会談 2
感想、ご指摘ともに全くお返しできていませんが、落ち着き次第、全て目を通してご返事をさせていただこうと思っておりますので、もう少しお待ちいただけると幸いです!
楓たちが入室すると、案の定獲物を狙う鷹のような目をした王たちが一斉にバルバトスのことを見ていたが、バルバトスは気にすることなく席についた。
楓も無表情でバルバトスの後ろに立つと、ルークやシェリンだけでなく他の護衛たちからも注目されてる。
誰一人として口を開こうとしないが、それでもそれぞれ威圧感だけは出しているせいでこの部屋は今物凄い居心地の悪いものとなっているが、覚悟を決めた楓とバルバトスはこのくらいでめげることはなかった。
その後、10分ほどその状態が続いたが、最後の国の王とその護衛が席についたことによって部屋の中を支配していた沈黙は破られることになった。
総勢五十を超える国が参加することとなったため、室内もかなり壮大なものとなっていた。
「これで全てだな。それでは、会談を始めようか」
「随分と余裕そうですね。今から、貴方の国がなくなるかもしれないというのに」
バルバトスが会談の開始の宣言をすると、隣に座っていた二十代後半の女性に早々に突っ掛かられてしまう。
別にここで言い返しても良かったのではあるが、今はまだその時ではないということで、バルバトスはそれを無視してことの顛末と、疑われていることは全て事実ではないと説明した。
きっと、ほとんどの国ではすでに事前調査で大体事情を把握しているだろうが、もしかしたら何も把握していない国がいるかもしれないので、念のため丁寧に本当のことを説明していく。
中には嘘か本当かを見分ける魔法を使えるものもいるので、ここで嘘をつくのは悪手である。
帝国を滅ぼしたのも『楓』ではないためその辺の言い方をいかに気をつけるかが、ここでのバルバトスの役割であったが、しっかりと考えてきたのか、堂々と嘘をつくことなく、されど核心に触れるところはぼかして説明していた。
「以下が、私が聞いた話だ。これを聞いて、何か質問は?」
「確かに、嘘はついていないようだ。それに、そもそも、ただの人間が帝国という巨大な国を一瞬で消滅させることなどできないだろう。ただの人間であれば、の話ではあるがな」
「何が言いたい?」
「いや、我の調べでは、そこにいるカエデというやつは例の勇者召喚の生き残りらしいではないか。一人だけ爆発的な能力を持っていてもおかしくはないだろうと思ってな」
「しっかりと説明したはずだが……カエデはやっていない。何か、カエデがやった証拠があるなら持ってきてくれないか?」
バルバトスは煽ってきた王に向かって、逆にそう煽り返した。
ここでは、王同士は大国であれ小国であれ皆平等ということになっているので、皆敬語を使うことはない。
護衛でさえも、王に敬語を使わなくても特に咎められることはないのだが、まだ今は王同士の話し合いということで、護衛は皆後ろで静かに立っていた。
何人かすでに危ないものもいるが、今のところなんとか耐えているようだった。
もちろん、楓も表情を一切変えることなく、勝ち組オーラを全開にして、少しでもバルバトスの助けになるように威圧しておいた。
そのおかげもあって、今バルバトスに突っかかってくるものも少ないのであった。
「一つ、いいでしょうか?」
「構わん。何か今の説明に不備があったか?」
「いえ、特には。そもそもの話ではありますが、私たちの国はデスハイム王国を疑っていませんし、どうでもいいことです。そんなことよりも、みなさんの国にも、神託がきていたと思いますが?」
「あぁ、それは僕も思いました。すごいですよね。天使様がデスハイム王国をかばった。いや、この場合クスノキカエデを庇ったと言ったほうがいいでしょうか」
「ま、普通に考えておかしいよな。何をやった? ことと次第によっては、帝国を滅ぼした以上の制裁を与えることになるぞ?」
どうやら、宗教関連の国の方では、帝国を滅ぼしたことなどどうでもよく、それ以上にデスハイム王国が、いや、楓が天使たちを利用していることを疑っているようであった。
楓は勇者としてこの世界に召喚されているため、その可能性もあると見ているのだろう。
まぁ、実際その通りなのだが、ここでバルバトスがそうだと頷くと、本当に宗教関連の国は何フリ構わず戦争を仕掛けてくることになるため、絶対に頷くことはできなかった。
だがしかし、実際に楓はイリアやマーズに頼んで根回しをしてもらっているため、ここでバルバトスが違うと言ってしまうと、嘘だと魔法でバレることになる。
要は、バルバトスだけでは詰みの状況となってしまったのだ。
バルバトスだけだったならば、という話ではあるが……
「ちょっといいでしょうか?」
「なんだ? まさか、王を見かねて貴様が犠牲になろうというのか?」
そう、ここには楓がついているのだ。
楓がバルバトスを庇うように声を上げると、当然のようにそう突っかかってくるやつがいたが、楓はそれをさらっと流すと、話を続けていく。
「いえ、そんなつもりはありませんよ。ですが、僕は天使の力なんて借りてませんし、そもそも、そこまで強くないですよ」
楓がそう言った瞬間に、部屋の中が一気に凍りついた。
嘘かどうかを見分けるものは皆魔法の結果がこう出たはずである。
初めのは本当で、最後のやつが嘘である。と。
つまり、天使の力は借りてはいないが、自分は強いと楓は言ったことになるのだ。
楓レベルになれば、嘘か本当かなどスキルとステータスを使っていくらでも操れるし、最後のは少し挑発も兼ねてそう言ったのである。
楓のその作戦にハマった護衛たちは皆、楓に向かって全力で殺気を放っていたが、楓は笑みを崩すことなく、逆に威圧を放って他の護衛たちを牽制していた。
ルークやその他数名は楓の罠に引っかかることなく、楓たちの一部始終を楽しそうに見ていたが、それでも、楓の放った言葉を無視することはできなかったのか、考えるような仕草をしていた。
「……お前、何者だ?」
楓が大勢の護衛に威圧を放ってあしらっていると、どこからか、そんな声が聞こえた。
「楠木楓。デスハイム王国を拠点にしている『無限の伝説』のクランマスターです」
最後に、楓がこの会談が始まってから一番の冷めた笑みを浮かべて、そういうのであった。
ここに日向たちがいたら、確実に楓のことを「悪者だー」とか言っていじっていただろうが、そんな声は当然聞こえることはなかった。




