迷宮探索 11
「凄いね…」
「あぁ」
二人は第十六階層に来てその光景にポツリと呟いている。何故ならそこは前の階層迄とは景観からして変わっていた。
前迄の階層は壁の色が基本的に青色だったのに対しこの階層は赤色だったのだ。非常に禍々しいというか、迷宮の本気度が分かるな。
まず、ここまで来られる冒険者など一握りしかいないのだが多分その一握りの冒険者達もこの不気味さに尻尾を巻いて逃げ帰るだろう。そんな感じだった。
「迷宮はここからが本番と言いたいのかな?」
「そうみたいだな。まぁこの付近に危険な奴はいなさそうだけど…」
「そっか。じゃあ行こうか」
「そうだな」
二人は少し警戒の気配を出しながら進んでいく。流石に俺はともかく日向は少し油断するには自分の力が足りていない。
なるほど、これなら第二十階層が最高記録だというのも頷けるな。
これは…
「日向、気を付けろ、この階層の初の魔物だ」
「了解!」
「今回は俺が出る、一応サポートよろしく」
「楓くんにサポートなんていらないでしょ」
日向は笑いながら返事を返す。
「気持ちの問題だよ」
「そっか、なら任しといてー」
俺は魔物がやってくるのをしっかりと確認した。
おぉ、なんか強そうだ。
目の前に現れたのはオークの筋肉がビシッと引き締まった感じの魔物だった。武器は剣を持っている事から近接戦闘職の魔物なのだろう。
などと考えていると魔物が俺にいきなり切りかかってきた。
なかなか強いぞ?これは第五階層のボスよりかは強いな。なるほど、この階層からは雑魚キャラでさえ個々の能力が高いんだな。こんなのが集団でやってきたら普通の冒険者達じゃあ手に負えないな。
そんな事を考えながら魔物を一刀両断する。
『なかなか強いんじゃなかったんですか?』
そんなの一般人にしたら、だよ。
「お疲れ〜、あの魔物結構強そうだったね。流石にそろそろ私も気を引き締めないと大変な事になりそうだ」
「そうだな、まぁ何かあれば俺がなんとかするからあまり気負いするなよ」
「ありがとう」
そしてその階層を攻略していくと魔物の出現率もだいぶ上がりレア種も現時点で三回現れている事が分かった。本当に一気に難しくなってきたな。まだ日向は余裕がありそうだがこのままだとペースを落とさないとやばいかもしれない。
ん?これはもしや…
「日向、そこもしかしたら隠し扉かもしれない」
「え!ほんと?じゃあ早速見に行こう!」
早速俺は中に入るための扉を見つける。浮かび上がって来たのは引き戸だった。
「また変な扉だね…」
「まぁ、気にせず入ってみよう」
俺が中に促すとそこは何かの研究所かな?と思う所だった。
「あまり期待してたのと違うね」
「でも、結構面白そうなのはあるぞ」
俺は一冊の本を手に取る。
「魔導書?なんか凄そうだね!」
「だな、結構レアものらしいぞ。それも結構な数があるし。俺らはいらないけど飾りとしてやこれからお世話になった人とかにあげるのはアリかもな」
「そうだね。私達は魔法創造があるからいらないか」
「そういう事だ。だがあって困る事はなさそうだし見た感じ500冊位あるな。色んな種類がありそうだから後でストレージで確認しとく。あと、あれはスクロールだな。唱えれば魔法を覚え易くなるらしいがこれも俺たちはいらないから用途は限られるな」
二人は知らない。魔導書やスクロールは今は亡き技術が使われている物なので一冊あればそれだけで平民なら30年は働かなくてもいいだけの価値があるのだ。
それがここにはゴミのようにあるのだからこの前の鉱物部屋と同じ位貴重なのだ。
両方共しっかりと俺のストレージの中に入れたらさっさと隠し部屋を出る。
「なんかよく分からなかったけどちょっと面白かったからいーや」
「そっか。なら良かった。これからも見つけたら見てみような」
「うん!」
二人は楽しそうである。さっきまで警戒がどうとか言っていたが二人は忘れていた。
そのまま俺達はささっと第十六階層も攻略を終わらせてしまう。ペースも全く落ちていない。
「この階層は隠し部屋があったから当たりだったね」
日向は嬉しそうである。
「そうだな、次の階層も楽しみだ」
俺達は階段を降りている最中にそんな事を話しながら歩いていた。
「それにしてもまだそんなに日は経ってないのに随分と時間が経っている様な気がするよ」
「それだけこの迷宮での体験が濃いって事だろ」
「貴重な体験だね」
「そうだな、この調子なら最下層迄行けそうだしな」
俺は最下層の事で頭がいっぱいである。俺自身目の前の事に集中すべきだと分かってはいるがどうしても早く最下層に何があるのかを知りたい。
アニメやラノベなど読んでも途中まで見たらネタバレが気になってよく調べていたものだ。
まぁ好奇心があるのは良い事なのだが…だがあまり油断して日向に何か起こってはいけないので一度最下層の事は忘れて第十七階層へと挑むのであった。
〜時は少しさかのぼり勇者達は〜
「ここが第五階層か、まぁ俺達全員でかかれば余裕だな。近接組は後衛組が魔法を放ったら一気にあの石野郎に仕掛けるぞ!」
この中で一番ステータスが高くクランマスターでもある学級委員長がクラス全員に指示を出す。
「「「とりゃあ!」」」
後衛組は魔法を放つ。後衛職はクラスでちょうど半分いるのだが全員の威力を足しても日向といい勝負をするだろう。といった威力だった。
「よし、今だ!仕掛けろ!」
学級委員長は残りの近接組を率いて硬い石に斬りかかる。
「「「おおおお!!!」」」
数がいたおかげであまり苦労をせずにボスを倒しきる事が出来た。
「ふっ、俺達ならまだまだ余裕だな!」
「そうだな、ボスでこれかよ。案外楽勝だぜ!」
「さっさと攻略していこうぜ!今回の目標は第十階層迄らしいからな!」
「やっぱり俺達も強くなってきてるな!」
「早く魔王を倒して願い事でも聞いてもらいたいぜ!」
などなど好き勝手に話し始める。楓達がもっとその先、第十五階層のボスを倒しているとも知らずに…




