久しぶりの再会 2
楓たちが宿へと向かっている一方でアルたちはアルたちで酒場へと向かいまだ昼間ではあるが、男同士で酒を飲みながら話をすることにした。
ちなみに、イリアたちは楓たちに気を使っているのかミーシャと二人でマーズの様子見と天界で何か問題が起こっていないか一度確認をしに行っている。
ということでアルもルシフェルもセバスも気負いなく話ができるのでまだあまりお酒が入っていない時から話は大いに盛り上がっていた。
主にルシフェルとセバスの話についてだが……
「本当に疲れた。まさか、我があそこまで手こずるとは思ってもいなかった……」
「ヒナタ様方が想像以上にご成長されていて、私も久方ぶりに少し本気になってしまいました。それでも何度か命の危機を感じたくらいです」
「そ、そこまで酷かったのかい?」
アルはぐったりしている二人の様子を見て驚き半分苦笑半分で返事に詰まってしまう。
ルシフェルはともかく、その補佐であり魔界のトップ2であるセバスが命の危機を感じてしまうほどであったとなると日向たちが相当の実力者に成長しているということになる。
今までアルの認識として日向たちは世間一般からしたら十分強いながらも、まだまだ自分たちが守るべき存在であり、自分たちが戦闘で負けるとは露ほども思っていなかった。
そんな彼女たちが短期間でここまで成長していると聞いてアルは背中から冷たい汗が流れるのを感じていた。
「カエデたちがデスハイム王国を発ってから一週間と少しはヒナタたちも大人しく各々訓練をしたり仲良く全員で買い物に行っていたりしていたのだが……」
「ちょうど二週間が過ぎようとしていた頃にいきなりヒナタ様たちが私たちの元までやってきて、『私たちも楓くんたちのところに行きたい!』とおっしゃられて……」
「当然我らは止めたのだが、『だったら、模擬戦で決めようよ!』などと言い出して、渋々受けてやったら思った以上にしっかりした殺気を放ってきてかなり肝が冷えたな」
「……まぁ、まだ転移魔法で勝手にこっちまでこなかっただけマシだと思うけどね。今そんな真似をされたら、正直めんどくさいことになってたから。それに、ミルのお父さんも納得してこっちまできたんでしょ?」
「あぁ、道中は比較的楽だったな。珍しく、ルーナとヒストリアが騎士や宮廷魔術師に喝を入れてたから動きも機敏で助かった」
「山賊の類は全てヒナタ様たちが一掃していましたしね。私たちの仕事といえばバルバトス王を護衛するだけでしたから」
本来であれば、一冒険者に国王の護衛をさせることは絶対にないのだが、バルバトス自身がルシフェルとセバスの実力を知っているのと、例の殲滅戦などでもルシフェルたちは楓やアルに並んで活躍していたので、ルシフェルたちからお願いすることもなく、逆に向こうの方からバルバトスの護衛をするようにと頼まれていた。
それに加えてセバスは今回が初めてではないため、バルバトスも気が楽だったのだろう。
その辺の騎士に守られるよりも実力がはっきりとわかっていて、かつ楓たちの仲間であるルシフェルやセバスの方が良いというバルバトスの判断であった。
「我らの話は言ってもこのくらいだが、こちらの生活はどうだったのだ?」
「僕たちはそこまで話すことはないかな。まぁ、すでに暗殺者たちがカエデや僕のところに毎日のようにきているけど」
「何のために一般人として行ったのだ?」
「それは僕も思ったけど、今回は仕方ないよ。普通に並んでたのに検問のところで引っかかってね。セバスの情報網を掻い潜っているネズミがいたみたいなんだ」
「なるほど、それは厄介ですね……」
「セバスの情報統制を抜けるとはなかなかだな。面白い」
アルの話を聞いてルシフェルは警戒をするどころか逆に獰猛な笑みを浮かべながらそんなことを言っている。
この辺はやはり魔王と言われる所以なのだろうが、ルシフェルが自重を忘れると楓と同じくらい大変なことになるため、アルとセバスはしばらくルシフェルを見張っておくことを心に誓った。
「そこ、喜ぶところなんだ?」
「ここ最近ちゃんと暴れられてないからな」
「ヒナタたちと暴れたんじゃなかったっけ?」
「お前、わかってて言ってるだろう? ヒナタたちに少しでも傷をつけてみろ。後でカエデから鉄拳制裁だ。我もさすがにカエデを相手にするのは荷が重いし、もともとヒナタたちに傷をつけることは我も嫌だったからな。手加減が大変だったぞ」
「まぁ、おかげで私たちも手加減という新しい技を身につけられましたから、よかったのですが、あれを毎回当たり前のようにされているカエデ様には改めて尊敬の念を抱きましたね」
「だな。まぁ、カエデを相手に考えるのは無駄であるし、そこまで深く考えてはいないが、我々ももう少し手加減を覚えておいて損はないだろう」
そう、今回日向たちを相手にしてルシフェルたちが一番考えさせられたことはというと手加減の難しさであった。
生半可な手加減では自分たちが危ないしかと言って本気でやると日向たちを傷つけてしまう。
今までであれば、その中途半端な手加減でもしっかりと相手をしてやることはできたのだが、ここ最近の日向たちを相手にそれでは自分たちが危ないし、日向たちも危険に晒してしまう可能性があるのだ。
ただ、それをそのまま日向たちに伝えるのはルシフェルも魔王のプライドとして許せないし、なんとかするつもりではあった。
「僕も手加減に関してはちょっと考えてたんだよね。みんなで練習しないと」
「だな。どうせ今頃楓たちはイチャイチャとしておるのだろうし、少しくらいいなくとも大丈夫だろう」
「そうだね。そうと決まれば早速行こうか」
三人は善は急げと言わんばかりの速さで一気に手元にあったお酒を飲み終えると、手加減の練習をするためにストレア中立都市の外へと向かっていくのであった。




