新しい仲間が増えた!
「おー久しぶりに人の街に来たなー」
「なかなかいいだろう?」
「そうだね!活気があって楽しいよ」
今、楓達3人組は迷宮から脱出して歩いてシュトガルへと帰ってきた。
「アルもクランに入るんだよね?じゃあ先に冒険者ギルドに行った方が良いんじゃない?」
「また絡まれそうだな…」
「なんせ僕達は見た目はまだ若手の冒険者だからね」
「私はともかく楓くんもアルも化け物みたいなものだけどね」
「日向も充分他の冒険者からすれば脅威だろ」
「だね。ヒナタもそろそろ自重した方がいい」
「二人には言われたくないよ!」
何かと3人とも馴染んでいる。
そして3人は冒険者ギルドへと足を運ぶ。
「へー僕がいた時とあまり変わらないね」
「そうなのか?」
「そうだよ。相変わらずバカな奴らが騒いでいるね」
「あぁ…」
アルが言う通り中でお互い殴り合ってる冒険者達がいた。
「何があったんだ?」
俺は野次馬の一人に今の状況を聞く。
「あぁ、一つの依頼をどちらが受けるかっていうのを実力で決めようって言うのでお互いやり合ってるみたいだね」
あぁ、俺たちの時も一度あったな。まぁ、ねじ伏せてやったが…。
「私達も一度体験してるね」
「そうだな。俺も同じ事を考えてた」
「へー。カエデとヒナタも体験済みなのか。実は僕も一度あったよ」
アル、お前もか…まぁ俺達も巻き込まれるのは面倒臭いしさっさと行こう。
「日向、アル、さっさとアルの冒険者登録と二階でクラン加入の手続きをしてしまおう。巻き込まれたらたまったもんじゃないからな」
「そうだね。私も賛成だよ」
「僕も異論ないよ」
ということで暴れている奴達を無視してアルの冒険者登録をしに受付嬢の前に行く…いや、行こうとしたのだが今は冒険者が暴れているせいでそれ以外の冒険者がほとんど動いてなかった為凄い目立ってしまった。しかも見た目は若い美形パーティーが。そうなれば当然…
「おいこら待てやお前ら。今は俺達がここで争ってるだろ?何スルーしてるんだよ」
などと絡んでくるのである。
「あちゃーカエデ。絡まれちゃったね」
「楓くんは何故か目立つよね」
「お前ら二人とも酷くねぇか?」
相手の冒険者にしてもまさか自分達がルーキーにスルーされるとは思っておらず一瞬面食らう…がやはりここは冒険者故だからか…
「お前ら、俺達に向かってその態度とはいい度胸してるじゃねぇか」
やはり怒られるわけで…
「日向、俺はアルを連れて先に冒険者登録しておくからこいつらの相手を頼んだ。間違ってもやり過ぎるなよ」
「もう!楓くんと一緒にしないで!私、手加減は多分楓くんより上手だよ!」
「そうか、なら頼んだ」
「むぅ」
日向はほっぺを膨らまして俺をジト目で見る。
かあいい。
「じゃあアル、行くぞー」
「りょーかい。ヒナタ、頼んだよ」
などと言って男二人がその場から退散しまだ若い、しかもとても可愛い女の子一人で自分達の相手をすると言うのだから冒険者の二人はいやらしい笑みを浮かべる。
もうこの二人は争う気が全くなくお互いの共通の獲物として日向を捉えていた。
「はぁ、なんで私が…まぁ多分楓くんは私に自信をつけてほしいみたいだけど。あぁいう気遣いをしてくれる所が私は好きなんだけどね」
日向は冒険者が前で自分を狙っていると知っていても俺への惚気を隠そうとしない。
「へぇ、姉ちゃんはあの二人のどっちかの彼女か。なぁ、どんな気持ちだ?大好きな彼氏に見捨てられて今から俺達の相手をする気持ちはよ?」
「今は気を失うだけかもしれないが夜は楽しみにしておけよ?」
などと日向に言っている。
俺はそれを聞いていて今すぐにでもあの二人に目にもの見せてやりたいが日向のためにグッと堪える。
「カエデ、いいのかい?今とても怒っているだろ?」
「当たり前だろ。日向は女の子だぞ?まじで日向が手を抜いたら後で俺がきっちり締めてきてやる」
「さっきカエデが手を抜けって言ってたじゃん」
これには流石にアルメダも苦笑ものである。が、自分もこんなクランマスターと同じ場所で居られる事にアルメダは喜びを感じていた。
「私はあの白い髪の男の子が好きなの。あなた達の相手をしている暇はないんだ!ごめんね!」
「なんだとこら?俺達が誰だか分からねぇのかよ?Bランクの俺の言う事を聞いておいた方が身のためだぞ?」
この冒険者はCランクなのだがもう少しでBランクになれると言われているので少し誇張していたのだった。
「ふーん。楓くんの方が強いし格好良いもん!」
「しつこいな!ほら、とりあえず付いて来いよ」
そう言って冒険者の一人が日向の胸に手を近づける。
「触らないで、汚い」
その瞬間日向の目は氷点下まで下がりそして胸を触ろうとしてきた冒険者の腕をパンチ一発で折る。
「あ、やっちゃった…」
日向も俺の事を言えないのであった…
「んにゃろ!黙って見てたら俺を舐めるなよ!」
もう一人の冒険者は日向に向かって殴ろうとする。
「まず、そっちが私達に絡んで来たんじゃん。自業自得だよ」
などと言いながら鳩尾に蹴りを一発入れる。
「はぁ、楓くんがいつも相手してくれてたから分からなかったけどこれ、めっちゃうざいね」
いつも俺が矢面にたって日向を守っていた事に今迄以上に感謝をする日向であった。
「お、終わったみたいだね」
「ん?お、日向も結構やったみたいだな。俺の事を手加減出来ないとか言いながら日向もあんまり上手くないな」
「あれ、カエデは見てなかったの?」
「日向なら大丈夫だろうからちょっと新しい武器を何にするか考えていた」
「え、じゃあヒナタが言ってた事も聞いてなかったの?」
「ん?日向何か言ってたのか?」
「これは…ヒナタも苦労してるんだね」
アルもここまで俺が鈍感だとは思ってなかった様だ。やはり俺はラノベ主人公の様である。
「楓くん!終わったよー」
「おーお疲れー。こっちもちょうどアルの冒険者登録終わったからこれからアルのクラン加入申請に行くぞー」
「「「!?」」」
クランとはAランク冒険者がクランマスターじゃないと設立が許されない。他にも決して安くない資金力も。それがさっきまでルーキーと思っていた奴がクランマスターだと知り皆一様に動揺する。
「りょーかい。早く終わらしちゃおうよ。なんか疲れたよ」
「な?日向もだいぶ強くなってるだろ?」
「そうだけど…なんか楓くんがいつも対処してくれてたのがとても凄い事だって改めて分かったよ」
「そうか、まぁああいった事をさせるのは今回だけだから安心しろ。ほら日向、アル、行くぞー」
そして俺は二人を先導し二階へと行き無事アルのクラン加入申請が受理されて晴れてアルは『無限の伝説』のクランメンバーとなったのであった。
そして3人が冒険者ギルドを出た瞬間、あいつらには絡むなと言うベテラン冒険者のその言葉にその場にいた者が満場一致で頷き俺達の帰った方を眺めているのであった。




