王城召集 2
バルバトスからの手紙が届いた日はその後楓もミルも各々風呂へと向かいすぐに就寝となった。
流石にミルも模擬戦でかなり頑張ったせいか特にイチャイチャを望むことはなく楓のいうことを素直に聞くように日向たちが入っている方の風呂へと向かっていった。
結局バルバトスから手紙が届いたことも緊急のものではなかったためその日に他のみんなを集めて言うことはなかった。
まぁ、女性陣の方はミル経由で日向たちに伝わっているだろうし男性陣には楓が風呂の中でそれとなく話題には出しておいたので一応全員それとなく三日後にパーティーがあることはわかっているだろう。
「それにしても、今日はなかなか手応えのある模擬戦ができたね。カエデとマーズには感謝しないとね」
「そうだな。マーズには無理をさせたしな。体の方は大丈夫か?」
「心配してくれてありがとう。俺はこの通り大丈夫だよ。まぁ、戦闘時の記憶はほとんど残ってないけど、終わった後の惨状を見てだいたい察することができたよ。なかなか派手に戦ったみたいだね」
「お互いな」
楓はため息を吐きつつそう突っ込んだ。
現在男性陣は全員で露天風呂にてお酒を飲みつつ先ほどの模擬戦の反省会兼ゆったりと男子会が開催されておりこの時ばかりはいつも給仕をしているセバスも自分のペースでお酒を楽しんでいる。
他のところならば執事が主人たちと一緒にお酒を飲むことはあまりいいことではないのだろうがセバスも執事の前にれっきとした『無限の伝説』の一員なので誰もセバスを咎める者はいない。
むしろ、楓はおろかルシフェルからも男子会の時は給仕はやめろと言われているくらいである。
なんでも、「正直給仕はカエデに任せておけばいいだろ」と言うことのようだ。
確かに楓もそのつもりではあるが、改めてルシフェルにそう言われると多少はイラっとくるものがあったのでその時は嫌がらせ程度の魔法を放っていた。
ちなみに、最初はルシフェルやアル、セバスたちもマーズのことを呼び捨てにすることはなかったり別称で呼んでいたりしていたが、模擬戦で絆が深まったのかお互いに呼び捨てで名前を呼び合う仲になっていた。
「まぁまぁ、アルたちは俺に勝ったんだから誇っていいと思うよ?」
「『模擬戦』ではな。マーズは確かに途中から我らを殺す気でかかってきていたが、まだあれが限界というわけではないのだろう?」
「そうだよね。僕たちはあれが限界だったけど、マーズはどこかまだ余裕があったみたいだった。結果的には僕たちが勝ったけど、あれが本当の命の取り合いだったのならば、負けていたのは僕たちだろうね」
「特に最後の私がマーズの腹を殴った時、あなたの顔には楽しそうな笑みを浮かべていましたしね」
「買いかぶりすぎだよ。あれ以上やっちゃうと本当に今の自分に戻れなくなっちゃうから今の俺ではあれが限界だよ」
どうやらマーズもミリアと同じような悩みを抱いているようで楓たちはマーズの話を聞いて「どこかで聞いたことのある話だな?」と少し誤魔化すように話を変えることにした。
結局のところ、ミリアもマーズも自分のことに関しては自分で解決することしかできないため今ここでウジウジとそれを引っ張っても百害あって一利なしということである。
「それよりマーズ、神界ってどんなところなんだ? やはり他の神とも戦ったりはするのか?」
「うーん、神界で喧嘩なんてした日には裁判神に半殺しにされるから僕たちのランクの神同士で喧嘩をするってことはほとんどないかな?」
「そういえば神界って典型的な縦社会って言ってたね。やっぱり、上のランクの神のいうことは絶対なの?」
「まぁね。ひどい神なんて下級神とかの可愛い女神を無理やり娶るなんてこともあるみたいだよ。そんなことバレたら創造神様たちが黙ってないだろうけど」
「神の中にもそんなしょうもない欲望を抱いているやつなんているんだな」
楓は少し胸糞悪いことを聞いたと愚痴りながらお猪口に入っている酒を一気に煽った。
その点に関してはアルもルシフェルも、セバスも全員同じ感想らしく皆あまりいい顔はしていなかった。
寝取り寝取られ趣味があるやつがいたらどうしようと楓は一瞬心配になったが、さすがにこの中にはいないようだった。
「結局、根本の欲望は人族も神族も、それに他の知性ある生物はみんな持っているんだと思うよ。俺は今それどころではないから色恋系は疎いんだけどね」
「ま、我らの中も楓以外は皆今は妻は持っていないしな」
「カエデくんの奥さんはみんな可愛いよね。気をつけなよ? もしかしたら変な奴に狙われちゃうかもしれないからね」
「そんなことになったら、多分カエデが一瞬で神界ごと消滅させるだろうから後で創造神様に注意を促しておいた方がいいよ」
「りょ、了解。それにしても意外だね。みんな顔もすっごくいいんだし、お嫁さんの一人や二人いると思っていたんだけど、カエデくん以外全員いないのか」
「我の妻もセバスの妻もすでに他界しているしな。それも仕方ない」
「ご、ごめん」
「構わない。それよりも今はアルだな。アルは今絶賛片思い中だ」
ルシフェルは本当に気にしていないようで申し訳なさそうに俯いているマーズにそう言ってから話を変えるように今度はアルに話の矛先を向けた。
アルも若干それを察していたのかそっぽを向いて知らないふりをしているが、それがかえって面白くさせていることに気づいていない。
「それも一億年以上もな。素直にすごいと思うよ」
「それはすごいね」
「恥ずかしいよ。僕の恋は実る気がしないからね」
「俺はそんなことないと思うけどな。アルはもっとガンガン行くべきだ」
「そうだぞ、女は男の強引なところに惹かれるのだ。まぁ、それはカエデにも言えたことだがな」
「俺って結構肉食系じゃないか?」
「どこがだ。完全に尻に敷かれているだろう。たまには自分から自分の部屋に誘え意気地なしが」
「うっ……」
「とまぁ、こんな感じだ。うちの男陣は皆気が弱いんだ」
「そうみたいだね。でも、とっても面白そうだ」
マーズは楓たちのやりとりを見て羨ましそうにそう言いながらそれとなくお酒を一気に煽る。
ふと、空を見てみると綺麗な満月が浮かんでいるのであった。




