決闘なのです! 1
何だかんだで幸せなひと時を過ごしていた俺達であるが、そろそろ決闘の時間が迫っていた。
「じゃあ俺はそろそろ決闘の時間なので行かせてもらいます」
「うむ、終わったら一緒に夕食でもどうかな?」
普段、この王様本人から他人に食事の誘いなどしないらしいのだが、俺を誘っているのを見て侍女や執事の人は驚いていた。
「分かりました。それと今更ですがなぜミルの婚約を認めたのですか?」
頰にキス迄してもらって本当に今更であるが…
「勘だな。本来第二王女は他国とのつながりを強くする為に政略結婚をさせる。だがカエデがそれ以上のものになると感じたからだな」
その後ミルを少し見て俺に対してニカっと笑った所を見ると、それは嘘でやはり愛娘の意思を尊重させたかったのだろう。
そう感じ取りバルバトスに向かって俺も笑みを返すのであった。
「それより旦那様、副団長の件なのですが本当に大丈夫ですか?私のせいでこんなことになってしまってごめんなさい」
なんかもう旦那様が定着しちゃってるよ。
「さっきも言ったろ?お前らは俺が守るって。可愛い妻なんだから旦那は少々迷惑をかけられても妻が笑顔でいてくれたらお釣りが出るほどやる気が出るんだよ」
もうここは乗っておこう。これからはこうして生活していくのだから。もう、同じ過ちは犯さない。
「ありがとうございます、頑張って下さい」
「おう!」
「だ、旦那様!頑張ってね!」
「無理して使わなくていいぞ、まぁ、任せろ!」
「無理してないもん!旦那様!」
意地になって頰をピンク色に染めながらそんな事を言ってくる。なにこの可愛い生き物。
「僕は上で王様と見る事になったから二人は間近で見て来るといいよ」
アルは来ないらしい。俺達に気を使ってくれているのかな?いい奴だよ。
本当に良い仲間に囲まれているよな俺。
『マスターの力ですよ』
そうだといいな。
「訓練場ってこっち?」
「そうですよ」
「旦那様、こんな所で方向音痴はいらないよ」
マップを使っておくんだった…
訓練場に行くと例の副団長様はもう準備をしていた。武器の指定とか無かったけど各自持参なのかな?
「旦那様、あれ魔剣だよ」
「よく分かったねヒナタ、その本のおかげ?」
「うん!これ、宝物なんだ!」
ワールドアイテムですからね。結構日向の役に立ってる様だ。
「今度ミルにも何かプレゼントするよ」
日向だけでは不公平なのでミルにも何か考えておかないとな。
「本当ですか!ありがとうございます!楽しみにしておきますね!」
「ああ」
めっちゃ嬉しそうである。これは気合を入れて作らないとな。
『もう誰もマスターの勝ちを疑っていないのは流石ですね』
それよりあの魔剣は何か付与されてるのかな?
『はい、筋力増強だけですが…上級武器ですね。魔剣にしてはレアリティが低いです』
それなら俺は素手の方が良さそうだな。魔剣を壊すとまずいだろうし。
『素手でも壊しそうな気がしますが…』
それはしょうがない。
俺はそのまま時間になるまで軽く体を動かしていた。やる事がないのである。
二人は後ろの応援席で見ていてくれてるから良いんだけど、副団長はなんか最初に会った時以上に酷い顔をしていた。
今回の決闘は王様が見ている為不正は無理だろうから心置きなく戦えるな。
「カエデは副団長に勝てると思うか?」
「余裕でしょうね、副団長のプライドごとポッキリ折るでしょう」
今、応援席の主賓席では王様とアルが二人で話し合っていた。戦いの解説を王様がアルにお願いしたのだ。
「だがいくら権力で成り上がったと言っても副団長としての力は充分にある奴だぞ?国のナンバー2にそこまで?」
「えぇ何せこの僕ですら最初に会った時人一人なら余裕で気を失うレベルの威圧を放ったのにそれ以上の威圧で返されたのですから、僕もカエデの底を測る事は出来ませんよ」
「ほう、お前は強いのか?」
「まぁ、コレの種族的にもナンバー2なので」
そう言ってアルは腕だけドラゴンの鱗を纏わせる。
「なんと!?君は竜族か?もしや伝説龍だったりするのかな?」
「えぇ、そのまさかですよ」
「!?それでもカエデに勝てそうにないと?」
「えぇ、多分一撃で頭を吹き飛ばされるでしょうね、この武器もカエデが作ってくれたんですから」
そう言ってアイテムバッグからリーパーを出す。
「もう、驚くのはやめたよ。やはり私はとんでもない人物を娘の婿にした様だな」
「そうだね、多分貴方は本当に良い選択をしたと思うよ。この国が害される事はまずないだろうな。カエデに嫌われない限り」
「そうか、ならばミルにちょっかいをかける奴も私がしっかりと見張っておかないと大変な事になりそうだな」
「多分大丈夫だと思うけどもしミルやヒナタに何かあったらこの国は一瞬で消えるだろうね」
「恐ろしい奴だな。まぁ君一人でもそれ位は余裕だろう」
「まぁね、僕もカエデに言われたら手伝うからね」
「余程カエデに入れ込んでいるのだな」
「もちろん、一応命の恩人だからね」
それから二人は俺たちの試合が始まるまで一言も話さなかったが、バルバトスは一人でなんとしてでもミルとヒナタにちょっかいをかけるやつらを減らさなければいけないと考えているのであった。
そして決闘の時間がやってきた。
「これより決闘を始める。武器は自由、基本的にルールはないが観戦者に危害を加えるのは禁止だ。まぁ結界が張ってある為そう簡単には出来ないが、意図して危害を加えようとしても反則負けだ。勝敗はどちらかが降参または戦闘不能になる迄だ。なお、決闘での死亡は事故とみなされる為お互い気を付ける様に」
審判の男の人が俺と副団長の間に入ってルール説明をする。おい、武器持って来いとか言われてないけど?まぁ、ストレージがあるし元々使う気がなかったからいいけど。この審判も副団長とグルか。面倒臭い。騎士道精神はこいつらにはないのか。
「おや?君は武器も持たずにここにいるのかい?あいにく武器を取りに行く時間はもうないがね、ここで降参しておくか?」
などと抜かしてきた。
「ねぇミル、私たちずっと旦那様と一緒にいたよね?武器を持ってこいとか言われてた?旦那様はストレージがあるからいつでも武器を出せるけどもしなかったらこれってもしかしてずるだよね?」
「ズルですね、なんと小賢しい。それでも我が国の騎士団ですか」
日向もミルも怒りを露わにする。
「おや?カエデは素手でやるのかね?」
「多分武器の携帯の話を聞かされてなかったのでしょう。まぁ、多分カエデなら最初から素手でやるつもりだったでしょうが…武器を持つとやり過ぎてしまいますから」
「ほう、カエデなりのハンデという事か」
「カエデは武器を持とうが持たまいがあまり変わらないのでハンデとまでは言えないでしょうね」
「…」
流石にバルバトスも呆れ果てて黙り込む。
さて、カエデに喧嘩を売って尚不正をした副団長はこれからどんな姿になるのやら…
アルはカエデに正々堂々戦わない副団長に静かに怒っていたのだった。




