ルーナとデート3
お久しぶりです。
そろそろ余裕も出てきたので、また更新できるように頑張っていきます!
今、別の作品で『道化な僕とギャルな君』という作品も更新していますので、ぜひそちらも見にきてください!
騎士団の団員達が見ている中、楓とルーナは若干イチャイチャしながらアップを済ませると、早速ルーナ対騎士団の団員50人との模擬戦が始まった。
普通なら無謀とも思われる数だが、ルーナにとっては朝飯前、むしろこれがアップなのでは? とすら思わせるようなものだった。
「剣の筋がまだ甘い! そこからそこまで、外周二十本走ってこい!」
「「「はい!」」」
そして、模擬戦をしている最中でもルーナによる指導は行われており、団員一人一人が悔しそうに顔を歪ませながらも、どこか嬉しそうにルーナの指導を受けていた。
なかなかない機会なので、団員もできるだけルーナから吸収できるように、必死になって頑張っている。
「ルーナ〜かっこいいよ〜!」
「っ! 恥ずかしいからやめてくれ!」
楓は真面目なルーナが可愛すぎて、時折声援を送っているが、そのせいでBチームの団員からは殺気を含んだ視線が楓に集中した。
曲がりなりにもデスハイム王国の先鋭達の殺気なので、普通なら腰を抜かすほどの迫力があるはずなのだが、楓はどこ吹く風といった感じで受け流し、色んな意味で周囲を挑発するためにさらに声援の数を増やした。
その甲斐あって、騎士団の団員の動きは鋭くなり、ルーナもやる気になって嬉しそうである。
「ふぅ……これで終わりだな」
「お疲れルーナ。かっこよかったよ」
「カ・エ・デ! 恥ずかしかったじゃないか! 何もみんなの前で叫ばなくても……」
「でも、内心嬉しかったでしょ?」
「まぁ……それは……カエデは意地悪だ」
顔を赤くして照れているルーナに、楓は笑顔を見せながらその頭を撫でる。
ようやく、天狐族としてのルーナ達がデスハイム王国でも認められてきているので、普段から天狐族の姿になっているルーナを拝めて楓も団員達も眼福であった。
そして、普段のルーナと照れているルーナとのギャップが大きくて、団員達も鼻血を抑えるようにして悶えていた。
それを知ったルーナがまた楓に対して怒るのだが、逆に可愛くて終始2人でイチャイチャしているだけであった。
「そろそろカエデも行って来い。Bチームの団員達はみんなやる気みたいだぞ」
「そうだね。指導の方はルーナからお願いできるか? もしよかったら一緒にBチームに入ってもいいけど?」
「なら、最後に一戦やろう。まずは団員優先だ。私は外で、見ているよ」
「了解。頼むよ」
「あぁ、ちゃんと手加減するんだぞ」
「わかってるよ。任せて」
もちろん、楓とルーナの会話は他の団員達に筒抜けなので、これ以上ない屈辱をBチームの団員達は受けていた。
特に、ルーナ信者の騎士達は戦争に出向く時並みに整っているようだった。
「絶対にカエデ殿から一本取ってやる」
「俺たち2人で引っ張るぞ。流石にここまで舐められて何も思わない奴なんていないだろ」
「あぁ、行こうぜ相棒!」
「よし、ルーナ、いつでも始めていいよ。俺はこの木剣一本だけしか使わないですが、みなさんは魔法も武術も、もちろんスキルも全部使って構いません」
「皆、カエデを殺すつもりで行くように。始め!」
楓は木剣一本でスキルや魔法は一切使わない。
ステータスのみの勝負になる。もちろん、ステータスもルーナレベルまで落としてあるので、もしかしたらワンチャンス、楓に一太刀入れることができる団員がいるかもしれない。
先程のルーナは一応鉄の剣で団員達と同じものを使っていたため、それよりも不利な戦いが待っているはずなのだが、楓は一切危なげなく余裕の表情で騎士団員たちの攻撃を捌いていく。
「クッ! 魔法で押し切れ!」
「俺たち2人がスキルを使って先行する! みんなは隙を見て攻撃してほしい!」
騎士団の中でも頭抜けている2人がBチームに固まっているおかげで、Aチームよりも統率の取れた攻撃が多くなっていた。
例えるなら、さっきのルーナの戦いが1対1を50回繰り返すような形で、今楓がやっているのは正真正銘1対50の戦いをしているという状況である。
騎士団員の中で魔法が得意なものは後方から攻撃をし、近接戦が得意なものは、前の2人が作った隙を見て攻撃を試みる。
やはり指揮する人がいるかいないかだけでこうも戦い方が違ってくるのだ。
そして、Aチームの団員達は自分たちの戦い方が良くなかったのを知り、反省しているようだった。
「カエデ殿に一撃を入れるまではっ!」
「あなたは……?」
「ルーナ様に本気で恋をしていたものです! 今日、このような機会を設けてもらったおかげで、心の整理がつきそうですよ!」
「なるほど……わかりました」
楓は一番動きがいい団員の言葉を聞くと、一瞬でその他49人を気絶させ、あえてその一人だけを残した。
「一騎打ちです。俺はあなたの気持ちを応援することはできません。だから、せめてルーナの相手がこの人で良かったと思えるように……」
「ありがとうございます。もうすでに、カエデ殿に惚れ込んでしまいそうです。あなたに……あなたに今の私の全力をぶつけます!」
最後に残った団員は、今日一番の集中力を持って、最後の一太刀に全ての力を込めて走った。
楓はその団員から目を離さない。
恋をした男が、自分の気持ちの整理をつけるために全力を尽くしているのだ。
ならば、最後くらいは楓も『今持てる全力で』答えるのが礼儀というものだ。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「『百花繚乱』」
「グハッ……」
スキルではない、楓は技術だけで擬似的にルーナのスキルである百花繚乱を模倣し、それを団員に向けて放った。
それは一瞬で意識を刈り取り、楓の勝利という形で勝負は終結したのだが、最後に残った団員は満足そうな笑みを浮かべて意識を手放すのであった。
「ふわ……疲れた」
「お疲れルーナ。今日は楽しかった?」
楓とルーナが騎士団の訓練に参加し終えて、2人は屋敷に戻るところだった。
ルーナは久しぶりに騎士団の団員達を指導したせいか少し疲れている様子だったけど、その顔はどこかすっきりとしていて、嬉しそうだった。
最後には俺とルーナの一騎打ちもあったが、騎士団の訓練所が半壊しかけたところで両者引き分けという結果で収まった。
2人の異次元な戦いに、団員達は目を丸くしていたけど、いい刺激になったみたいだったのでよかった。
本来のデートでは間違っているのかもしれないけど、楓とルーナは満足しているので何も問題はない。
「あぁ、とても楽しかった。あまり女の子らしいところは見せることができなかったけど……まぁまだ夜も長いしな」
「あれ? いつもそう言って最後にヘトヘトなのはどっちだっけ?」
「むぅ! 今日は負けないぞ!」
「ははっかかってこい!」
結局、最後まで2人は戦ってばっかりだったけど、とても楽しそうに今日という一日を締め括るのであった。
ちなみに、今日もルーナが音を上げるのが先だったとかなんとか……




