とりあえず冒険者になりたい! 1
日向さんは、意外と行動力があるそうです。
「は?」
「いや、私もあのなんちゃら教会? の人たちもクラスのみんなもあまり好きじゃないし。それなら楓くんについていったほうが楽しそうだし! ね! いいでしょ?」
ナビちゃん、大丈夫かな?
『まぁ彼女なら才能もそこそこありますし、性格も良さそうですから大丈夫でしょう』
「まぁ、いいけど日向さんは大丈夫なの?」
「もちろん! あとさん付けはなんかムズムズするし、話し方も堅いよ? それ地じゃないでしょ?」
「……よくわかったな。これでいいか? 日向」
「うん! これからよろしくね! 私が楓くんを守っちゃうよ!」
日向、ものすごいやる気である。
「あーあれな。あのステータス偽装なんだ。本当はもうすこし強いから自分のことは自分でできるし心配しなくても大丈夫だ」
「え、偽装とかできるの? すごいね! そーなんだ、だから弱いステータスだったのにあんなに平然としてたんだ。それじゃ、魔王とか倒しに行くの?」
「いや、今はそんな予定はない。とりあえず今日の宿代とかその他諸々のお金稼ぎだな」
ちなみに日向と話している間にナビちゃんとこれから必要なことを相談していた。
普通なら無理だけど並列思考のスキルが役に立った。
それでこれからの予定だがだいたいこんな感じになった。
・町の外には獣や魔物がいるからそれを適当に狩ってお金にする。
・冒険者ギルドで冒険者登録をする。
・日向のレベルを上げる。ちなみに俺はこの力を使いこなせるようにする。
と、こんな感じだな。そしてそんなこんなで町から離れて1時間くらいたったところの森の前で一旦止まる。
「そーいえば日向は魔法つかえるのか?」
「うん! なんか頭の中でイメージしたらできそうだったからやってみたら火弾っていうのができたよ!」
てことは火系魔法使いかな? ちなみに俺のあのへっぽこステータスのスキル欄にあった魔術は魔法の下位互換にあたる。
このスキルがなくても魔法は撃てないことはないのだが威力が格段に落ちる。まぁ知力と魔力が高すぎるとスキルも凌駕するため、その限りではないらしいが。
すべてナビちゃん情報なのでおれもこれから色々と試行錯誤しながらになりそうである。
「お、これは狼かな?」
日向と二人で適当に散策をしていると狼っぽいのが三匹俺たちの目の前に現れた。どうやらこれがこの世界に来てからの初戦闘になりそうだ。
「日向は一番右の一匹を頼んだ。俺は残りの二匹をやる」
「大丈夫? 私が二匹やるよ?」
「いや、大丈夫だ。一匹だけ頼む」
「おっけー!」
ナビちゃん。ステータスの制限の方よろしく。
『了解しました』
ーステータスーーーーーーーーーーーーーーーー
楠木 楓 L 1 / ∞
種族 ???
体力 100 / ∞
筋力 100 / ∞
敏速 300 / ∞
知力 50 / ∞
魔力 50 / ∞
幸運 50 / ∞
超スペシャルスキル
全知全能 レベル ∞
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まぁ狼二匹にはこんなもんか。
「よし、じゃあ行くか」
俺は気合をいれるとそのまま勢いよく目の前の二匹に向かって飛び出した。
初戦闘ということもあってかなり緊張していたようで、若干気合を入れすぎたのは内緒である。
「うわっ!」
勢いよく飛び出したのはいいが敏速300に体がついていかず、狼を通り過ぎてさらに30mくらい超えてしまった。
「これ慣れるの大変だな……っと。手加減をして……もう一回!」
先ほどの失敗を生かして今度は八割くらいの力で駆け出すとちょうど狼の目の前で止まることができた。
俺はそのまま大きく拳を振りかぶり狼の頭を目掛けて振り下ろす。
グシャァ
なんとも気持ちの悪い感触が手に伝わってきた。
この感触を例えるなら豆腐にパンチしてる感じだ。それがリアルの狼の肉バージョンで。
グロすぎて一瞬吐きそうになったが、なんとか踏みとどまることができた。
日向も近くにいるのであまりグロいのを見せたくなかったのだが、やってしまったものはしょうがない。
次から気をつけるとしよう。
でもあれだな。動物を殺してるのに忌避感があんまりないのはどうしてなんだ?
『マスターの全知全能のスキルの中に苦痛耐性や恐怖耐性がついているのでそのおかげです』
さっきからずっと思っているのだが、なんとも便利なスキルである。この辺はナビちゃんにスキルのオン/オフを頼めるらしいので俺はそのままスキルをONにしてもらい残りの狼を倒しにいくことにした。
「さて、あと一匹っと」
ちなみに最後の一匹は飛び蹴りで片付けた。相変わらずの気持ち悪さだがそこまでひどく気にならない。本当に便利である。
そんなことを考えているうちに日向の方も終わったようだ。
「なんとかできたみたいだな。日向はこういうことに忌避感とかは感じないの?」
「大丈夫だよ! 私日本でも小さい頃にイノシシ狩りの手伝いをしたことあるしそんなに感じないかなー。それよりも魔法を当てられて楽しかった!」
んー、そんなもんかね? ……ってしまった! 俺も魔法で倒せばよかったんだ! なんでわざわざ肉弾戦を選んだんだよ……馬鹿か? 俺は。
『馬鹿です』
自分で言う分にはそこまで気にならないけど、他人に直接言われると少しムカッとくるな。
「それよりも本当に楓くんは強かったんだね! 私が一匹を相手している間に二匹とも倒してたでしょ? かっこいいなぁ」
「そんなことないよ。日向は後衛の魔法職でしょ? 俺は近接戦闘だから早く終わったんだよ」
「それでもすごいよ! 私、本当は楓くんが強がって嘘ついてるのかと思ってた」
まぁそりゃあんなに弱くしたらなぁ。
『……』
なぁナビちゃん?
『……』
「まぁ俺のステータスについてはそのうち、ちゃんと話すようにするよ」
「うん!」
よし、これで俺のステータスについては大丈夫だな。
それよりこの倒した狼たちをどうするかだな。
『それならマスターのスキルの一つであるストレージに仕舞えば良いかと』
また便利なスキルが出てきやがった。
まぁ、今はそれしか運ぶ手段がないから有効活用させてもらうけどな。
「うわっ! なんか狼たち消えたよ? これどうなってんの⁉︎」
「あぁ、これ俺のスキルの一つでストレージって言って物を無限にしまえるスキルだよ」
「すごいね! これがあるから手ぶらで来たんだね!」
いや、倒した後のことは考えていませんでした……
「ま、まぁね! それじゃあ狩りの続きをしよっか!」
「うん!」
そんなこんなで昼過ぎまで狼を狩りまくった結果日向のレベルが上がっていた。
ーステータスーーーーーーーーーーーーーーーー
佐倉 日向 Lv2
種族 人族
体力 50 → 55
筋力 50 → 55
敏速 30 → 35
知力 80 → 90
魔力 200 → 220
幸運 30 → 40
スキル
魔法 Lv1
魔法威力上昇 Lv1
魔力回復上昇 Lv1
ユニークスキル
成長速度上昇
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やっぱり知力と魔力の上がり方がすごいな……
「そろそろ町に戻ろう。これから冒険者ギルドにいって登録と買取をしてもらおう」
「うん!」
ちなみに今日の戦績は狼十四匹と、レベル1の冒険者二人が一時間で狩って帰るには少しばかり多い数となった。