異世界に転移しちゃったみたいだ! 4
『ところでマスター、この場はステータスを偽装された方がいいかと思います』
ん? あぁ、そうか。あんなステータスを見せたら確実に、俺が魔王倒しに行かないといけないしな。
テキトーに振り分けといてくれないか?
『承知しました。ちなみにマスターはステータスに制限をかけることもできますので、必要の場合は言ってくださいね』
え、そんなことできるの?
『はい。じゃないとマスターも全力で戦えないですし、第一面白くないでしょ?』
そりゃそーだ。一方的な殺戮なんて面白くないな。さすが、俺の考えることを分かってる。ナビちゃん最高。
『あの、なぜちゃん付けなのですか?』
そっちの方が可愛いだろ? これからはナビちゃんでいこう。
『……』
お、次俺の番だ。ナビちゃんよろしく。
『わかりました』
ーステータスーーーーーーーーーーーーーーーー
楠木 楓 Lv1
種族 人族 (加工済み)
体力 8
筋力 8
敏速 8
知力 8
魔力 8
幸運 8
スキル
魔術Lv1
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おい! これは弱すぎだろ! ナビちゃん、俺に何か恨みでもあるのかよ!
『……』
「あなた様は本当に勇者様候補なのですか? これほどまで弱い勇者候補は、初めてだ……」
ほら神官さんも困ってるじゃん!
「ははっ! 楓のステータス全部8だって! やっぱりこいつは、顔だけの能無しだな!」
クラスの男子たちから笑い声が上がる。
女子もなんか冷めた目で見てくる。正直居心地が悪いし早くこの場から離れたい。
こいつら本当に分かりやすいな。
ちなみにあまりに谷川 悠人がうざかったので、ナビちゃんに悠人のステータスを表示してもらったのだが、だいたいこんな感じだった。
ーステータスーーーーーーーーーーーーーーーー
谷川 悠人 Lv1
種族 人族
体力 50
筋力 55
敏速 35
知力 30
魔力 30
幸運 20
スキル
身体能力上昇 Lv1
剣技Lv1
ユニークスキル
戦士の底力
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こいつも平均より少し強いくらいで勇者としてはどーなんだ? と思ったりもしたがまぁ、本人が満足そうに頷いているので何も言わないでおこう。
それにしても、このユニークスキルってなんだ?
『ユニークスキルとはスキルの上位互換です。殆どのユニークスキルは強力ですよ。ちなみにスキルのレア度ですが、スキル→ユニークスキル→エクストラスキルとなっています』
え、こいつエクストラスキルなくね? ちなみに俺の超スペシャルスキルって、何?
『エクストラスキルなんて、そうそう見かけることはありませんよ。マスターのスキルは規格外なので分かりません。私も超スペシャルスキルなど見たことありません』
「だ、大丈夫だよ! 私そこそこステータス高かったから楓くんのこと、守ってあげられるよ!」
ナビちゃんと脳内で会話をしていると、茶髪でショートボブの女の子が声をかけてきた。この子誰だっけ? いい子だな。 めっちゃ可愛いし……
ーステータスーーーーーーーーーーーーーーーー
佐倉 日向 Lv1
種族 人族
体力 50
筋力 50
敏速 30
知力 80
魔力 200
幸運 50
スキル
魔法 Lv1
魔法威力上昇 Lv1
魔力回復上昇 Lv1
ユニークスキル
成長速度上昇
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めっちゃ魔力あるけど、これ魔法職最強じゃね?
『Lv1でこの魔力は珍しいですね』
たしかにステータス高いな。戦士職の悠人よりもステ高いとか、化け物かな?
「ありがとう日向さん。頼りにしてるよ」
とりあえず苦笑気味に、返事をしておく。
「うん! 全力で楓くんを守るね!」
そんなやり取りを二人でしていると、いきなり悠人が割り込んできた。
「やめとけ、こんな弱い奴と組むより俺みたいなこれから魔王を倒す勇者の素質あるやつと組もうぜ!」
お前もステータス、日向さんに負けてるだろ。
「え、ごめん……私は楓くんとチームを組みたいな。みんな楓くんに冷たいし、私くらい優しくしてあげたい!」
この子は女神か何かかな?
あの全知全能の神様よりよっぽどこの子の方が、女神としての適性高いだろ。
「そ、そっか。日向ちゃんは優しいんだな……」
悠人が若干引きつつ返事する。
ちなみにクラスで一番ステータスが高いやつで、ステータスオール200だった。これ歴代最高らしいですよ。
いかに俺が規格外かがわかるだろう。
「では、これからはチームで行動するようにしてください。部屋は神殿の客室をお使いください。ここにいる間は最大限おもてなしさせていただきます。あぁそれと、楓殿はこちらへどうぞ」
なんか俺だけ呼ばれたんだけど……
「楓殿の待遇なのですが、こちらでは対処できないのでできればここを出て、他で頑張ってほしいのでございます。ほ、ほら、強くなるには迷宮に潜らないといけないのですが、騎士の数が足りず護衛をつけられないのですよ……申し訳ない」
ちっとも申し訳なさそうじゃない報告を、受けてしまった。
あー、まぁこーなるわな。日向さんは他の人達と組んでもらおう。
自由行動が俺だけ許されるなんて儲けものだしな。正直、ここにいるより100倍マシだ。
『ステータス変更してよかったでしょ?』
そーだな。誰にも期待されずに自由が得られるなんて、最高だな。他の奴らはこれから修行らしい。精々頑張ってくれ。
自由が制限される代わりに好待遇か、なんかこれじゃ教会の思うツボだな。まぁ、もう関係ないけど。
さてこれからどうしようかな? とりあえず一回、この町の外に出てみようか。
そんなことを考えながら、教会を出ていくと……
「どこに行くの?」
「ん?ちょっと町の外を見に行こうと思ってだな」
「でも町の外は危ないらしいよ?」
「大丈夫だ……ってうわ!なんで日向さんがここにいるの⁉︎」
「私、楓くんとチームを組むって言ったよね? 教会の人達からは逃げてきた!」
「は?」
ステータス偽装のところですが(加工済み)と出ているのは楓の一人称だからです。他の人からは見えません。