事後報告と不安要素
しばらく更新できなくてごめんなさい。次から十話ほど久しぶりに各々のヒロインのデート回をしようと思います。
何か、そのヒロインにしてほしいシチュエーションがあれば、コメントしていただければできるだけ書くようにしますね!
「「「すいませんでした」」」
「全く。確かに私としても本当に嬉しいことではあるが、今はまだ緊張感を持ってくれ」
ナビが戻ってきてから、しばらく『無限の伝説』は話に花を咲かせていたのだが、それのおかげで今現在進行形でバルバトスから説教を喰らってしまった。
しかも、それが例の会議室で行われているため、他の王やその護衛たちからは苦笑されてしまっていた。
ここで、バルバトスと楓たちの力関係を他国にアピールしておくためにも、今回のこの説教はある意味いいパフォーマンスになっているのだが、怒られている楓たちからすればいい迷惑である。
「それで、その天使や悪魔も介入してたと言うのは……」
「はい。今回の首謀者が天使と悪魔、そして複数の神までもがこの世界自体に介入してきています。どうやら、あの都市の下で天使と悪魔の融合実験をしていたみたいですよ」
「っ! それは本当か⁉︎」
「天使と悪魔の融合……! そんなことがあり得るのか!」
「そもそも天使と悪魔、そして神までもが介入してくるなんて私たちからしたら、御伽噺の話です」
楓の報告を聞いて、各国の王が一気にざわめいた。
今回、王たちがこの部屋にいて入ってきた報告はただ魔物の軍勢が自分たちの手には負えないほど強敵だと言うことと、それを楓たち『無限の伝説』とルークとシェリンがほぼ殲滅してくれたと言うことのみである。
その中に楓たちが天使や悪魔などと対峙していたことは入っていなかった。
「そ、それで、天使や悪魔というのは……」
「今回は僕たちで撃退はしました。しかし、まだ油断はできないと思います。次いつ仕掛けてくるかは僕たちでもわかりません」
「ふむ。相手の目的がわからない今、私たちができることはしばらく変な争いをしないように気をつけることだな」
「そうですね。無駄な争いほど無益なものはありませんから」
「あぁ、私も異論ない」
その後も続々と人族同士での全面戦争はしばらく禁止という声が続き、結果的には1年間の平和協定が結ばれることとなった。
そして、問題の天界と魔界、そして神界の対処ではあるが、これは現状楓たちでしか対処ができないため、デスハイム王国がリーダーシップをとって今後の対策を練っていくこととなる。
普段であれば、デスハイム王国に限らず他の国でもこういった場面で一歩前に出ると他の国から妨害が入るのだが、今回に限りことがことと言うことと、楓たち以外ではどうしようもないと言うことで大人しくデスハイム王国に役割を譲った。
その後、しばらくは他の議題について話が再開していたが、今日はたくさんのことがあったため、早めに解散となった。
「カエデ、話がある」
会議も解散となり、楓たちも自分たちの宿へと戻ろうとしたとき、イリアに呼び止められた。
少し神妙な顔をしており、楓も茶化す雰囲気を出さずに素直に二人で話せる場所へと向かった。
「イリア? どうした?」
「今回は私たちのせい。本当にごめんなさい」
「いや、その謝罪はさっき受け取った。本当に気にしなくていい」
「ありがとう。それで、カエデに一つだけ話しておかないといけないことがある」
イリアはそこまで言うと一度目を閉じて、神威を強めた。
事前にイリアが丁寧に結界を張っておいたので、外部に影響はないが、すでに楓でなければ即死してしまうほどの威圧があった。
「きっと、最後にカエデの敵になるのは私。その時、きっとカエデだけでは私には勝てない」
「へぇ? 俺、そんなに弱くないよ?」
「知ってる。きっと今なら私とカエデが本気で戦ったらカエデが勝つ。でも、時が来たら私の方が強い」
そこで、イリアは少しだけ悲しそうな顔をする。
「だから、今のうちにカエデはもっと色んな人との絆を深めて。私が言えるヒントはそれだけ」
「絆を深める?」
「うん。家族もそうだけど、他の人とももっと深い絆を紡いでおいて。そうしたら、私に勝てる可能性が上がる」
「なるほど。わかった。お前が暴走した時は俺が助けてやるから安心しろ」
楓がそういうと、イリアが一気に目を見開いて驚いたような表情をする。
どうして、気づいたのかといいたげな様子だったが、流石の楓でも今のイリアの言いたいことくらいはわかった。
「大丈夫、何度も言うけど、お前の暴走は俺が止めてやる。だから、大船に乗った気持ちでイリアはイリアの戦いを頑張れ」
「ふふっ、泥舟じゃないことを祈っておくね」
「お、おま……」
「ははっ、期待してるね」
最後に、イリアは心の底から笑みを浮かべて、どこか安心したような表情で空を眺めるのであった。




