会談に集うもの 2
「いやー楽しかったよ。そろそろ時間だから行かないといけないけど、また何かあったら話そうね!」
「あぁ、その時はよろしく」
「うん。君とはまた近いうちにまた会えそうだしね。バイバイ」
シェリンはそう言って楓たちに手を降りながら扉を開けて帰っていった。
楓はそんなシェリンを見届けると、ふっと一度息を吐いてから日向たちに「俺たちも帰ろうか」と言い、宿に戻ることにした。
思っていた以上に、シェリンとの会話は弾み、向こうが楓に興味津々だったこともあってバルバトスと話している時以上の時間、楓はシェリンと話をしていた。
「本当に、嵐みたいな子だったね」
「だな。本人にそれを言ったら多分すごい怒るだろうけど、正直まだまだ子供だしな」
「彼も心の中に強力な獣を飼っていそうでしたしね。本当に、この時期のこの都市は面白い方々が多いですね」
「マスターもあまり油断しないように気をつけてください」
唯一、終始警戒を解くことなく注意深くシェリンのことを観察していたナビが楓に向かってそう忠告した。
ミルの言う通り、所々シェリンも許せないところがあるようで、楓も何度か地雷を踏みかけてはいたが、今回は特にそれが爆発することはなかったが、確かに油断をしすぎてその地雷を踏んでしまうのはあまりいいこととは言えないだろう。
これが、本当に年相応の男の子だったならば、大して問題はないのだろうが、入ってきた時や楓へ攻撃をしようとした時の動きのそれがかなりの上級者のものだったのだから、シェリンも『一般人』としてこの都市にきているわけではなさそうであった。
しかも系統的にシェリンの動き方は暗殺者のそれとかなり似ていた。
デスハイム王国にも、暗殺ギルドは存在するし、シェリンが暗殺者だとしても別に問題はないのだが、その練度が暗殺ギルドの長であるカナンと同等に近いレベルのものだったのだ。
楓も最初は自分の見間違いかと思ったが、最初に日向たちに気づかれずにこの部屋へと入ってきたことや、手にナイフを持って遊んでいたことから考えて、ただの暗殺者だと言うことはほぼ100パーセントないと言っても過言ではない。
「本当に、ミルの言う通りなかなか厄介な奴が多そうだ」
「あれ、ちょっと楽しそうですね?」
「まぁ、シェリンもそうだけどその前にも一人、なかなかすごいやつと会ってるからな。割と楽しみなのかもしれない」
「マスター、自重してくださいね? 今回の目標は私たちの無実を晴らすだけですから」
「ま、そのついでにちょっと脅してもいいと思うけどねー。私はカー君の意思を尊重するよ?」
「そんなことしたら後でミルのお父さんに殺されかねないから基本的に大人しくしてるよ。向こうが大人しくしてくれたらの話だけどな……」
楓は絶対にそうはならないなと半ば諦めながらもミリアの言葉を否定しながらそう言った。
ルークもそうだが、シェリンも確実に会談の場へとやってくるだろう。
あんなのが、五人も十人も集まろうものなら必然的に争いが起こってしまうだろう。
「でも、一応護衛が暴れそうになっても、その国の王様がなんとかしてくれるんじゃないの?」
「どうだろうな。シェリンみたいなやつを一国の王様がなんとかできるとは思わないけどなぁ……」
「最悪カエデ様が止めてあげればいいのではないでしょうか? ほら、それで恩を売ることもできそうですし」
「ミルのお父さんからゴーサインが出たらそうするよ。基本的には今回俺たちは責められる側だから大人しくしてるけど。後は、マーズ頼みってところだな」
結局のところ、楓たちが何をしようが確たる証拠がない以上マーズによる『神の信託』以外に楓たちの無実を証明することはできないのだ。
最悪、楓たちはまだ利用価値があるため他の国に渡ってもなんとか生きていけるだろうが、バルバトスやデスハイム王国に住んでいる国民たちはそうはいかなくなってしまうだろう。
それだけは楓もどうしても避けたかった。
「マーズの方はどうなってるの?」
「順調に信託を下して行ってるらしい。この都市の教会はもちろんのこと、他の国の信託にも行ってくれてるらしい」
「この会談が終わったら、ちゃんとお礼をしないとね」
「そうだな。なぁイリア。これが終わったら、一回でいいからマーズのことを助けてやってあげてくれないか? きっと、俺じゃなくてイリアじゃないと解決できないこともあるからさ」
楓はイリアにそう頼んだ。
誰だって悩みくらいあるだろうし、それを解決できるのはきっと楓ではなくて同じ神様であるイリアだと確信しているが故のこの頼みだった。
「わかった。その代わり、私の言うことも聞いてもらう」
「別にいいけど、マーズの問題が解決してからな」
「了解」
「マーズは幸せ者ですね。創造神様に悩みを解決してもらうなんて、神界では滅多にないことですよ」
「そう言えば、こうしてダーリンとこうして普通に喋ってるけど、創造神様だったね」
「今更ではあるが、私たちがこうして普通に話していいものなのか、少し心配だな」
「いい。むしろ、私も初めて友達ができて嬉しい。ヒストリアもルーナも、もちろん他のみんなも、私の大切な友達。これからもよろしくね」
「こちらこそ、いっぱい遊ぼうね!」
「うん」
イリアは日向たちの返事を聞いて嬉しそうに頷きながら、ゆっくりとまた歩みを再開させた。
きっと、近々忙しくなっていってこうしてゆっくりと街を歩くことはなくなるかもしれない。
それでも、今はこうして夕日を見ながらクランのみんなでこうしてゆっくりと街を歩けることに、楓たちは幸せだなと思うのであった。




