王城召集 3
バルバトスからパーティーの誘いの手紙が届いてから三日間は特に何事もなく時間は過ぎていった。
まぁ、もともと戦争後ということもあってこの時期に忙しくなるのは上層部の人間だけで楓たちは特にしなければいけないことはなかったので、楓たちはイリアたちと一緒に王都の散策を行うことにした。
ちなみに、パーティーの招待状にはしっかりとイリアたちの名前も書かれてあったので楓は三日分のドレスとスーツを用意する羽目になったがそれは大した労力にならないので、予定通り楓たちはブラブラと買い物やら依頼やらをこなして楽しんでいた。
久しぶりの休日ということもあって楓たちは全員かなり羽を伸ばすことができて、それぞれデートなどはしなかったが、全員で楽しい時間を共有することができたので日向たちも全然不満そうにはしていなかった。
そして今日、それも後十分もしないうちに向こうのほうから馬車でお迎えが来る予定になっており、パーティーの時間は刻一刻と迫って行っていた。
「先に日向たちが行って俺たちは後だったか?」
「そうだね。なんでも、カエデには向こうで驚いて欲しいんだって」
「あれ用意したの俺だから驚きも何もしないと思うんだけどな。それよりも、先に行ってイリアたちを抑えていた方が賢明だと思うが…」
「マーズ、カエデはこんなこと言っているが多分向こうに行くと見惚れるのはカエデの方だから楽しみにしてろ」
「そうだね。それに、創造神様たちもカエデくんが困るようなことこれ以上しないと思うよ」
「そうだといいけどな……」
楓はそれでもまだ心配なのか浮かれない表情を浮かべながら紅茶を口に運ぶ。
いつも飲んでいる紅茶だというのにその味は少し苦くそれゆえに苦笑を浮かべてしまうが幸い誰にも不審に思われることはなかったが心の中で気を引き締めるためにひっそりと『よしっ』と心の中で叫んでおいた。
実際には、楓がいつもより様子がおかしいことくらい全員察していたが、それを言及しないというのも一つの優しさということで誰も突っ込んでいないだけではあるが……
ちなみに、日向たちだけが先に行った理由の一つの中にはこれを期に少しでも過保護なのを卒業できればというアルたちの気遣い的なものも入っているのだが、生憎と楓はその意図を察することは出来なさそうである。
そんなことを話しているうちに一台目の馬車がクランハウスへとついたのか日向たちの元気のいい「行ってきまーす!」と言う声が聞こえてきた。
楓はその声に「はーい」とだけ答えて、今ここで姿を見に行くわけにはいかないので後はアルに任せて自分はクランメンバーの武器の調整を始めるのであった。
「そんなに拗ねなくても後二分もしないうちに馬車が来るぞ」
「拗ねてなんかない。それより、ルシフェルたちもそろそろ正装に着替よう。いくら一瞬で着替えることができるからってギリギリに着替えるのは違うだろう?」
「この正装は硬いから嫌なんだ。まぁ、その辺で売っているやつよりかはマシなんだろうが……」
「当たり前だ。誰が作ったと思っている」
「やっぱりこれってカエデくんが作ってくれたんだね。ありがとう」
「いや、気にする必要はないぞ。っと、それにしてもさすがマーズ。その正装も似合ってるぞ」
楓はそう言って本当に一瞬で着替え終えたマーズの正装姿を見て褒める。
元々が黒髪で日本人のイケメンと言われてもあまり違和感を抱かないその顔立ちのおかげで正装姿もすごい映えていた。
ちなみに今回はマーズだけがスーツ姿で他の面々はこの世界の正装に則って服を作ってるため服の色もまちまちである。
楓は髪の毛が白いのと長身細身なのを生かしてスーツよりの正装で白系統の色を主に使っている。
アルもどちらかと言えばそっち系統のものだが、アルは髪の毛が赤いのでそれにあった色合いで服装の方もこっちの世界よりの正装である。
一方でルシフェルはこの中だと一番筋肉質ということもあってそもそも正装を着るとどうしても威圧感が出てしまうのでできるだけ威圧感をなくすようにあまり派手目の色や装飾品を使うことはなかった。
ちなみに、セバスはいつもと同じ執事服で行くようで向こうで参加しても給仕の人と間違えられないかがすこし心配ではあるが、楓たちの近くにいれば勘違いされることもないだろう。
メイドたちにはしっかりと日向たちと同じように可愛いドレスを用意したが、それを渡した瞬間涙を流さん勢いで感謝をされてしまったので逆にいたたまれなくなってしまった楓であった。
「細身のイケメンは似合うだろうな。我は少し筋肉質なので中途半端に威圧感がありそうだ」
「大丈夫だ。俺が考えたんだぞ? 変なものを渡すわけがないだろ?」
「まぁ、それもそうだな。それに、他人にどう見られようが我は関係ないしな」
「それはわからないぞ? いつかの文化祭の時みたいに女性に言い寄られるかもしれないぞ?」
「勘弁してくれ。あの時は本気で撒くのが大変だったのだぞ? あの時、珍しくアルも疲れた顔だった」
ルシフェルは嫌なことを思い出したかのように顔をしかめながらそんなことを言った。
どうやら、アルもルシフェルも例の文化祭の時はなかなか苦労したようでその時も散々恨み辛みを吐かれたが未だに根に持っているようだ。
確か、あの時は楓も結婚式間近ということで少し浮かれていたところもあるしそのしわ寄せがアルたちにきてしまったのは当然と言えば当然なのだが、それでもアルたち本人からしてみたらたまったものではなかったのだろう。
別に女性が嫌いというわけではないが、一人一人に丁寧な対応をしていかなければならないのはなかなかに来るものがあるのだろう。
かくいう楓も日本にいた時はその手の問題でかなり苦労していたので一応アルたちの気持ちもわからないでもなかった。
「今日もうまくカエデの影に隠れさせてもらうからな……っと、そんなことを言っているうちに来たみたいだな」
「あぁ、アルが呼んでる。俺たちも行こうか」
「まさか俺が人族のパーティーに呼ばれることになるとはね。楽しみだよ」
「よくよく考えたら人族のパーティーに神様が三人も参加することになるなんてなかなか面白い状況だな」
「ミルの父親はそんな呑気なことを言っていられる状態ではないと思うがな。ほら、マーズも行くぞ」
「了解」
と、最後に部屋の中でそんなことを話し終えるとそのまま適当に話をしながら馬車の方へと向かうのであった。




