でもこんな野営は出来ないだろうと思わされる振る舞いだ。
「いーなー。俺達もあんな朝ごはん食べてみてー」
「アイテムボックスの次は料理スキルかよ。まぁ、戦う技術はなさそうだしな。昨日も後ろの赤毛に守られてたし」
「だな、今日のノルマもあいつは無理そうだ。せいぜいパーティーでも組んで不利な狩りをする事だな」
自分達もパーティーで挑む事を忘れていた青年グループ三人であった。ただの僻みである。
「いやー、朝からこんなに美味しい料理が食べられるなんて最高だね」
「ですね、毎日旦那様が作って下さいよ」
「だねー」
「嫌だよ、何の為のエリス達なんだよ。たまにならいいけど毎日は無理だ」
「まぁ、たまにこれが食べられるなら僕はいいかな」
「そうですね」
「旦那様!たのしみにしておくね!」
もう三人共楓の料理にメロメロだ。料理は世界を救うかもしれない。
今度一日だけの屋台を出してみようかな。
『大変な事になるのでやめて下さい』
言ってみただけじゃん…
それから四人は1時間程朝食とおしゃべりをしてから集合場所に行く。
「おーおー、今日の狩りが楽しみだな。お前が恥をかくのが目に見えているぜ」
昨日アイテムバッグ云々で絡んできてたおっさんがまた絡んできた。日向とミルは嫌そうな目を向けていたが楓とアルはどこ吹く風だった。
後から恥をかくのは多分相手だろうから…と言うか楓とアルがそうする予定なので今はあまりリアクションをしない。二人の中で理由は違えどおっさんを許せないのは違いないので念話でカエデが前もってアルだけに作戦を伝えておいた。そうしないと楓が注意をする前にアルがおっさんの首を跳ね飛ばしそうだったからだ。
「面白そうな提案だね。僕は賛成だよ」
「ん?何が?」
「いや、何でもないよ」
アルが機嫌を取り直し楓にそう伝えるので日向は疑問に思い問いかけたが、楓が何も無さげに日向にそう伝える。
「日向、ミル。今回は訓練も兼ねて二人で森の中を探索してもらう。要はチームを2つに分けるんだ。何かあってもその指輪がまもってくれるから安心して狩ってこい」
「わかった!旦那様達よりも多く狩ってくるね!」
「そうですね!負けてられません!」
二人は楓の提案にノリノリである。こう言う所での勝負事は何故か二人共好きなんだよなー。
「アル、俺達はさっき言った通りで行こう」
それから楓はアルにこっそりと先程の作戦を伝える。
「よし、では今からこの砂時計の砂が全て落ちる迄にオークを15匹狩ってこい」
そう言って試験官は砂時計をひっくり返す。ちなみにあれは3時間経てば全ての砂が落ちるようになっている。
これは楓達にとっては楽かもしれないがソロの冒険者ではギリギリになるだろう。
「よっしゃ行くぞ!お前ら!」
そう言って一番最初に飛び出して行ったのは青年三人チームだ。なんだかんだであそこもパーティーを組んで攻略するみたいだ。
その次に魔法使いの男、そして日向とミル。そして楓達の前におっさん冒険者が行き最後に楓とアルがその後を追う。
「よーし、喧嘩を売ってきたんだからしっかりと買ってやらないとな」
「そうだね。龍に喧嘩を売る人族なんて滅多にいないから僕も張り切っちゃうよ」
二人は暗い笑みを浮かべながら森の中に入って行くのであった。
「クッソ!何でオークがいねぇんだよ!」
おっさん冒険者はあれからかれこれ2時間程森を彷徨っているがまだ2匹しか遭遇していない。
普通この森に入ると10分に1、2匹くらいの頻度で出現するのだが今は2時間で2匹である。明らかにおかしい。おっさん冒険者は時間が迫ってきて焦りつつ新たなオークを探し出す。
「カエデー、次は?」
「うーんと、あそこだな」
「りょーかい」
今、楓達は木の上にいる。そして楓のマップを使いオークを狩っていく。本来おっさんがエンカウントする予定のオークを…
「カエデも容赦しないねぇ〜」
「まぁ、喧嘩売られたからな。まぁ、そろそろ可哀想だから引き返すか。もう十分俺たちのは取れたろ」
「りょーかい。あれを最後にして帰ろうか」
そう言ってアルは最後にオークの首を鎌で刈り取るとそのまま流れる様に楓の後を追う。この2時間ずっとあのおっさん冒険者の後をつけてオークと遭遇する前に楓かアルのどちらかが先回りをして狩ると言うまぁ最低な行為をしていたのだ。
途中で、何頭かはおっさんにあげているが多分このペースならばおっさんは15匹の討伐は無理だろう。
「お疲れー。どうだった?」
「おう、俺達もしっかりと狩ってきたぞー」
楓グループと日向グループは集合場所で丁度会った。日向達も余裕で数を狩れた様だ。
「それで?旦那様はどんな悪巧みをしていたのかな?笑顔が黒いよ?」
「いや、何もしてないよ?な、アル」
「うん。僕達は目に入ったオークをほぼ全て狩っただけだから」
アルの意味深な言動に日向もミルを苦笑いだった。
「もう、旦那様もアルも程々にして下さいよ」
と、口では言ってるもののミルも少し楽しそうだった。こいつも喜んでるな絶対。
それから3時間が経過して、唯一おっさんだけが顔を真っ青にしながらオーク計7匹を提出してこの試験に落ちたのだった。
まだ、試験は続く。




